第30回 テレワークの成否はコミュニケーションにあり(1) ~適切な仕事の指示・依頼~

テレワークの運用を始めても、うまく機能していない企業は少なくありません。仕事がなかなかはかどらない部下と、仕事の成果にイライラする上司。その原因は、そもそも「仕事の起点」にあったのでは?!

テレワークの成否はコミュニケーションにあり(1) ~適切な仕事の指示・依頼~

新型コロナウイルスのまん延をきっかけに、テレワークの運用を始めた企業は増えていますが、多くの企業ではオフィスワークに比べて生産性は低い、といわれています。
テレワーク(注)ゆえのストレスを抱えている読者も多いのではないでしょうか。

  • (注)今回のコラムでは、テレワークを「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務(施設利用型勤務)」の三つの形態の総称として説明します。

「部下の仕事ぶりが分からないけれど依頼した仕事は順調に進んでいるのか?」「仕上がってきた資料がイメージと違う」「家でサボっているのが原因なのでは?」とモヤモヤしている管理者はいらっしゃいませんか。

一方、部下としては「依頼されていた仕事がなかなかはかどらない」「テレワークでは上司に気軽に相談できない」「そもそも、これは何のために使う資料なんだ?」など締め切りが刻々と迫る中、フラストレーションを抱える方もいらっしゃるかもしれません。

このような現象は主にどのような原因から生まれるのでしょう?

最初が肝心。仕事の指示・依頼

テレワークでは仕事の起点(仕事の指示や依頼)がとても重要です。「仕事を依頼する・される」ことが適切に行われれば、その後のムダやストレスをかなり減らすことができます。

具体例を挙げてみましょう。
在宅勤務中に、上司から次のような仕事の指示が届いたとします。あなたが部下だとしたら、どうしますか?

「全社の営業収支(2021年1~12月)の概要を支店別に整理した分かりやすい資料を作成してください。来月はじめの部長会議で使うので月末までにお願いします」

極端な例ではありますが、こんな曖昧な指示をされたら困惑しますよね。

「何だかイメージできないけれど、まずはドラフト版を作成してから修正点などをフィードバックしてもらおう」なんて作成を始めてはいけません。上司のイメージとは異なって、修正依頼などの“手戻り”が何度も発生する可能性が大きいです。たぶん、きっと、確実に……。実は上司自身が具体的なイメージを持たないまま依頼してきたのかもしれません。

曖昧な仕事の依頼をする上司に大きな問題がありますが、十分に理解できないまま仕事を始めたとしたら、部下にも責任はあります。
上司と部下、仕事を依頼する側、される側の双方の視点で考えてみましょう。

まず、上司は明確な仕事の依頼をする必要があります。仕事の目的、背景を明確にし、成果物、締め切りなどを具体的に説明しなければなりません。どういう場面で、何のために、誰に報告するための資料なのか。締め切りだけでなく報告書を使用する日時はいつなのか? つまり、仕事の仕様、スペックを伝えるということです。以下に示す「5W2H」の視点で考えると、説明の漏れを減らすことができるでしょう。

Why
背景、目的、ゴール
What
成果物
仕事の対象(何を、何に、など)
When
締め切り、途中報告、進捗(しんちょく)確認のタイミング
仕事、成果が実現される日時 など
How
方法、手順
使用するツール、システム
Who
実行者(主担当、サブ担当、関係者など)
Where
仕事を行う場所、環境
成果が利用される場所、場面 など
How Many
How Much

度合 など

依頼を受けた側は、遠慮をせずに不明な点はすぐに質問をして解消しておきます。他に抱えている仕事を考慮して、納期など難しいことがあれば、この時点で相談しましょう。
このプロセスは依頼する側とされる側の共同作業です。

「報告・連絡・相談のルール」の設定と、上司の「フォロー」

仕事のゴール、成果が共有されたとしても、作業を進める途中でコミュニケーションが必要となる場面も出てきます。報告・連絡・相談の「ルール」を決めておくと良いでしょう。ルールといっても堅苦しいものではなく「目安」くらいに考えてください。
例えば、

  • テレワーク時のコミュニケーションの原則はメール
  • 込み入った内容や緊急の場合は双方向で意思疎通できる電話
  • 成果のイメージの確認や、複数人で議論・共有が必要な場合はテレビ会議

などシチュエーションごとに、コミュニケーションの手段や方法を決めておくと良いでしょう。

ちなみに報告・連絡・相談は、部下から上司にするだけでなく、上司から部下へも適宜行われるべきものです。

また、多くの上司は「何か困ったことがあれば、いつでも連絡してください」と常々いいます。しかし、部下としては、なかなか気軽に連絡できないこともあります。ですから、上司には「待つ」だけでなく、積極的に連絡を「取りにいく」フォローをして欲しいものです。「進捗はどう?」「何か困っていることない?」など、時々メールを送るのも良いでしょう。
くれぐれもプレッシャーを与えないように気を付けなければなりませんが。

実は「仕事の基本」、当たり前のこと

ここまで読まれて、気付いた方も多くいらっしゃるでしょう。これらはテレワークに限ったことではありません。実は当たり前のこと、仕事の基本です。けれども、オフィスワークに比べて、コミュニケーションに制限がかかるテレワークだからこそ、一層重要なことなのです。

「仕事の依頼」、「報告・連絡・相談」、「上司からのフォロー」が日頃からきちんと行われている職場では、テレワークを始めやすく、一時的な生産性の低下を早期にリカバリーしています。

テレワークの運用は、この“仕事の基本”を意識する絶好の機会(チャンス)なのです。

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この記事の著者

ワークデザイン研究所/石山社会保険労務管理事務所

太期 健三郎

ワークデザイン研究所 代表
石山社会保険労務管理事務所 パートナー・コンサルタント

経営コンサルタント。
管理間接部門の業務改善、HRM(人材マネジメント)の二本の専門領域を持つことを強みとする。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)、株式会社ミスミ、株式会社グロービスに勤務後、2008年にワークデザイン研究所を設立。
MURCでは人事コンサルティング、ミスミではコールセンターの業務改善を行った後、三枝匡社長(当時)の直轄タスクフォースで営業改革を推進する。グロービスではコンプライアンスおよびリスクマネジメントを統括、推進。
また、2013年~2015年にはクライアント企業の食品メーカーの内部改革者として人事部長・経営改革室長を兼務する。
「患者様の声をよく聴き、丁寧に診断・治療する“中小企業のかかりつけ医”」を信条としている。
ワークデザイン研究所
石山社会保険労務管理事務所

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