第31回 テレワークの成否はコミュニケーションにあり(2) ~会議を改善する~

前回のコラムで、「仕事の起点」がいかに重要かを述べました。個人が行う仕事の起点が「仕事の指示や依頼」だとすれば、チーム、プロジェクトの仕事の起点は「会議」です。今回は、会議の改善について説明します。

テレワークの成否はコミュニケーションにあり(2) ~会議を改善する~

会議の改善、とは

今回のテーマは「会議の改善」です。「会議の改善」と聞くと皆さんはどのようなことをイメージしますか? 会議が改善されれば、どのような効果が生まれるのかを考えていきましょう。

まずコストという視点で考えれば、出席者が会議に使う時間の合計(会議の時間×出席者の人数×開催回数)を減らせます。時は金なり、つまり人件費を減らせます。しかし、会議を改善する最大の効果は、会議の質を高めることです。議論のプロセスを見直して、会議のアウトプット、つまり意思決定の質を高めるのです。

チームで取り組む業務の「起点」は会議

前回のコラムで、「仕事の起点」について説明しました。

第30回 テレワークの成否はコミュニケーションにあり(1) ~適切な仕事の指示・依頼~

仕事の起点の良し悪しが仕事の成否を大きく左右するのです。上司が部下に仕事を指示する場合、「指示する・指示される」というタイミングが仕事の起点になります。この時に、仕事の目的、背景、成果物、締め切りなどを上司と部下が正しく共有している必要があります。

それでは、チーム、プロジェクトなどの「仕事の起点」とは何でしょうか? これが今回のテーマである会議です。会議で決めたことが起点となり、それを基にチーム、プロジェクトが業務を遂行するのです。

会議での十分な議論を経て、正しい意思決定が行われれば、その後の業務の精度とスピードが高まります。業務の無駄や迷走を防ぐこともできます。もし何か問題が生じたとしても、早期の軌道修正が可能となるのです。

無駄な会議の特徴を示した先人の言葉

会議を戒めた先人の言葉に「会して議せず、議して決せず、決して行わず、行ってその責をとらず」というものがあります。

意味は読んで字のごとくで、

  • 「会して議せず」は、集まっても議論をしない
  • 「議して決せず」は、議論をしても結論を出さない
  • 「決して行わず」は、結論を出しても実行しない
  • 「行ってその責をとらず」は、実行しても責任をとらない

ということです。

無駄な会議の本質を簡明に述べています。皆さんが出席している会議でこのようなことはありませんか? 私はあります。自分が主催する会議、打ち合わせでは極力減らすように努めていますが、それでもゼロにはできていません。日々精進です。

無駄な会議を予防するポイント

それでは、会議を十分に機能させるためのポイントを「会議開催前」「会議開始~会議中」「会議終了時」「会議終了後」の四つのステップで考えていきます。

1. 会議開催前

  • 出席者は必要最小限に絞りましょう。
    情報を共有するだけの人は出席する必要はありません。後で議事録を送れば済む話です。
  • 主催者は、出席者に会議の目的と議題を事前に告知しましょう。
    目的、議題は曖昧(あいまい)な表現ではなく具体的なものとします。
  • 資料は事前に配布し、出席者は開催前に読み込み、理解をしておきましょう。
    資料の“朗読”に会議の貴重な時間を使うのはもったいないことです。

2. 会議開始~会議中

  • 会議の冒頭で「目的」「決定すべきこと」「終了時間」「書記」を確認しましょう。
  • 時間は守りましょう。
    遅刻などもってのほかです。開始時間、終了時間だけでなく、議題ごとの時間も設定して徹底しましょう。ダラダラした議論を抑制できます。
  • 冗長(じょうちょう)な議論、横道に外れる雑談などは慎みましょう。

3. 会議終了時

  • 「決定事項、未決定・積み残し事項」「To Do・宿題(担当者、納期)」「次回開催日時」などをホワイトボードに記載し、出席者で確認しましょう。
    終了後に「言った言わない」の話になることを防げます。
  • 終了後、速やかに議事録を関係者に送付します。
    議事録作成に過剰な時間をかけず、ホワイトボードの写真で代用してもよいでしょう。

4. 会議終了後

  • 会議欠席者で、決定事項に反論がある場合は速やかに申し出るようにしましょう。
  • 決定されたことは、全員で受け入れて実行しましょう。
    「自分は反対したんだが……」など、後で言うことはNGです。異論があるなら、その場で表明しましょう。
  • 同一テーマの会議が続く場合は、前回の議事録を見れば同じ内容を振り返る必要がなくなり、効率的な会議を行えます。

会議でのホワイトボード(例)

会議で板書するホワイトボードの一例を紹介します。基本的な項目ばかりで目新しいものはありませんが、会議のテーマ、目的に合わせてアレンジしてみてください。飛び交う言葉の交通整理になりますし、議論の堂々巡りを防ぐこともできます。ここに明記されたことが、チーム、プロジェクトで取り組む「仕事の起点」になっているはずです。

まとめ

ここまで述べたことは、対面の会議でもWeb会議でも変わりません。しかし、Web会議の方が「仕事の起点」をより意識する必要があるでしょう。その理由は二つあります。
一つは、直接顔を合わせず、お互いの表情や場の雰囲気を感じにくかったり、細かいニュアンスの誤解が生まれやすかったりするからです。
もう一つは、通信状況の影響で音声や画面が乱れたり、切断されたりすることでスムーズな進行が妨げられることがあるからです。

会議の改善についてご理解いただけたでしょうか? 今回のポイントを強く意識すれば、会議の質を大きく高めることができるはずです。

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この記事の著者

ワークデザイン研究所/石山社会保険労務管理事務所

太期 健三郎

ワークデザイン研究所 代表
石山社会保険労務管理事務所 パートナー・コンサルタント

経営コンサルタント。
管理間接部門の業務改善、HRM(人材マネジメント)の二本の専門領域を持つことを強みとする。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)、株式会社ミスミ、株式会社グロービスに勤務後、2008年にワークデザイン研究所を設立。
MURCでは人事コンサルティング、ミスミではコールセンターの業務改善を行った後、三枝匡社長(当時)の直轄タスクフォースで営業改革を推進する。グロービスではコンプライアンスおよびリスクマネジメントを統括、推進。
また、2013年~2015年にはクライアント企業の食品メーカーの内部改革者として人事部長・経営改革室長を兼務する。
「患者様の声をよく聴き、丁寧に診断・治療する“中小企業のかかりつけ医”」を信条としている。
ワークデザイン研究所
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