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第32回 正しくできて当たり前、誰からも評価されない総務の仕事
先月、「総務部門の業務改善」というテーマで久しぶりにリアルな研修の講師を務めました。研修終了後、1人の受講者が「総務の仕事って、正しくできて当たり前、間違えれば叱られる。地味な仕事ですよね」と悲しそうに仰いました。今回はその時のお話です。
正しくできて当たり前、誰からも評価されない総務の仕事
総務の仕事は評価されない? 報われない?
先月、「総務部門の業務改善」というテーマで久しぶりにリアルの研修講師を務めました。ここ2年間程はオンラインの研修が続いていましたので、対面の研修は久しぶりでした。リアルな場ならではの緊張感と面白さがありました。
研修には20社、22人の総務担当者が受講されました。今年社会人になったばかりのフレッシュな人からベテランまでさまざまな方がいらっしゃいました。
3時間の研修が終わり、片づけをしている時に受講者の1人が質問に来られました。そして、質問にお答えしてからその方と少し雑談をしました。
彼女(総務歴5年目の20代後半くらいの方)は「今日の研修はとても勉強になりました。明日からの仕事に役立てていきます」と言ってくれた後、次のようなことを話しました。
「総務の仕事って、正しくできて当たり前、間違えれば𠮟られる。地味な仕事ですよね。業務改善をして効率的になっても誰も評価してくれないでしょうし……。あっ、でも改善はしていきますよ、もちろん!」
私がうなずきながら聞いていると、彼女は「私の先輩は、人に認めらなくてもいい、評価なんて期待しなくていいって言うんです」と言いました。何か仕事の壁にぶつかったり、むなしさを感じたりして、モチベーションが低下しているのかな、と私は思いました。
誠実に仕事に向き合って、日々の業務を頑張っている人だということは話をしていてよく分かりました。
総務の仕事は会社のインフラ、縁の下の力持ち
話を聞いた後で、私はこんな話をしました。
総務の仕事は会社のインフラだと僕は思うんです。会社のみんながスムーズに働くためのインフラ。パソコンのOSソフトみたいなもの。誰かの業務に支障が出るような間違いをすれば文句が出るのに、普段は誰も自分の仕事を認めてくれるわけでも評価してくれるわけでもないと悲しくなる時がありますよね。寂しくなるというか。僕も人事や総務の仕事をしていた時に同じように思うことが何度もありました。
でもね、誰も認めてくれなくても、評価してくれなくてもいいんじゃないか、と今は思ったりもします。あなたの先輩が言うように。
僕らは毎日水を飲みます。水道が止まれば不自由を感じますよね。でも、普段は水を供給してくれる現場の人たちに感謝もしない。彼らの存在に思いを巡らすこともない。その人たちがみんなの生活を支えるとても大切な仕事をしてくれているのに。それと同じだと思うんです。
総務をはじめ間接部門で働く人は、評価されないとしても「みんなが普段通り働けて会社が機能しているのは、自分が、自分たちが縁の下で支えているからなんだぞ」って思う。そんな風に自負を持つというか、誇りに思いながら仕事をすればいいんじゃないかな。それから、言っていることと矛盾しているかもしれないけれど、あなたの仕事をきちんと見ている人は必ずいますよ。
そんなことを話しながら、ああ、自分はつまらない、ありきたりなことを言っちゃってるなあ。毎日頑張って誠実に仕事をしている人を少しでも励ませないかとべらべらしゃべったけれど、もうちょっと気の利いたことを言えないかなあ、と心の中で思いました。
話を終えようとした時、彼女が泣き笑いのような表情になり私は少し驚きました。そして、「ありがとうございます。何だかもっと頑張れそうです」と言ってくれました。
もし、私の話で彼女が少しでもそう思ってくれたなら、私は研修の手ごたえが(自画自賛のようですが)上々だったこと以上にうれしいと思いました。
縁の下の力持ちの皆さん、頑張って!
彼女のように、寂しさやむなしさのようなものを時々感じる間接部門の方はいらっしゃるかもしれません。
私は業務改善の目的は、二つの「楽」を実現することだと思っています。
一つは業務を「楽に(=負担なく、効率的に)」すること。もう一つは仕事を「楽しく」することです。
会社を支えている「縁の下の力持ち」の皆さん、どうか頑張ってください!
このコラムの第1回で「総務部門は“企業のOS”」というタイトルのコラムを書きました。今回のコラムと同じような内容を少し違うトーンで書いています。ぜひこちらもご覧ください。