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第22回 業務の標準化を“否が応でも”実行させる「社内留学制度」
前回の「10日間連続休暇制度」に続いて、業務改善のベースとなる「標準化」を始めざるを得ない“しかけ”をご紹介します。今回は「社内留学制度」です! 社内留学によって、なぜ標準化が始まるのでしょうか?
業務の標準化を“否が応でも”実行させる「社内留学制度」
「標準化」は業務改善、業務の生産性向上を進めるベースとなります。時間も手間も掛かり実行は容易ではありませんが、改善を小手先で終わらせずに仕組みとして継続的に進めていくためには避けては通れないものです。
前回の「10日間連続休暇制度」に続き、「標準化が進まないならば、進めざるを得ない状況を作ればいいじゃない!」という視点で、今回は「社内留学制度」の事例を取り上げます。
前回分を読まれていない方は、今回のコラムの前にぜひご一読ください。「業務の標準化を“否が応でも”実行させるしかけ」の趣旨やポイントの理解がより深まるはずです!
前回コラム
第21回 業務の標準化を“否が応でも”実行させる「10日間連続休暇制度」(ERPナビ)
社内留学とは何か? どのような目的を持つ制度なのか?
社内留学制度は「社員を他の部署へ一定期間派遣して経験を積ませ、元の部署に戻す」というものです。1日の“職場体験”のようなものから、3カ月、1年とまさに“留学”と呼べるものまで目的によりさまざまな期間、方法で運用されます。
社内留学制度の目的の例をいくつか挙げます。
- 視野の広い人材を育成する
- 部署間連携を強化する(例えば、前工程、後工程にあたる部署との連携)
- マルチスキル(多能工)社員を育成する
- 社内コミュニケーションを活性化する
- 部署にまたがる業務の改革、改善を行う
等々です。
一つひとつ解説したいところですが、今回のコラムのメインテーマは「標準化」ですので、社内留学制度の目的や、運用方法の詳細を説明することは割愛いたします。
社内留学制度の実施を、業務標準化のトリガーとする
社内留学制度を実施することは業務標準化のきっかけを作ります。それは、留学した社員の業務を誰かが担当しなければならず、引き継ぎの機会を生むからです。考え方の流れを説明しましょう。
(1)社内留学の実施を計画する
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(2)留学する社員が担当する業務の引き継ぎが必要になる
↓
(3)引き継ぎ準備で、担当者(留学する社員)は業務の整理、言語化を行う
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(4)(担当者が留学中に)引き継ぎを受けた社員が業務を遂行する
↓
(5)留学復帰後に、担当者(留学した社員)、引き継ぎを受けた社員、第三者(上司など)がミーティングを行う
これが社内留学により標準化の機会が“発生する”流れです。
通常の社内留学は「人や組織」の視点で計画、実施します。それに対して、業務標準化を起点とする社内留学は「業務」の視点で実施されます。「どの業務を標準化すべきか?」からスタートし、担当者(留学する社員、引き継ぎを受ける社員)、時期、派遣先部署などを選定します。社内留学が標準化の機会を“発生させる”のです。
もちろん、社内遊学ではないので、留学としての成果もきちんと出さねばならないことは言うまでもありません。
標準化の機会を“発生させる”社内留学実施のポイント
前回のコラムとやや重複しますが、この社内留学制度(標準化のきっかけを作る社内留学)を実行するためのポイントは以下の3点です。
- 一つは、標準化すべき対象業務を定めたら、無理のない適切な社員(留学者と引き継ぎ者)、時期(タイミングと期間)、派遣部署を選定することです。
- 二つ目は、書くまでもありませんが、しっかりと引き継ぎを行うことです。そのために、会社は、負担なく引き継ぎを行なえるフォーマットを用意したり、引き継ぎのトレーニングを実施したりするなどしてバックアップをします。(フォーマット、トレーニングについては前回コラムの解説をご覧ください)
- 三つ目は、留学から復帰した社員と引き継ぎをした社員に、第三者(上司や先輩社員など)を交えて、当該業務についてミーティングを行うことです。このミーティングで、引き継ぎや業務遂行の振り返りが行われ、標準化に大きく近づきます。
3点を簡単にまとめるとすれば、計画的に実施して、やりっ放しにしない、ということです。
標準化が進まないならば、進めざるを得ない状況を作りましょう!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
次回もどうぞご期待ください。
次回は12月21日(木)更新予定です。