ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第7回 人事スタッフに必要な資質とは?
前回では、総務スタッフに必要な資質について説明しました。
今回は人事スタッフに必要な資質を説明します。
総務、人事に限らず、その職種に必要な資質を明確にしておくことは、採用、教育、異動配置などを成功させるために重要なことです。
■ “人”という経営資源を扱う人事スタッフに必要な資質とは?
「企業は人なり」と言われる通り、企業の業績、成長・発展を左右する「人」は最も重要な経営資源です。その「人=社員」を扱う人事スタッフにはどのような資質が必要となるでしょうか。
人事の仕事には「採用」「教育・研修」「人事・労務管理」「人事戦略」「海外人事」などがあります。必要なスキルについて各機関でアンケート調査が行われることがあります。
調査結果では「実務知識」「労働法規」「労務知識」「事務処理能力」「コミュニケーションスキル」「リーダーシップ」「研修・教育技能」などの知識、スキルが登場します。
上記アンケートで挙がっている知識、スキルは大切ですが、私が考える人事スタッフに必要な資質は「ハイレベルのコミュニケーションスキル」と「優しさと厳しさのバランス感覚」の二つです。
【1】ハイレベルのコミュニケーションスキル
総務スタッフの資質でもコミュニケーションスキルを挙げましたが、性質は少し異なります。総務スタッフではコミュニケーションにスピード、正確性が求められます。社内外へ向けて、情報の連絡、伝達、周知徹底という性質のコミュニケーションが多いためです。
それに対して、人事スタッフのコミュニケーションでは「繊細さ」「丁寧さ」が求められます。事務的な伝達事項だけではなく、受け手に意図を正しく伝え納得させるためのデリケートなコミュニケーションを行う場面が多いからです。具体的に、採用結果の連絡、人事異動の伝達、評価結果のフィードバック、人事制度見直しの説明会などの場面を想像するとお分かりになるでしょう。コミュニケーションの適否、巧拙により人事制度の運用、社員のパフォーマンスに大きな影響を与えます。
このようなコミュニケーションには「人の心の機微を感じ取れる感性」が必要であり、それを高めるには、「傾聴法」「コーチング」「カウンセリング」などのトレーニングを受けることも有効な手段の一つです。
【2】優しさと厳しさのバランス感覚
必要な資質の二つ目は「優しさと厳しさのバランス」です。唐突感、違和感を持たれた方もいるかもしれませんが、とても大切なものだと私は考えます。
「人」や「制度」に対しての優しさと厳しさです。
人事スタッフには「人の心の機微を感じ取れる感性」が必要と前述しました。「人」=「社員」は感情を持った経営資源だからです。しかし、同時に、情に流されてはいけません。ルール、手続きに則した「是々非々」の厳しさが求められ、時には「冷徹」に対処すべきこともあるでしょう。
ケースバイケースですが
『感情をくみ取っても情に流されてはいけない』
『是々非々で対処すべきだが、しゃくし定規になってはいけない』と非常に難しい判断が求められることがあります。
幾つか具体例を挙げてみましょう。
・社員へ懲戒処分を行うとき
・社員がメンタルの病気になったとき(配置転換、休職、復職など)
・育児による短時間勤務社員と職場との調整が必要となったとき
などです。
どれも直面すれば頭を悩ませる事例です。
このような場面で、社員の感情をくみ取りつつ、制度やルールの原理原則を考えて対処できる人が「優しさと厳しさのバランス感覚」を持てる人事スタッフです。
■ 人事スタッフの資質を見極めるには?
今回挙げた二つの資質を見極めることは簡単ではありません。一つの方法として、人事部が現在もしくは今までに対処に悩んだ事例を質問して意見を聞くことです。
例えば
Q.メンタルの病気で休職をしていた社員が、復職可という診断書を持ち、復職を強く希望している。しかし、面談をしたところ復職して業務を行えるか疑問を持った。どうすべきか?
Q.育児のため時短勤務をしているAさんの職場で「業務の負担が増えた」と不満を言っている同僚が数名いる。どうすれば良いか?
このような具体的な事例に完全な正解はありませんが、答えと答えに到達する思考のプロセスを聞くことで、人事スタッフに必要な資質を見ることができます。
人事スタッフの担当業務とそれを行うために必要な資質を明確にしておきましょう。それが適材適所の社員活用の前提となり、人事部を機能させることにつながります。
次回は10月6日(月)の更新予定です。
前の記事を読む
次の記事を読む