第8回 業務改善(その4)多能工スタッフを増やそう!

業務改善(その4)として、今回は「事務部門スタッフの多能工化」について説明します。多能工とは生産現場でよく使われる言葉です。「さまざまな業務を行えるスタッフ」と考えて下さい。事務部門でも多能工の事務スタッフを増やすとさまざまなメリット、効果が生まれます。

■ 多能工とは?
冒頭で簡単に書きましたが、多能工をもう少し詳しく説明します。生産現場において、一人が一つの業務だけを担当する「単能工」に対し、一人で複数の作業や工程を担当する知識や技能を持った作業者を「多能工」と呼びます。組織の人材を多能工として教育・訓練するしくみを「多能工化」といいます。

■ 多能工を増やすメリット、効果
少人数の事務部門では、必然的に「多能工化」が進んでいるでしょうが、人数の多い事務部門では業務の担当、役割が細かく分かれているため、一人の担当業務が深い&狭い「単能工」が多く、他の人には分からない業務が多いのが実態です。
そのような中で、多能工を増やすことで、以下のようなさまざまな効果を生むことができます。

【1】部門内の業務を平準化できる
「平準化」とは、業務量・業務負荷などが特定の時期に集中しているといった偏りを減らし、均等に近づけることです。部門内で各担当者の業務が特定の時期に集中して、月末に忙しい人、月初に忙しい人、毎週木曜日に忙しい人がいると思います。そして、一人が忙しく残業が多くても他の人は手伝ってあげられない。そのような場合、多能工化が進んでいれば、忙しい業務を複数の人が分担し、平準化することができます。

【2】一人業務を減らせる
多能工化が進むと、単能工が抱えている「一人業務」(部内で「Aさんしかできない業務」)が無くなります。このような一人業務があるとAさんは休みを取りづらかったり、休むとその業務が滞ったりします。Aさんが異動、休職(出産、育児など)、退職するときにも引継ぎが大変です。多能工化により、このような問題も解消されるのです。

【3】業務改善が進む
多能工化を進めるプロセスが業務改善を促します。多能工化を進めるためには、今まで行っていない人にその業務を教えなければなりません。教わる人は、未経験者として素朴な視点で疑問を持ち、質問をしてきます。「何のためにその作業を行うのですか?」「なぜ、そういうやり方をするんですか?」「こういう別のやり方もあるのではないですか?」・・・などなど。教える人は今まで当たり前にやってきた仕事に対して、このような質問を受けて面食らうかもしれません。しかし、このような質問と、質問への回答というキャッチボールによって業務改善が行われていきます。

【4】「教える」「教わる」スキルが高まる
業務を教える側、教わる側それぞれのスキルが高まります。
教える人は、自分の業務の目的や進め方を整理しなければなりません。なんとなく頭で分かっていたものを人に説明するために「言葉」で整理するのです。これを「暗黙知」を「形式知」にすると言います。「教えるスキル」が高まります。
教わる人も、相手の話をよく聞き、ポイントをメモし、質問をする、という「教わるスキル」が高まります。教わるスキルを高めないと、教える人に何度も同じことを説明させることになってしまいます。
教える側、教わる側、それぞれのスキルが高まるのです。このスキルが高まると、その後の部門内での「業務改善」や「多能工化」が加速していきます。

【図1】業務分担表(多能工化が進んでいる例)
    一つの業務に◎or○が一人のみの場合は多能工化が必要

■ 多能工化はどのように進めるか?
昔の職人の世界では「仕事は教わるのではなく盗め」などと言われていました。今の会社組織ではそのようなことを無いでしょうが、口頭と簡単なメモ書きだけで説明する人も意外と少なくありません。
業務改善の成果物である「標準業務仕様書(※)」をベースに以下の手順で教えます。
※標準業務仕様書は、業務マニュアルのように業務手順を詳細に説明したものではなく、業務のポイントを整理したものです。次回のコラムで詳しく説明いたします。

【1】業務の概要を説明する
標準業務仕様書で業務の概要を説明します。業務の目的、業務発生のタイミング、成果物、統一処理方法などを簡潔に説明します。
【2】やってみせる
実際にその業務をやってみせます。パソコンの画面を見せたり、帳票などを手元に置いて見せたりしながら目の前で業務を実際にやってみせます。
【3】やらせてみる
やってみせた内容を本人にやらせます。教えた人は隣で見ていますが、途中で間違えても口を出さずに最後までやらせて、間違えたところは後で指摘して、間違えた理由やその再発防止策を自分で考えさせます。独力でできるようになるまで、これを繰り返します。 
【4】できたら誉める
上手にできたら誉めてあげましょう。誉めることで学んだことの満足感と達成感が高まります。

上記の【2】~【4】のプロセスは、山本五十六(海軍大将・連合艦隊司令長官)の有名な言葉である「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」の通りですね。

■ まとめ
多能工化は、多能工スタッフが増えたことのメリット(結果としてのメリット)だけでなく、多能工を増やす過程においてもメリット(プロセスでのメリット)が生まれることをご理解いただけたと思います。
経営環境の変化の規模もスピードも高まっている現在、それらに対応できる柔軟な組織となるための一つの方策として、職場の多能工化を進めていくことが必要だと考えます。

次回は「標準業務仕様書」について説明します。ご期待下さい。

次回は12月15日(月)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社リバティーフーズ 人事部長
ワークデザイン研究所 代表

太期(だいご) 健三郎

食品メーカー人事部長/ビジネス書作家/経営コンサルタント。
専門領域は、人事評価制度・賃金制度の構築、人材育成、間接部門のコストダウン。
三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)、株式会社ミスミ、株式会社グロービスを経て、現職。ミスミ時代には三枝匡社長(当時)の直轄タスクフォースにて営業改革、短期営業戦略を推進する。
経営コンサルタントを“企業のお医者さん”と考え、「患者(クライアント企業)の声をよく聴き、現状をしっかり診察し、治療する」をモットーとする。
神奈川県横浜市出身。著書『ビジネス思考が身につく本』(明日香出版社)。
ワークデザイン研究所

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