第6回 総務スタッフに必須の資質とは?

前回まで3回に亘り「事務部門の業務改善」を説明してきました。業務改善について語るべきことはまだまだ沢山あり今後の連載でも引き続き述べていきますが、今回は総務スタッフに必須の資質について説明します。採用や社内異動で新たな総務スタッフを選考する際などのご参考にしてください。
 
■ 多岐に亘る業務を行う総務スタッフに必要な二つの資質
企業によって総務部の中に人事部門を含んでいることがありますが、今回のコラムでは、人事を含まない“純粋な”総務部門とします。総務と人事ではスタッフに求められる資質が大きく異なるからです。
“社内の何でも屋”と呼ばれたり、どの部門も行わないスキマ業務を担当したりと総務部門の業務は多岐に亘ります。当然、総務スタッフに求められる資質(スキル、知識など)も多種多様なものとなります。
文書管理、備品管理、株主総会開催、受付・窓口業務、法務業務・・・。これらの業務を行う知識を十分に備え、事務処理能力、問題解決能力、コミュニケーション能力、情報収集力、分析力、などのスキルを持っている人がいればすばらしいです。しかし・・・、そんなスーパーマンのような人はまずいないでしょう。

上記の資質の中で「必須のもの(Must)」と「あったら良いもの(Better)」に整理して考えてみると、私の経験上、絶対に欠かせない必須のものは「事務処理能力」、「コミュニケーションスキル」の二つだと考えます。

【1】事務処理能力(スピードと正確さ)
様々な業務を同時並行的に行う総務部門では、当然のこととして事務処理能力は必須です。これは皆さん異論のないことでしょう。ここでは「スピード」と「正確さ」のバランスがとれた事務処理能力が求められます。速くてもミスが多く雑では困りますし、正確でもじっくり時間をかけている余裕はありません。
仕事の優先順位を見極めながら、手際よく正確に行う事務処理能力が必要になるのです。

【2】コミュニケーションスキル
総務部門は社内外の多くの人と接します。様々な場面で、相手の話を聴き、こちらの話を正確に伝える必要がありますし、社内、社外で交渉に臨むことも少なくありません。そのためには、高いコミュニケーションスキルが必要となります。また、そのようなコミュニケーションをとっていくためには、関係者と普段から良好な関係を維持できることも大切になります。

「え、この二つだけ?」と思われた方もいらっしゃると思います。しかし、この二つ以外は、有ればベター、無くても経験していけば身につくもの、がほとんどです。

■ 採用面接で総務スタッフの資質を見極めるには?
欠員補充などで総務部門のスタッフを採用する際の選考は難しいものです。
職務経歴書を見ると、業務実績が豊富で、面接をして人柄も良さそうだったけれど、入社してみたら・・・、という例は少なくありません。前職の会社の総務では実際に活躍していたけれど、自社では活躍できない、という人もいます。
“自社”で活躍できる総務スタッフを見極めるための採用面接での質問を二つ紹介します。

【1】前職の総務部門の規模と担当役割
まず前職での総務部門の規模、つまり人数を聴きます。2人で社内の総務業務全てを行っている中小企業と、10人前後で業務を細かく分担している大企業では、求められる資質は大きく異なります。大企業で限られた範囲の仕事に専念してきた人は仕事の深さと専門性を求められます。少人数で多種多様な業務を行う職場では同時並行で業務を行う事務処理能力とスピードが必要になります。

【2】実務経験の内容と深さ
職務経歴書には様々な業務について「経験あり」と書いてあることでしょう。どのような内容を、どれくらいの深さで行ってきたのか掘り下げて聴く必要があります。例えば、「株主総会業務の経験あり」と書いている人でも、「株主総会の企画から運営まで全般的に関わってきた人(広く深く)」から「株主のリストを作成し招集通知を発送していた人(狭く浅く)」まで大きく異なります。どこまでの範囲、深さでの業務経験があるか具体的に質問すれば分かることですし、聴いておかなければ入社してから「期待と実績・経験のミスマッチ」が発生して会社も本人も不幸です。
同様の話をもっと簡単な例で示せば、職務経歴書に「マイクロソフト・エクセル使用可能」と書いてある人が、実際には「何度か操作したことがあるだけ」「フォーマットにデータを入力できるだけ」ということがあるのと同じことです。

「前職の総務部門の規模と担当役割」「実務経験の内容と深さ」この二つを聴けば、後は自社の業種、業態にふさわしい人であるか、主担当として期待する業務の知識、経験があるか、などを詳しく聴いていけば良いでしょう。

大切なことは、新たに総務スタッフを採用する際、それが新卒新入社員でも、社内異動でも、社外からの中途採用であっても、担当してもらう業務と、それに必要な資質を事前に明確にしておくことです。

当コラム第1回で「総務部門は“企業のOS”」と書きましたが、その総務を構成するスタッフが必要な資質を備えて業務を遂行していけば、その企業は正しく機能し、収益を上げていくでしょう。

次回は人事スタッフに必要な資質について説明していきたいと思います。

次回は7月7日(月)の更新予定です。
※誠に勝手ながら8月中旬の更新に変更させていただきます。
  楽しみにお待ち頂いている皆様には大変申し訳ございませんがご了承を賜りたくお願い申し上げます。

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この記事の著者

ワークデザイン研究所/石山社会保険労務管理事務所

太期 健三郎

ワークデザイン研究所 代表
石山社会保険労務管理事務所 パートナー・コンサルタント

経営コンサルタント。
管理間接部門の業務改善、HRM(人材マネジメント)の二本の専門領域を持つことを強みとする。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)、株式会社ミスミ、株式会社グロービスに勤務後、2008年にワークデザイン研究所を設立。
MURCでは人事コンサルティング、ミスミではコールセンターの業務改善を行った後、三枝匡社長(当時)の直轄タスクフォースで営業改革を推進する。グロービスではコンプライアンスおよびリスクマネジメントを統括、推進。
また、2013年~2015年にはクライアント企業の食品メーカーの内部改革者として人事部長・経営改革室長を兼務する。
「患者様の声をよく聴き、丁寧に診断・治療する“中小企業のかかりつけ医”」を信条としている。
ワークデザイン研究所
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