第5回 業務改善(その3)改善を進める三つの視点「無くす」「減らす」「変える」

前回は業務改善で最初に行うこと「業務の棚卸し」と「改善する業務の優先順位づけ」を説明しました。
その後、改善を進めるには三つの視点が必要です。それは「無くす」「減らす」「変える」です。 
 
■ いきなり改善を始めない
 すぐに業務改善を始めようと急がずに、まず次の三つの視点で業務を考えてみましょう。
【1】「無くす」:業務そのものを無くせないか?業務をやめられないか?
【2】「減らす」:業務の処理回数、処理量を減らせないか?
【3】「変える」:無くせる業務を無くし、減らせる業務を減らし、残った業務を「変える」=改善するのです。

図1「業務改善を進める三つの視点」

三つの視点をもう少し詳しく説明していきましょう。 

■ 視点【1】:その業務を無くせないか?
最初に「無くす」「やめる」について考えましょう。
「必要があってやっているのだから、無くせる業務なんてないよ」と思う方もいることでしょう。
しかし、「無くせる」「やめられる業務」は、意外にあるものなのです。

例えば
・ほとんど誰も見ていない日報の作成
・業務の目的は分からないけれど、前任者から引き継いで何となく続けている業務
・活用されていないデータの入力
・社内でやるよりもアウトソーシングする方がコストパフォーマンスが高い業務(業務そのものを無くすわけではなく、社内から無くす)
などです。
あなたの部署にこのような業務はありませんか?

■ 視点【2】:その業務を減らせないか?
次に、業務を減らせないか?を考えます。これは「処理回数」を減らす、「処理頻度」を減らすなどがあります。

例えば、
・年末調整のときの社員からの問い合わせ回数、提出の督促回数を減らす
・社外からのクレーム処理方法を見直すのではなく、クレーム発生を減らす
・不定期で発生する業務を都度処理するのではなく、一ヶ月に一度まとめて処理する
・毎月の処理を隔月で処理する
などです。
自分やまわりを見渡すと、一つや二つこのような業務があるのではないでしょうか。

■ 視点【3】:その業務を変えられないか?
「無くす」ことも「減らす」ことも難しく、残った業務を「変える」=改善するのです。
具体的な改善業務は次回以降に説明しますが、
・仕事の手順を変える、処理方法を変える
・担当者を変える
・システムを活用する 
など、様々な方法で改善を進めていきます。

■まとめ
「無くす」「減らす」「変える」の三つの視点で考えるということは、現在行っている業務をゼロベースで見直すということです。
「この業務の目的は何だろう?」「何のために、誰のために行っているのだろう?」と考えますが、なかなか容易ではありません。私はクライアント企業に行くと、上記のような質問を投げかけ、実際に業務を見て、客観的に、第三者の視点で業務を評価します。
社内で行う場合には、他部署の人、他部署から異動して日が浅い人、新しく入社した人などに自部門の業務を見てもらうと良いでしょう。
特に、新卒ではなく転職による中途入社員は、前の職場と比べて業務を見ます。前の会社での効率的なやり方や、改善提案をしてくれることがあります。

次回は5月12日(月)の更新予定です。

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この記事の著者

ワークデザイン研究所/石山社会保険労務管理事務所

太期 健三郎

ワークデザイン研究所 代表
石山社会保険労務管理事務所 パートナー・コンサルタント

経営コンサルタント。
管理間接部門の業務改善、HRM(人材マネジメント)の二本の専門領域を持つことを強みとする。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)、株式会社ミスミ、株式会社グロービスに勤務後、2008年にワークデザイン研究所を設立。
MURCでは人事コンサルティング、ミスミではコールセンターの業務改善を行った後、三枝匡社長(当時)の直轄タスクフォースで営業改革を推進する。グロービスではコンプライアンスおよびリスクマネジメントを統括、推進。
また、2013年~2015年にはクライアント企業の食品メーカーの内部改革者として人事部長・経営改革室長を兼務する。
「患者様の声をよく聴き、丁寧に診断・治療する“中小企業のかかりつけ医”」を信条としている。
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