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第36回 もう締切に追われない! 「逆算思考のスケジュール管理」と「着手期限の設定」
お仕事はスケジュールどおりに進んでいますか? 忙しい中で締切に追われるのって嫌ですよね。スケジュール管理に有効なコツを紹介します。シンプルな考え方ですが効果は絶大です。
もう締切に追われない! 「逆算思考のスケジュール管理」と「着手期限の設定」
突然ですが、お仕事はスケジュールどおりに進んでいますか? 取り掛かるのが遅かったり、締切ギリギリ滑り込みセーフで焦ったり、締切を過ぎて誰かに迷惑をかけてしまったり……、そんなことはないでしょうか?
今回はスケジュール管理についてお話しします。皆さんの仕事がスムーズに進み、締切のストレスが少しでも減る一助になれば幸いです。
スケジュール管理の二つの考え方「ゴールからの逆算思考」と「積み上げ思考」
スケジュール管理の考え方に「ゴールからの逆算思考」というものがあります。ゴール(期限・締切)から遡って、それに至る工程(ステップ)ごとの期限を設定し、処理していく考え方です。「ゴールからの逆算思考」では、工程ごとの進捗(しんちょく)確認ができ、遅れが出れば早めに調整、リカバリーができます。
この「ゴールからの逆算思考」と対照的なものとして、「積み上げ思考」という考え方があります。
二つの考え方を、小学生の夏休みの宿題「読書感想文」を例にして説明しましょう。
(1)「ゴールからの逆算思考」で取り組んだAさん
Aさんは初めに、感想文の最終期限を設定し、それに必要な作業ごとの期限(締切)を次のように決めました。
- 8月25日までに書き終える
- そのために、8月20日までに下書きを終える
- そのために、8月15日までに本を読み終えて、下書きを書き始める
- そのために、8月5日までに本を入手する(購入する、または図書館で借りる)
- そのために、7月31日までに本の選定を終える
途中、予定どおりに進まないこともありましたが、余裕を持ったスケジュールを組んでいたため締切前の8月23日に終わりました。
(2)「積み上げ思考」で取り組んだBくん
それとは対照的なBくん。「読書感想文やらなくちゃなあ、でも、苦手なんだよなあ」と思いながら延ばし延ばしにしていましたが、一大決心をして始めましたのは8月25日。
課題図書一覧表の中から一番読みやすそう本を選び、図書館に借りに行きましたが、その日は休館日でした。翌日の8月26日に行ってみたら課題図書は一冊残らず全て貸し出し中。予想していなかったことが続きます。
Bくんは少し焦りはじめました。近所の小さな書店に行ってもありません。お父さんに頼んで職場近くの書店で買ってきてもらうことにしました。「読んでいないどころか、まだ本を買ってもいなかったのか?」と呆れられてしまいました。本を手に入れたのは8月27日の夜です。
読書嫌いのBくんは思ったよりも時間が掛かってしまい、読み終えたのは夏休み最終日8月31日の午前中です。下書きもせずぶっつけ本番で書き始めて、書き終えたのはその日の夕方でした。
開始した日から、それぞれに要した時間を積み上げたものが完成日(8月31日)です。下書きなし、ほとんど推敲(すいこう)をする余裕もなかったため、誤字脱字がいくつかあり、内容もあまり良いものとはなりませんでした。
もうダメかもとヒヤヒヤしながらの一週間で、書き終わった時はヘトヘトです。来年こそは早めに始めようと思ったとのことです。
Aさんについては、優等生的に少し誇張して書きましたが、実は昨年のAさんは今年のBくんと似たようなものでした。しかし、昨年の苦労はもう懲り懲りだったようです。そして、夏休み初めにお母さんから「今年はきちんとやりなさいよ!」と強く言われたのがきっかけで、お父さんに相談しながら計画を立てて取り組みました。大げさかもしれませんが、昨年の失敗から学び、「改善」を行ったといえます。「来年こそは早めに始めよう」と思ったBくんも、来年はAさんのようになってくれると良いのですが。
逆算思考のスケジュール管理のポイントは以下の三つです。
- 余裕を持った最終ゴール(期限)を設定する
- ゴールへのプロセスを工程に分解する
- ゴールから逆算して、各工程の期限を設定する
始めなければ終わらない。だから「着手期限」を設定する
スケジュール管理には、もう一つ有効な考え方があります。「着手期限の設定」というものです。逆算思考の最初のステップを切り出したものです。あまり知られていませんが、とても効果があります。
ある仕事に対して「着手する(始める)日時」を設定する。ただそれだけです。「え、それだけ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、それだけなのです。
二カ月前に依頼された仕事があったとしましょう。まだまだ先だと思っていて、気がついたら期限の一カ月前、二週間前になっていた。こんなことはないでしょうか? 私は……、時々あります。
仕事で一番億劫なのは「はじめの一歩」、つまり始めることだと思います。面倒だと思っていた仕事、苦手意識のある仕事を、いざ始めてみたら意外にもスイスイ進むということは往々にしてあることです。
着手は、ちょっとしたことで良いのです。資料作成という仕事ならば、「作成の目的を確認する」、「過去の似た資料に目を通してみる」、「手書きで簡単なラフスケッチを書いてみる」など、ハードルの低い、手の付けやすいことの期限を設定しましょう。そして、それをきちんとスケジュール帳に書き込んでおきましょう。
「仕事を早く終わらせるコツ」は仕事を早く始めることです。始めなくては終わりません。始めなくては始まらないのです。
ちなみに、この考え方は期限が先の仕事だけでなく、具体的な期限が無い仕事にも有効です。必要だけれど緊急ではない、もしくは期限が定められていない仕事があれば、着手期限を設定してみてください。
スケジュール管理について書いてきましたが、これらを私がいつも行えているわけではありません。このコラムの編集担当の方に、締切延長のお願いすることも時々あります。皆さんのお役に立つ内容を意識しながら、自戒を込めて書きました。