第37回 「方法論」より「目的論」。その仕事は何のためにやるのか?

業務の改善に取り組む時に、仕事の「方法」から考え始めることはありませんか? しかし、本来最初に考えるべきことは「そもそも何のためにやるのか?」という仕事の「目的」です。あのピーター・ドラッカーは言いました。「元々しなくても良いものを効率よく行うことほど無駄なことはない」と。

「方法論」より「目的論」。その仕事は何のためにやるのか?

先日、書店でビジネス書のコーナーを眺めていたら、ある一冊のタイトルが目に飛び込んできました。『「方法論」より「目的論」 』 という書籍です。これを見て、「そうそう! 仕事を考える最初の視点はこれなんだよな!」と思い、心の中で何度もうなずきました。

仕事を行う時や業務改善をする時に、つい仕事の「方法」(やり方、手段)から考え始めてしまいがちです。しかし、本来最初に考えるべきことは、仕事の「目的」です。そして、「仕事の目的」=「そもそも、その仕事をやるのはなぜか?」を考えることは、「その仕事が生み出す成果」「仕事の成否を決める基準」を明らかにすることにつながっていきます。

業務改善の七つの視点(5W2H)

私が業務改善のコンサルティングや研修を行う時、「5W2H」というものを説明します。これは、改善の視点七つ(Why、What、When、How、Who、Where、How Many / How Much)の頭文字(表参照)を並べたものです。この七つは同列のものではありません。もっとも重要で、最初に考えるべきものが「Why(目的)」です。

業務改善を考える七つの視点

業務のWhy(目的)を明確にした後、具体的な業務の方法を考えていきます。

具体例:「営業会議の見直し」

「営業会議の見直し」という例を使って、仕事の「目的」と「方法」について説明しましょう。あなたは、営業本部のスタッフで営業会議の事務局を担当しているとします。毎月、全国七カ所の支店長が本社に集まって行われる「営業会議の見直し」を上司から指示されました。あなたはどのように見直しを考えていきますか? この例を、営業会議ではなく、あなたが関わっている「定例会議の開催」に置き換えて考えても結構です。

今なら、リアルな対面会議からリモート会議への変更がすぐに思いつくかもしれません。出席者の時間や移動交通費などのコスト削減効果は小さくないでしょう。開催の事前告知方法、当日の進行などを見直すことで会議の生産性を高めることもできるはずです。

  • * 会議の生産性ついては、当連載コラムの第31回で“会議の改善”について詳しく説明しています。本コラムの最後にリンクを張っておきますので、ぜひ併せてご覧ください。

その他にも、七つの視点に照らして、開催方法、開催時期・時間、出席者、開催場所など、見直せることは幾つもあるでしょう。繰り返しになりますが、最初に行うべきことは「目的(Why)」を考え抜き、明確にすることです。

上記のような営業会議の目的を一般的に考えてみると、「各支店の業績の報告・共有」「営業本部からの営業戦略の説明、指示、徹底」「各支店で保有している営業ナレッジの共有」「個別テーマ(例:中堅営業担当者の教育、営業パンフレットの改訂)の検討」などが挙げられます。方法の見直しは、その目的を明確にした後、検討し、実行しなければなりません。当たり前のことですが「目的」によって、適切な方法は異なります。

目的を考え抜いていくと、場合によっては「そもそも営業会議は不要だ」という結論に行きつくかもしれません。営業本部が各支店の情報を収集して全支店へレポーティングすることで「営業会議」に代替されるなら、コストを掛けて毎月開催する必要はないでしょう(レポーティングだけで代替できてしまうとしたら、それまでの会議に大いに問題があったわけですが……)。

あのピーター・ドラッカーは言いました。「元々しなくても良いものを効率よく行うことほど無駄なことはない」と。

皆さんが「何かの業務を見直す」「新しい業務に取り組む」時には、「手段・方法」を考える前にまず「目的」を考え抜いてください。

目的から方法を考える例題(練習問題)

業務の目的から考える意識を持つと、それが思考のクセ、習慣になります。「この業務の目的は?」「何のために行うのか?」を考えるための八つのテーマを例題として紹介します。

  1. 「新入社員研修の開催」
  2. 「新卒採用者の内定式開催」
  3. 「社内システムの見直し」
  4. 「アウトソーシングの活用」
  5. 「●●業務の担当者の変更」
  6. 「就業規則の改訂」
  7. 「周年事業の開催」
  8. 「インボイス制度対応のシステム導入」

ぜひ幾つかの例題に取り組んでみてください。今、皆さんの職場で同様の業務があれば、より実践に近い練習となるでしょう。

参考

第31回 テレワークの成否はコミュニケーションにあり(2) ~会議を改善する~

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この記事の著者

太期 健三郎

ワークデザイン研究所 代表
石山社会保険労務管理事務所 パートナー・コンサルタント

経営コンサルタント。
管理間接部門の業務改善、HRM(人材マネジメント)の二本の専門領域を持つことを強みとする。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)、株式会社ミスミ、株式会社グロービスに勤務後、2008年にワークデザイン研究所を設立。
MURCでは人事コンサルティング、ミスミではコールセンターの業務改善を行った後、三枝匡社長(当時)の直轄タスクフォースで営業改革を推進する。グロービスではコンプライアンスおよびリスクマネジメントを統括、推進。
また、2013年~2015年にはクライアント企業の食品メーカーの内部改革者として人事部長・経営改革室長を兼務する。
「患者様の声をよく聴き、丁寧に診断・治療する“中小企業のかかりつけ医”」を信条としている。
ワークデザイン研究所
石山社会保険労務管理事務所

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