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第2回 マイナンバー制度、業務面から準備すべきこと
2016年1月よりマイナンバー制度が開始します。
それに伴い、今年2015年10月からマイナンバーの通知が始まり、民間企業は規模にかかわらず従業員からマイナンバー(個人番号)を収集します。
制度開始までのわずかな期間で、企業は業務面で何を準備すべきか?マイナンバー制度や人事総務の実務に詳しい 社会保険労務士 北條孝枝氏に聞きました。
IT面での準備に関してはバックナンバー「マイナンバー制度、IT面から準備すべきこと」をご覧ください。
マイナンバー制度に備え、やるべきことはいろいろありそうですが、優先的に準備すべきことは何でしょうか?
企業は、2015年10月以降に順次、パートやアルバイトを含む全従業員とその扶養家族の個人番号を集めなければなりません。それまでに、「個人番号に関わる業務」を担当する責任者や実務担当者を決め、役割を明確化することが必要です。
担当者を明確にしたら、次に準備すべきことは何でしょうか?
個人番号に関係する業務を洗い出し、制度への対応案を検討します。また、業務の流れを整理し、具体的な取扱ルール(取扱規程など)をつくります。
下記はNG例です。このようなことが無いように、具体的な対策を考えます。
- 個人番号をそのまま社員番号として利用する
- 年末調整時に個人番号が記載された書類を総務担当者机上の箱に封入せずに提出する
全社的な取り組みをトップダウンで進めるため「基本方針」の策定も検討しましょう。
業務フローや基本方針、取扱規程を策定するのですね。
中小規模事業者は、取扱規程は策定しなくてもよいと聞きましたが?
中小規模事業者(法人単位で100名以下)は特定個人情報等の取扱等を「明確化」するなら、取扱規程の策定義務はありません。(情報の安全管理措置 中小規模事業者の特例)
ただ、明確化することは、結果的に何らかの文書で残すことと変わらないとも言えます。担当者変更の際は、確実な引き継ぎが必要なので、文書として残しておくことが望ましいでしょう。
マイナンバーの取扱体制やルールが整ったら、制度への準備は万全ということですか?
いえいえ、これだけではありません。
「従業員教育」を実施する必要があります。
10月以降、個人番号が記載された「通知カード」が各家庭に届きます。
- 従業員が大事なものとは知らず、通知カードを捨ててしまった
- 従業員が自分の通知カードの写真を撮ってTwitterに投稿した
- 通知カードが届いた後に結婚し、引っ越したが、市区町村でカードの記載内容を変更していない
上記はどれもNGです。通知カードが届く前に、マイナンバーは「なくさない」「見せない」「更新する」の三原則について全従業員に教育しましょう。
税理士や社労士に年末調整業務を委託しているのですが、今後何か影響はあるのでしょうか?
マイナンバー制度開始後の「業務委託範囲」「委託先の責任」「料金」などについて、委託先の税理士や社労士、アウトソーシング企業に確認をしましょう。
委託先や再委託先にはガイドラインが定める安全管理措置を守ってもらいます。(企業に監督責任あり)
「秘密保持義務」はもちろん、「漏えい事案等が発生した場合の委託先の責任」、「委託契約終了後の個人情報の返却または廃棄」など、重要な事項を契約書に追記するか、別途、覚書などを交わす必要もあります。
マイナンバー制度は今後の企業活動に広く影響があります。
全部署・全従業員が対象になるため、トップダウンでの全社的な対応が不可欠です。
また、人事、厚生、総務、社内システム担当、教育、各事業所など、関連する広範囲な部署で協力し、外部リソースを上手に活用しながら、残りわずかな期間で効率的に制度対応していきましょう。
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