企業が従業員のエンゲージメント向上や採用力の強化を目指すうえで、福利厚生の充実度を高めることは極めて重要です。その代表的な選択肢である食事補助制度ですが、このたび、大きな制度改正が実施されることになりました。
実質的な手取り額アップや企業の税金負担軽減に大きく寄与する食事補助制度について、変更点から実務上の適用要件まで徹底解説します。
2026年 9月11日公開
企業が従業員のエンゲージメント向上や採用力の強化を目指すうえで、福利厚生の充実度を高めることは極めて重要です。その代表的な選択肢である食事補助制度ですが、このたび、大きな制度改正が実施されることになりました。
実質的な手取り額アップや企業の税金負担軽減に大きく寄与する食事補助制度について、変更点から実務上の適用要件まで徹底解説します。
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[関連動画]本記事は、こちらの動画の内容を基に補足解説を加えています
【保存版】42年ぶりの税制改正|社員の食事補助制度の非課税限度額が7,500円に! 変更点をわかりやすく解説!【HQ・大塚商会】
目次
税制改正ガイドブック 資料ダウンロード

株式会社HQおよび税理士による監修による、令和8年度の税制改正に伴う人事・総務担当者向けのポイント5つを解説します。さらに今回注目される非課税額の引き上げ項目やインフレ実態調査についてご紹介しています。
ダウンロード資料:PDF 33ページ
従業員へ食事を提供したりその費用を補助したりする場合、特定の要件を満たせば「給与課税」されずに非課税扱いの福利厚生費として処理できます。この非課税枠が、これまでの経済情勢や働き方の変化を受けて42年ぶりに大幅に引き上げられることになりました。

これまで長年にわたり、食事補助が非課税として認められる企業の負担上限額は「月額3,500円(税別)」と定められていました。しかし、令和8年(2026年)4月1日以降に支給される食事から、この非課税限度額が「月額7,500円(税別)」へと一気に倍以上に引き上げられました。また、深夜勤務者に夜食の現物支給ができない場合に代わりに支給できる金銭(夜食手当など)の非課税限度額についても、1回あたり300円から「650円以下」へと同様に引き上げられました。これにより、企業が従業員へ還元できる幅が大きく広がりました。
この歴史的な税制改正の背景には、昨今の物価高騰とそれに伴う急激なインフレがあります。従来の月額3,500円という枠は昭和59年(1984年)に設定されたものであり、近年のランチ代の相場上昇や原材料費の高騰に対して、実態と乖離(かいり)していることが課題となっていました。政府が進める構造的な賃上げ支援と、働く人々の生活防衛・福利厚生の向上、および課税の公平性を担保するために、約42年ぶりとなる大幅緩和が決定されたのです。
非課税限度額が月額7,500円に引き上げられたとしても、ルールを逸脱した運用をしてしまうと「給与の一部」とみなされ、所得税や社会保険料の課税対象となってしまいます。確実に非課税枠を適用するための三つの必須条件を確認しておきましょう。
特定の役員や一部の職種・お気に入りの従業員だけが利用できる制度であってはなりません。福利厚生費として認められる大原則は、全従業員が平等に利用できる機会(制度)として設計・運用されていることです。パートやアルバイト、契約社員も含めた全社的な規定づくりが必要です。
ここが最も誤解されやすい重要なポイントです。会社が食事代の全てを無料(全額補助)で支給した場合は、全額が課税対象になります。非課税を適用するには、従業員自身が「食事価額の半分(50%)以上」を負担していなければなりません。例えば、1食1,000円のお弁当を支給する場合、従業員から少なくとも500円以上を徴収し、企業の補助(負担)額を500円以下にする必要があります。
運用部門の負担にも注意が必要
なお、この自己負担ルールを自社の経理・総務部門だけで運用しようとすると、従業員一人一人が提出するレシートを毎月確認し、誰がいくら利用したかを表計算ソフトなどで管理する必要があり、実務負担が大きくなりがちです。実際、この煩雑さから運用を諦め、単純な「食事手当」の現金支給に切り替えてしまう企業も少なくありませんが、手当支給では非課税メリットを享受できないため注意が必要です。

株式会社HQ 窪田 美波 氏
従業員の自己負担が半分以上という条件を満たしたうえで、さらに「企業が負担した金額の合計が従業員1人あたり月額7,500円(税別)」に収まっている必要があります。なお、この判定は消費税および地方消費税を除いた税別金額で行われます。
| ケース | 課税/非課税 |
|---|---|
| 現金で「食事手当」を一律支給 | 原則課税(深夜勤務650円以下を除く) |
| 残業・宿日直時の食事を現物で無料提供 | 月額7,500円枠と別枠で全額非課税 |
食事補助は原則として、「現物の支給」または「それに類するチケットなどの支給」が前提です。給与に一律「食事手当」などの名目で現金(現金支給)を上乗せする場合は、深夜勤務に伴う特定のケース(1回あたり650円以下)を除き、全額が給与として課税されます。また、残業や宿日直を行う従業員に対して、その時間帯の食事として直接現物を無料で提供(弁当の現物支給など)する場合は、これら月額7,500円の枠とは別枠で、無料提供であっても全額非課税として扱うことができます。
人手不足の解消や定着率向上のため、多くの企業が基本給の底上げ(ベア)や手当の追加を検討しています。しかし、単純な「給与での賃上げ」と「非課税枠を活用した食事補助の導入」では、手元に残る金額に大きな差が生まれます。

給与として基本給を増額する場合、給与額の増加に伴い、企業側の人件費負担も増加します。一方、一定の要件を満たして適正に設計された食事補助であれば、会社負担分を福利厚生費として損金算入できるため、従業員への還元策として活用できます。
給与の引き上げとは異なる形で従業員の生活を支援できる点も、食事補助の特徴の一つです。
非課税枠の活用を差別化のチャンスに
ある調査では、食事に関する福利厚生制度を実際に利用している従業員は全体の約15%にとどまるというデータもあり、多くの企業にとって食事補助はまだ十分に活用されていない差別化要素です。今回の非課税枠拡大は、採用・定着の両面で他社との差をつけるチャンスともいえるでしょう。

株式会社HQ 窪田 美波 氏
従業員にとっても、食事補助には大きなメリットがあります。基本給が増えると、所得税や住民税などが増加するため、額面の増加分がそのまま手取りとして残るわけではありません。
一方、一定の要件を満たした食事補助については、非課税枠の範囲内で所得税の課税対象とならないため、給与として同額を受け取る場合と比較して、従業員が実感できる経済的メリットが大きくなる可能性があります。
月額7,500円分を給与(基本給アップ)として支給する場合と、非課税要件を満たす食事補助として会社が7,500円を負担する場合を比較してみましょう。
| 支給方法 | 企業側の支給額 | 従業員が受け取る価値 |
|---|---|---|
| 給与(基本給)で7,500円アップ | 7,500円+給与増加に伴う各種企業負担 | 所得税・住民税などが差し引かれるため、7,500円を下回る |
| 非課税要件を満たす食事補助として 7,500円支給 | 7,500円 | 最大7,500円相当の食事補助 |
例えば、給与として7,500円を追加支給した場合には、所得税や住民税などが発生するため、従業員が実際に受け取る手取り額は7,500円を下回ります。
一方、一定の要件を満たした食事補助であれば、非課税枠の範囲内では所得税の課税対象とならないため、会社が負担した金額を食事という形でより直接的に従業員へ還元できます。
そのため、食事補助は単純な給与アップとは異なる形で、従業員の実質的な可処分所得を支える福利厚生施策として活用できます。
従業員100名での試算
この差を年間・組織規模で捉えるとよりインパクトが明確になります。月7,500円の賃金アップは、年間では約2万7,000円もの税・社会保険料が差し引かれる計算になり、従業員100名規模の企業であれば、非課税食事補助の場合と年間で約270万円ものコスト差が生じることになります。従業員数が多い企業ほど、賃上げよりも食事補助を選ぶメリットは大きくなるといえるでしょう。

株式会社HQ 窪田 美波 氏
令和8年度(2026年度)の税制改正のポイントをまとめたガイドブック【税理士監修】をご用意しました。無料でダウンロード可能ですので、ぜひご参考にしてみてください。
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ダウンロード資料:PDF 33ページ
食事補助を「現物」として従業員に届ける手段には、複数のアプローチが存在します。オフィスの規模や従業員の働き方、好みに合わせて選定することが成功の鍵です。
| サービス | 初期コスト | 向いている企業規模 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 社員食堂 | 高い | 中堅~大企業向け | コミュニケーション活性化に強い |
| 宅配弁当サービス | 低い | 小規模〜 | 税務管理がシンプル |
| 食事チケット・カード | 低い | 全規模(テレワーク対応) | 場所を問わず公平に利用可能 |
| 設置型社食(オフィスコンビニ) | 中程度 | 全規模 | 24時間利用・健康志向 |
社内に厨房(ちゅうぼう)や調理・配膳スペースを設け、温かい食事を提供する伝統的なスタイルです。材料費や調理に直接かかった費用の合計を基準に「食事の価額」を算出して自己負担額を設定します。従業員間のコミュニケーション活性化や帰属意識の醸成に極めて効果的ですが、初期投資や運営コスト、一定以上のスペースが必要となるため、大企業向けの仕組みといえます。
契約した弁当事業者が、毎日決められた時間までに注文されたお弁当をオフィスに届ける仕組みです。企業側は従業員の注文を取りまとめて支払いを代行し、後から従業員負担分(半額以上)を回収します。業者への支払総額が「食事の価額」となるため、税務上の管理が非常にシンプルで小規模なオフィスでも手軽に導入可能です。
提携しているコンビニや飲食店、加盟チェーン店などで専用の電子マネーやチケット、ICカードを用いて食事決済ができるサービスです。近年最も人気が高まっています。従業員は好きなタイミングで好みのメニューを外食やテイクアウトで楽しむことができます。さらにテレワーク(在宅勤務)や全国各地の営業所勤務といった、オフィス外で働く従業員に対しても完全に公平な形で食事補助を提供できる点が最大の強みです。
公平性・省力化の観点で、カード型サービスは有効
実際に複数拠点でそれぞれ弁当業者へ委託していたある企業では、拠点ごとの弁当手配に加え、「食べると言ったのに食べなかった」「食べないと言ったのに急きょ必要になった」といった個数管理の煩雑さから、一度は制度自体を廃止してしまったケースもあります。
従業員規模が50~60名を超えてくると、こうした個別管理の負荷はさらに大きくなる傾向があるため、拠点をまたいで公平かつ省力的に運用できるカード型サービスへの切り替えを検討する価値は高いといえます。

株式会社HQ 窪田 美波 氏
オフィスの一角に専用の冷蔵庫や棚、電子レンジなどを設置し、あらかじめ調理・個包装された総菜やサラダ、主食を常備しておくサービスです。従業員は好きな時に1品100円~200円などで購入できます。最近では初期費用をかけずに月額数万円(50名規模など)の運用費から手軽にスタートでき、管理の手間が少ない製品や、栄養バランスに配慮したオーガニック・乾燥野菜を取り入れた健康志向のサービスも登場しています。ウェルビーイングや健康経営の観点からも支持されています。
食事補助制度をトラブルなく円滑に導入するためには、経理や労務と連携し、段階的なプロセスを踏むことが欠かせません。実務担当者が押さえるべきステップをご紹介します。
まずは食事補助制度の利用基準や会社負担・自己負担の割合、利用対象者の範囲などを明文化し、福利厚生規定や就業規則に落とし込みます。労働条件の変更にあたる場合があるため、労使間での合意形成を進めておくとスムーズです。
従業員のニーズ(ランチは外食派が多いか、社内持参派が多いか、テレワーク比率はどの程度か)をアンケートなどで把握し、カードタイプ、設置型、デリバリー型などの最適なサービスベンダーを選定・契約します。
従業員の自己負担分をどのように徴収するか(毎月の給与から天引きするか、事前チャージやアプリ内決済にするか)を確定します。また、企業負担分を「福利厚生費」として処理するための経費精算ルート、利用明細や領収書などの証憑(しょうひょう)を保存・管理するフローを構築します。
「非課税による手取り効果」を従業員へ分かりやすくアピールしながら、利用手順のマニュアルを周知します。導入理由や使い方のガイダンスを丁寧に行うことで、初期の利用率向上につながります。
テレワークが浸透している企業では、「本社に出社している社員だけが得をする」状態を避ける必要があります。在宅勤務日でも全国のコンビニやスーパーで使える電子カード型の食事補助を採用するなど、誰もが等しく恩恵を受けられる仕組みを構築することが、不満の解消や組織の連帯感向上につながります。
制度を実際に導入・運用する際、総務や人事の担当者が疑問に思いがちなポイントをまとめました。
はい、対象に含める必要があります。「特定の役職のみ」といった限定的な支給は、福利厚生費としての非課税適用が認められない要因になります。勤務時間や日数に応じて支給要件に合理的な傾斜をつけることは可能ですが、原則として全ての従業員が申し込める、または利用できる公平な制度設計にしてください。
会社負担額が月額7,500円(税別)を超えてしまった場合、あるいは従業員の自己負担額が食事価額の半分未満であった場合、非課税条件から外れてしまいます。その結果、引き下げられた差額だけでなく、「企業負担分の全額」が給与として課税対象となるため、上限値と自己負担割合の管理は厳密に行う必要があります。
通常の勤務時間外に行う残業や、宿直・日直勤務の際に支給される食事(弁当などの現物支給)は、従業員負担がなくても全額非課税として処理できます。これは通常の「月額7,500円」の非課税枠とは一切合算せず、別枠として処理して問題ありません。
カード型など決済方法によっては、コンビニでの食事購入だけでなく、お弁当を作るための食材購入や、デリバリー・宅配サービスの利用にも充当できるケースがあります。日用品と食事を同時に購入した場合も、飲食にかかった金額を明示して申請すれば、他の商品と厳密に分けて購入する必要はありません。ただし、酒類やタバコなどの支出は対象外となるため、利用明細を確認する体制は必要です。
お弁当を持参するなどの理由で制度を利用しないからといって、その従業員にのみ代わりに現金(食事手当)を直接支給することはできません。現金で支給した時点でその手当は全額給与課税されてしまいます。利用しない従業員には、設置型サービスの間食利用を促す、あるいは選択できる代替の非課税福利厚生を提示するなどの工夫が必要です。
2026年4月からの「食事補助の非課税枠の倍増(月額7,500円への引き上げ)」は、企業にとって従業員の健康をサポートしながら、実質的な手取り増加をもたらす絶好のチャンスです。高騰する社会保険料を抑えつつ、魅力的な福利厚生をアピールして採用力・定着力を底上げするためにも、この42年ぶりの税制改正を契機に、ぜひ自社に適した食事補助制度の導入と見直しを前向きに進めてみてはいかがでしょうか。
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株式会社HQおよび税理士による監修による、令和8年度の税制改正に伴う人事・総務担当者向けのポイント5つを解説します。さらに今回注目される非課税額の引き上げ項目やインフレ実態調査についてご紹介しています。
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