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ApaRevo 活用コラム
大塚商会アパレル業専門SEが語る、システム導入の失敗例
ライフデザインプロジェクトでは、「ApaRevo」を導入いただく際に、専門SEが導入支援・稼働支援をいたします。ご支援の内容には、導入前の環境調査から、システムの操作指導、導入時のデータ移行・並行稼働、稼働後のサポートまで及びます。
大塚商会は、お客様のシステム稼働、業務改善に最大限尽くしておりますが、全ての作業を請け負えるわけではなく、お客様にご検討・作業いただかなければならない部分がございます。
システムの導入にあたり、一般的にユーザー企業様側で負担が大きくなる部分をご紹介しつつ、実際にあった事例を踏まえ解説・ご紹介します。
目次
失敗例1 ~要件・要望を収集し過ぎました~パッケージ選定のポイント
なぜここでつまずいてしまうのか。それは「システムで実現したいこと」を取捨選択なく、たくさん上げてしまうことが原因として多いです。
あれもやりたい、これも改善したい、あの機能も欲しい……日々の大量の業務に加え、システム導入により新たに取り組む業務にかかわるポイントは膨大なものになります。
システム導入にあたり実現しなければならないポイントを考慮せず、現場の意見全ての解決を目指すとシステム導入による業務改善が実現しないリスクがあります。
社内要望を全て羅列した要件で見積りを取ったら、数億円……ということも。
このようにして出てきた要件全てに対応できるパッケージシステムは存在せず、カスタマイズで対応となります。業務改善効果の薄い追加機能であっても開発には等しくお金がかかるのです。
システム導入検討時には、「何を実現したいか」という目的をしっかり定め、システムで業務改善する範囲を明確化することも大切です。
失敗例2 ~あうんの呼吸に失敗~ 言わなくてもわかると思った……
私のサポートとして、「あうんの呼吸でのサポート」を信条としております。お客様のご要望が逐次可視化されなくとも、当たり前のことは当たり前のこととしていわれなくとも、プロらしくサポートしたいと考えています。
この「あうんの呼吸」がささいな部分まで行き届く、つまり「かゆいとことに手が届くサポート」の実現に不可欠と考えています。この考え方は日本独自の考え方だそうですが、長年日本国内でビジネスをしてきた大塚商会内でも大切にされています。
しかし、システム導入時というのは、お客様のことを知るための期間が短いケースも多くあり、お客様にとっては当たり前のことであっても、我々が理解し得ない事柄も確かにあります。こういったお客様の認識と我々の認識をすり合わせるために、何回かヒアリングさせていただき、要件定義書を作成し、このギャップを埋めていきます。
我々SEがお客様のご要望を実現するための地図となるのが、この要件定義書になります。もちろん、対面でのヒアリングもさせていただきますが、最終的に作成される要件定義書をもとに「パッケージ機能で実現する」「こういった運用で対応する」「カスタマイズで対応する」ということを判断します。
長年アパレル業のシステム導入・稼働に携わっていますが、それ故に「一般的にこういった業務フローだろう」という知識がございます。お客様にお話しする際、その内容が違和感なく通じてしまい、お客様の想定と異なる要件定義ができ上がってしまうリスクはゼロではありません。
アパレル関連企業におけるシステム導入のプロフェッショナルであると自負しておりますが、要件定義書の作成の際には、我々に全てをお任せいただくのではなく、二人三脚でプロジェクトを進めていただけましたら幸いでございます。二人三脚で進めていく中で「あうんの呼吸でのサポート」を実現していくことが我々のやりがいです。
失敗例3 ~マスターデータ登録が全て手作業~ 思っていたより大変だった……
昨今のシステムにおいて、全ての取引情報を都度入力することはありません。基本的には、マスターというよく使うデータをあらかじめまとめており、取引データはマスターからデータを引用する形が多いです。
上代・下代の情報や仕入れ先情報、製品情報はあらかじめマスターとして登録してあります。「ApaRevo」でも例にもれず、稼働するためにはマスターデータを登録する必要があります。
このマスターデータ登録という作業は、システムを稼働するために、最初に行わなければならないものです。マスターデータというのは、そのシステムの構造に深くかかわるものですので、例えば、「ApaRevo」のマスターデータと他社基幹業務システムのマスターデータでは、桁数やコード体系、項目などが異なります。
「ApaRevo」ではCSVデータの一括取り込み機能が備わっており、また可能な限り我々SEもこの工数削減に尽力しますが、場合によっては、全てを手作業で登録する必要があるケースもあります。現行システムが古いもので、マスターデータの一括出力ができないケースなどです。
可能であれば、ご契約前の打ち合わせ時点で、お客様の環境を踏まえ、ご相談ご確認いただけますと幸いです。実態を考慮し現実的なロードマップを作成しますので、念を押してご確認させていただけましたら、予定に沿ってスムーズに稼働を実現します。
失敗例4 ~全てのデータを引き継ぎたい~ データを引き継がないなんてもったいない……
「全てのデータを引き継ぎたい」
そんな声をお聞きすることが少なくありません。しかし、それが新システム導入の大きなネックとなってしまう場合があります。
私たちはそのような例を見てきていますので「移行するデータをできるだけ絞ってください」とご案内するようにしています。
「必要なデータに絞り込むには時間をかけた検討が必要」「そもそもデータ移行はトライアンドエラーの繰り返しでやってみなければわからない」「今の段階で計画を立案してもその通りに進むかわからない、だから計画するよりまずやってみる」
確かにある意味では理にかなっているように思ってしまいますが、これが後に大変な時間と費用を浪費するような事態になってしまうことが少なくありません。
データ移行において必要な作業は下記のように多岐にわたります。
- 移行要件の整理
- 移行方法の検討
- 移行体制の検討
- 役割分担の検討
- 移行スケジュールの検討
- 移行仕様の検討
- 移行ツールの開発
- 移行リハーサルの実施
- 移行の実施
上流の移行要件の整理において移行対象を絞り込むことが全体の工期・スケジュールに与える効果は絶大といえます。ましてトライアンドエラーの繰り返しになるデータ移行においては、上流工程で検討に費やす時間より下流工程で費やす時間がはるかに多くなりがちです。やってみなければわからないからこそ、上流工程の検討にかける時間を惜しむのは本末転倒ともいえるでしょう。
まとめ
我々が提供する「ApaRevo」という製品はパッケージシステムであり、標準化された機能を搭載していますが、我々のサポート内容はパッケージ化が不可能で、都度最適なサポートを考え、実施しています。
失敗(トラブル)の経験を基に同じ内容を繰り返さないため、たとえ、ITベンダーが大塚商会でなかったとしても、同様の経験をしてほしくないという願いを込めて、今回筆を執らせていただきました。
もし私が貴社をサポートさせていただく機会がございましたら、成功体験として同様に情報を発信したく存じます。
[SE]2020年10月27日