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トラストサービスの公的枠組み~その2
第38回 トラストサービスをめぐる状況
トラスト元年の締めくくりとして、Data Free Flow with Trust(DFFT:信頼ある自由なデータ流通)を実現する「トラストサービスの在り方」について総務省のワーキンググループにて検討されてきた内容に関する報告書が、パブリックコメントを経て2月7日に確定公表されました。今回は「プラットフォームサービスに関する研究会トラストサービス検討ワーキンググループ最終取りまとめ」の第1章トラストサービスをめぐる状況、について紹介したいと思います。
トラストサービスをめぐる状況
1.1 概説
サイバー空間と実空間が一体化し、人のみならず、組織やモノからの情報発信が増大する社会全体のデジタル化が進展する中、信頼性のあるデータ流通の基盤としてトラストサービスの意義を記載し、具体的に、電子署名(本人性)、タイムスタンプ(存在時刻)、eシール(組織などの発信元)などのサービスをイメージで紹介しています。
1.2 利用動向
経団連デジタルエコノミー推進委員会でのアンケート調査結果として、デジタル化は進展しているものの、トラストサービスの利用はまだ途上であることが示されました。その原因として、その信頼性について何らかの不安を感じており、法令やガイドラインなどの公的な仕組みによるデータへの信頼性担保を求めているものと考察されています。
1.3 デジタル化政策
我が国におけるデジタル化に関する政策として、e-文書法、官民データ活用推進基本法、デジタル手続法、Data Free Flow with Trust(DFFT)コンセプトが紹介されています。
1.4 経済効果
三菱総合研究所による効果試算として、「トラストサービスの導入により、大企業1社当たり1カ月の経理系業務が10.2万時間から5.1万時間に半減する」などの経理系業務や間接業務の大幅な削減効果や、トラストサービス市場の成長試算が示されました。
1.5 諸外国の動向
EU、米国、中国の動向について調査結果が紹介されています。特に、デジタルシングルマーケットの実現をもくろむ欧州においては、EU加盟国の共通法律としてeIDAS規則が制定されており、トラストサービスやその信頼を保持する仕組みが規定されていることが紹介されています。
- * eIDAS規則については、「第12回 EUで始まったeIDAS規則」を参照してください。
次回は、第2章「論点と取り組みの方向性」について解説します。
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