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トラストサービスの公的枠組み~その1
第37回 トラストサービスに関する課題と在り方の検討
トラスト元年の締めくくりとして、DFFTを実現する「トラストサービスの在り方」について総務省のワーキンググループにて検討されてきた内容に関する報告書(案)が公開されました。今回は「トラストサービスに関する課題と在り方の検討」について整理したいと思います。
トラストサービスに関する課題と在り方の検討
「我が国が目指すデータがヒトを豊かにする社会『Society5.0』の基盤として、誰/何からのデータであるかを確認する仕組みや、データの完全性を確保する仕組みとしてのトラストサービスが不可欠であると考えられる。我が国におけるトラストサービスに関する課題を整理し、その在り方について検討を行う。」
として、総務省にて「トラストサービス検討ワーキンググループ」有識者会議が設定され、2019年1月31日より同年11月28日までの10カ月間で15回もの議論を重ね、プラットフォームサービス研究会最終報告書の別紙として、「プラットフォーム研究会トラストサービス検討ワーキンググループ最終取りまとめ(案)」として発出されました。
プラットフォームサービスに関する研究会(最終報告書 案・PDF)
これまで曖昧(あいまい)だったトラストサービスを、「インターネット上における人・組織・データ等の正当性を確認し、改ざんや送信元のなりすまし等を防止する仕組み(トラストサービス)」と明記し、第1章において、その利用動向、経済効果について整理され、第2章にて、我が国における論点と取り組みの方向性が示されています。
主なトピックとしては、我が国の政策として、タイムスタンプと、組織の正当性が確認できるeシールについて、具体的な制度検討を開始することが示されています。
タイムスタンプは、現在、総務省による「タイムビジネスに関わる指針」を踏まえた認定制度として、(一財)日本データ通信協会にて「タイムビジネス信頼・安心認定制度」が運用されています。今般、改めて、国による関与を明確にした認定制度の検討が始まります。
eシールは、サービス提供事業者に求められる技術・運用上の基準を国が提示し、民間による認定制度の検討が始まります。
トラストサービスの在り方
具体的なニーズと課題が顕在化しているタイムスタンプ、eシール、リモート署名について取組の方向性を提示。
データの存在証明・非改ざんの保証の仕組み(タイムスタンプ)
現状・課題 | 取組の方向性 |
---|---|
| タイムスタンプ事業者に対する国としての認定制度を創設。 |
組織の正当性を確認できる仕組み(eシール)
現状・課題 | 取組の方向性 |
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| eシールの認証事業者に対する国の基準に基づく民間の認定制度を創設。 |
人の正当性を確認できる仕組み(電子署名)
現状・課題 | 取組の方向性 |
---|---|
| リモート署名の電子署名法上の位置づけについて検討。 |
- * 上記に加え、電子文書の送受信・保存について規定している法令との関係で有効な手段として認められるトラストサービスの要件を明示するよう、所管省庁への働きかけを行う。
- * 出典:プラットフォームサービスに関する研究会最終報告書(案)の概要[別紙2](2019年12月 総務省)p.21より引用
プラットフォームサービスに関する研究会最終報告書(案)の概要(PDF)
それでは次回から2回にわたって、最終取りまとめ(案)についてポイントを解説します。
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