第150回 「似た者同士」を集めたがる社長の話

「似た者同士」が力を発揮する場面は確かにありますが、ビジネスにおいては、むしろ「異質」な人たちと関わることの方がメリットが大きいと感じます。そのため、「似た者同士」ばかりが集まり過ぎてしまうことで生じる問題の方が気になっています。

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「似た者同士」を集めたがる社長の話

似たもの集めの副作用

ある会社の社長の話です。少し人見知りなところがあるのか、うたぐり深い性格なのか、自分の周りに「似た者同士」を集めたがる傾向があります。自分に似た人というよりは、自分が扱いやすい「似たタイプの人材」といった方が良さそうです。そのこだわりには少し度を越したところがあり、特に採用の場面でその傾向が強く出ます。おとなしく従順そうな人を好み、そのこと自体は悪くありませんが、好みに当てはまらない人材をなんだかんだとダメ出しをして結局排除してしまいます。

今この会社で起こっている問題は、典型的なリーダー不足です。リーダー適性を持った人材が極端に少ないのです。仕切れる人が社長しかいないため、ちょっとしたトラブルや突発事情で組織がすぐに回らなくなります。リーダー候補の採用をかけて入社しても、結局社長と馬が合わずに辞めてしまいます。社長の人間観が会社の成長を止めてしまっているように見えます。

自分の腹心のようなポジションであれば、気持ちが通じ合う人でないとその役割は確かに任せづらいですが、逆に受け入れられる人物像の幅が広ければ、さまざまな視点から多様な意見を聞くことができます。自分とは違う生い立ち、違う学歴、違う性格、違う職務経験などを持った人を身近に置けば、何か良い効果を生む可能性があります。

スタートアップ企業のように、素早い意思決定でスピード感を持って一つの方向に突き進むことが必要な場合は、同じ思いを持った似た者同士が好ましいかもしれませんし、反対に一定以上の規模で成熟した組織であれば、人材の多様性が強みに働くことが多いように思います。
結局はその組織の置かれた状況、経営者や幹部社員の考え方によって、それぞれバランスをとっていくことになるのでしょう。

同質の人を集めれば、その組織の思考は偏る

最近はどちらかというと、自分と異なる意見に対してそれを受け入れないだけでなく、必要以上に攻撃したり排除したりする傾向が多いように感じます。知り合いは大切にするけれどもそれ以外の他人には厳しいとか、何でも敵か味方かで分けようとするようなことです。「寛容性が失われている」などと言われるのも、こうした状況を指しているのだと思います。

これは2018年の新聞記事ですが、ある主要経済団体の会長と18人いる副会長の経歴について「恐るべき同質集団」とあり、出身企業は過去30年で多様化したと評価する一方、人間の属性の多様化は全く進んでいないとありました。

挙げられていた内容は、

  • 全員男性で女性ゼロ
  • 全員日本人で外国人ゼロ
  • 最年少でも62歳で、50代すらいない
  • 全員がサラリーマン経営者で起業家はゼロ
  • 全員が転職経験を持たない生え抜き

といったものです。

出身大学は東京大学が12人と圧倒的で、以下一橋大学が3人、京都大学、横浜国立大学、慶応義塾大学、早稲田大学が各1人とのことでした。

この記事から今は約8年たちますが、この団体の直近情報を調べたところでは、最年少は61歳で転職経験のある人は1人、女性は2人でそのうち1人は外資系コンサル出身者だそうで、これは極めて異例といわれているようです。時間がたって多少の変化はあるようですが、多様性というにはまだまだほど遠い感じです。

会長、副会長になるような方々は、皆さん優秀で立派なのは間違いないでしょうが、ここまで同質の人を集めるのは、よほど狭い交友関係の中で互選するなど、かなり意識的でなければこうはなりません。私が気になるのは、あまり意図していない無意識のうちに、結果的に似た者同士ばかりが集まっているのではないかということです。
そんな環境の中にいるトップリーダーたちが、いつも似た者同士だけで意見を交わし、それで物事を決めていたとしたら、いくら視野が広い人であっても、やはり思考は偏ります。似た者同士の議論だけで「そうだそうだ」となって、それが全体意見のように進んでしまう怖さがあります。

イノベーションは異質な人たちの多様な意見から生まれる

かつての日本企業の強みは、同質性の高さによるチームワークの良さが、さまざまな局面で力を発揮したためともいわれました。しかし、今はそれが足かせになってイノベーションが生まれにくくなっているといわれます。イノベーションは異質な人たちの多様な意見の中から生まれるものとされるからです。

「似た者同士」はあつれきが生まれにくい、方向を定めやすい、早く決められる、お互い気楽などの利点はありますが、それがメリットとなるのは一部の特殊な場面に限られていて、それ以外のビジネスの中では意識的に「異質」な人たちと付き合った方がメリットは大きいように思います。
「似た者同士」でかたまり過ぎていないか、それが原因になっていそうな組織上の問題が、いろいろなところで気になります。

次回は3月24日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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