第147回 「情報共有してもどうせ無駄」という会社が損しているという話

「組織での情報共有」は多くの企業で課題として挙げられます。共有範囲や内容の線引きは悩ましいところですが、「どうせ理解できない」などと言って情報共有を軽視すると、損をすることしかありません。

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「情報共有してもどうせ無駄」という会社が損しているという話

「組織における情報共有」は、どの会社でも大なり小なり課題として挙がることが多い項目です。
その中でも「何を、どこまで、誰に知らせておくか」という情報共有のさじ加減は、なかなか悩ましい問題です。機密情報といわれるもの以外にも、経営上の問題や個人情報にまつわるもの、社内の人間関係や信頼関係に関わるもの、その他さまざまな事情があって表に出せない情報はたくさんあります。隠し事はないに越したことはありませんが、組織内の情報はそんな綺麗(きれい)事だけで扱えるものだけではありません。このような会社情報について、これらをどこまで伏せてどこから公開するのかという線引きは難しいことですが、この判断基準には企業風土や経営者の性格が結構はっきり出るように思います。

どこまで「組織における情報共有」を実施すべきか

いろいろな会社を見ていると、その線引きが“ほどほど中くらい”という例は意外に少ないように感じます。どんなことでも情報共有することを原則とし、ごく一部の問題がある事項だけを伏せる会社もあれば、反対に安易な共有を避け、必要だと思われることを必要な人にだけ限定して伝えるという会社もあり、どちらか一方に偏っていることが多いようです。

私がクライアントで組織風土改革や人事制度改革、その他の人事施策を実施するときは、前者のように「よほどの事情がない限りは、原則として情報共有すること」を勧めます。その理由としては、以下の点が挙げられます。

  • 共通認識が増すことで目標に向かう方向性が生まれて、目標達成につながりやすいこと
  • 情報を伏せたり隠したりする行為がなくなることで、お互いの信頼関係が増すこと
  • 情報が常に表に出ていることで手抜きやサボり、その他の不正が抑止されること

情報共有による共通認識や相互監視がないと、目標を見失ったり自分に甘くなったりしてしまうことがあります。

伝えなければ、最善でも現状維持しかない

先日、ある会社でこれと同じ話をしていたところ、社長は「いくら情報共有をしても、社員たちはどうせその内容を理解できない」と言います。この社長はどちらかというと会社状況を社員に知らせようという姿勢が少なく、何かあっても必要最低限の連絡事項を通達するだけということが多い人です。
この会社では人事制度の見直しを検討していて、社長からは社員の評価に関して「結果をしっかり問うようにしたい」という意向が示されていました。そのためには、業績数字をはじめとしたさまざまな指標の情報を共有して、社員が目標達成度などを把握できるようにする必要があると話したところ、前述の「どうせ理解できない」という発言が出てきました。

この時に私からお話ししたのは、「確かに理解できないかもしれないが、伝えなければ10人中10人が何も分からないままであり、もし伝えてみれば10人のうち1人か2人は理解してくれるかもしれない」「そうなれば、その人たちは社長の考えを理解して行動できるようになる」ということです。
「どうせ分からないから」と言って伝えないのは最善でも現状維持しかないが、「どうしたら伝わるか」を考えて伝えれば、何かプラスになる要素が生まれてきます。

相手が理解できるように伝える必要がある

この話をしても、過去に相手への期待を裏切られた経験がある社長やマネージャーには、なかなか理解してもらえないことがあります。「どうせ理解できない」「言っても無駄」などと言います。ただ、そう言っている人ほど、その反面で「本当は分かってほしい」「理解してほしい」という気持ちも強く感じます。
その思いを分かってもらうには、自分が伝えたいことを相手が理解できるように伝えなければなりません。何度も同じことを言わなければならないかもしれません。しかし、そうやって情報共有を意識すれば、全員に同じレベルを望むのは無理だとしても、その情報に応じて行動できる人材は、一定数は必ず存在します。

あくまで私個人の考えですが、プライベートを含んだ「個人情報」、配置異動や処遇に関する「人事情報」、その他経営上の「機密情報」以外であれば、社内の情報共有が進んでいるほど、さまざまな施策がスムーズに実行できると感じます。
「どうせ無駄」「どうせ言っても分からない」と言って情報共有を軽視することは、損をすることしかありません。

次回は12月23日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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