第20回 せっかくの組織変更が活力を奪ってしまっている会社のお話

年度の切れ目は、企業では組織変更と人事異動の季節です。この3月、4月には、その当事者になった方も多いのではないでしょうか。

企業が組織変更や人事異動をする理由と言えば、

  • 事業環境の変化に向けた対応。
  • 昇格や昇進によるモチベーションアップの視点。
  • 対象者にいろいろな経験を積ませる人材育成の視点。
  • 腐敗や癒着を防ぐ。
  • マンネリを防ぐ。

その他にもいろいろな理由があるでしょう。

会社にとって、基本的にはメリットになることですが、組織変更や人事異動によるデメリットも当然存在します。

  • 仕事の引き継ぎに関するコスト
  • 慣れが失われることでの仕事の効率低下(一時的かもしれませんが)
  • 過去からの一貫性の欠如
  • 会社資料の改訂、名刺の変更、その他異動によって発生するさまざまな費用

などが大きなことだと思います。

組織変更や人事異動は、メリットがデメリットを上回るからこそ行われる訳ですが、ある会社で見かけた光景は、このデメリットがあまりにも大きく極端なものでした。
それは、管理職層を中心に、組織変更や異動が見込まれることを理由にして、とにかく「行動しない」「自分では決めない」「先延ばしにする」という行為が横行していることでした。
大きな組織変更や人事異動というのは、一般的には数年サイクルのローテーションなど、中長期の視点も合わせ持って行うことが多いと思いますが、この会社はとにかく組織変更と人事異動が頻繁でした。

管理職は毎年肩書が変わり、自分の部下も仕事内容も、毎年変わっていきます。頻繁な組織変更の理由ははっきりわかりませんでしたが、どうも会社上層部の考え方として、誰がどんな専門性で何をやっているという人に関する視点よりも、まずは組織の形ありきで考える机上論が優先される傾向があるためのようでした。

そんな環境の中で、どんなことが起こってくるかというと、数年先の話、中期的な話、年度またぎの話など、とにかく先の話、将来の話が一切できないのです。

私が関わるのは人事という世界なので、どちらかというと先のことを考えながら進めなければならない場面が多いですが、そんな話題になると「この件に関しては進められるけど、その先は自分が担当するかわからないから保証はできない」「自分が判断できる範疇ではないから、その時になったらまた考えてほしい」などといわれます。
これが会社全体で、上司部下の関係、取引先との関係など、すべての場面ではびこっていて、“先のことはわからないから”「約束できない」「保証できない」「決められない」と言います。

社員は自分のキャリアを見通せない不安があるでしょうし、責任を持ってくれない上司とは、本音で付き合おうとしないでしょう。取り引き先や出入り業者にとっても、先の見通しがつけられない訳で、かなり付き合いづらい会社であることは間違いありません。

これに対して会社の上層部は、こんな現場の事情をあまり理解していないのか、自社の組織変更のやり方を、「事業戦略に合わせた機動的な手法」と捉えているようです。

「機動的な組織変更」といえば聞こえは良いですが、このやり方では、ともすると「一貫性のない組織変更」になりかねません。この会社は極端な例かもしれませんが、変化や機動性を強調する半面で、一貫性と中長期の視点を、大きく欠いてしまっている気がしてなりません。

私がいつも思うことですが、変化に対応していくことは前提とした上で、守るべきものと変えなければならないものの両方が存在し、その場面に応じて適切なバランスを考えていくことが大切です。
その場面によって、適切なバランスは変わりますが、どちらか片方だけで良いということは、ほとんどないはずです。

変化と一貫性のバランスが大切であるということを、一層強く感じた経験でした。

次回は月5月28日(木)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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