第123回 もうかる運送会社は「感覚」で経営しない
前回は、「社長が毎月見るべき数字は『売上』ではない」というテーマでお話ししました。利益、車両の稼働状況、ドライバーの時間など、会社の状態を表す数字を確認することが重要です。今回は、その続きとして、「経験や勘」と「数字」とをどのように経営に生かしていくべきかについて考えてみたいと思います。
もうかる運送会社は「感覚」で経営しない
「最近忙しいから、きっと利益も出ている」
「この荷主は昔から付き合いがあるから大丈夫」
「このドライバーはよく頑張ってくれている」
このような“感覚”で判断する場面は少なくありません。もちろん、その感覚は決して悪いものではありません。むしろ、長年現場で経験を積んできた経営者だからこそ持てる大切な財産です。しかし、会社の規模が大きくなるにつれて、その感覚だけでは見えないものが増えてきます。
前回は、「社長が毎月見るべき数字は『売上』ではない」というテーマでお話ししました。利益が出る会社の社長は、売上だけではなく、利益や現金、車両の稼働状況、ドライバーの時間など、会社の状態を表す数字を確認しながら経営しています。
今回は、その続きとして、「経験や勘」と「数字」とをどのように経営に生かしていくべきかについて考えてみたいと思います。
社長の経験は会社を成長させる大きな武器
私は、「感覚で経営すること」が悪いとは考えていません。
中小運送会社の社長は、多くの場合、現場から会社を大きくしてきました。荷主との関係づくり、配車、ドライバーとのコミュニケーションなど、数え切れない経験を積み重ねています。だからこそ、「何となく嫌な予感がする」「この仕事は利益が出ない気がする」といった感覚は、意外なほど当たっています。
しかし、その感覚だけで会社全体を判断できる時代ではなくなりました。
ドライバーが20人、30人へと増え、荷主も数十社になれば、1人の経験だけでは把握しきれないことが増えていきます。だからこそ、経験を補うために数字が必要になるのです。その数字が早く正確に出れば出るほど良い。だからDXは必要だといわれます。
「数字が見える会社」は改善が早い
数字を経営に生かそうと思っても、紙の日報やExcelだけでは限界があります。
例えば、「最近、拘束時間が長くなっている気がする」と感じても、ドライバー全員の日報を集めて確認するには多くの時間がかかります。荷主ごとの待機時間や、車両が止まっている時間を比較しようとしても、手作業では現実的ではありません。その結果、「後で見よう」「時間があるときに分析しよう」となり、改善のタイミングを逃してしまいます。
利益が出る会社は、こうした数字を日々確認できる環境を整えています。ドライバーの拘束時間、車両の稼働状況、荷主ごとの採算、止まっている時間などが見えることで、「何となく感じていた違和感」が数字として表れます。
そして、その数字を基に配車を見直し、荷主へ提案し、現場の改善につなげています。数字は、見えるだけでは意味がありません。すぐに確認できること、そしてすぐに行動へ移せることが重要なのです。
DXとは「経営を『見える化』する仕組み」である
DXという言葉を聞くと、「紙をなくすこと」や「システムを導入すること」をイメージする方も少なくありません。しかし、本来のDXはもっと経営に近いものです。
社長が持っている経験や勘を数字という共通言語に置き換え、会社全体で共有できるようにすること。そして、誰もが同じ情報を見ながら判断し、改善を繰り返せる環境をつくること。それがDXの重要な役割の一つです。
例えば、ドライバーの拘束時間が長くなっていれば配車を見直す。荷主ごとの採算が悪化していれば運賃交渉を検討する。止まっている時間が増えていれば、その原因を現場と一緒に改善する。こうした判断は、情報がすぐに見えるからこそ可能になります。
これからの運送会社では、「経験のある社長」が会社を強くする時代から、「経験を仕組みとして会社全体で生かせる会社」が強い時代へ変わっていくでしょう。その土台となるのが、DXやシステム化なのです。
まとめ
運送会社の経営において、経験や勘はこれからも大切な財産です。しかし、会社が成長するほど、感覚だけでは判断できないことが増えていきます。利益が出る会社は、経験を数字で裏付け、その数字を会社全体で共有しています。そして、その情報を基に素早く改善を繰り返しています。そのためには、必要な数字をいつでも確認できる仕組みが欠かせません。
DXやシステム化の目的は、業務をデジタル化することではありません。
経営判断を速く、正確にし、利益が残る会社をつくること。これこそが、本当のDXの価値ではないでしょうか。
次回は9月11日(金)更新予定です。