第124回 利益が出る運送会社ほど「会議」が短い理由
利益が出る運送会社ほど会議が短いのは、話し合いを軽視しているからではありません。普段から必要な情報が共有されているため、会議を「状況説明の場」ではなく「意思決定の場」として活用できるからです。今回は、会議が長くなる原因と、DXによって判断のスピードを高める情報共有の仕組みについて解説します。
利益が出る運送会社ほど「会議」が短い理由
「情報共有のためには、みんなで集まって話し合う必要がある」
そう考えて、毎週あるいは毎月、長い会議を行っている会社は少なくありません。しかし、本当に情報が共有されている会社ほど、実は会議で説明する時間は短くなります。
前回は、「もうかる運送会社は『感覚』で経営しない」というテーマで、経営者の経験や勘を数字で裏付けることの重要性についてお話ししました。数字を見ることによって、経営者だけが感じていた違和感を会社全体で共有できるようになります。そして、その先にあるのが「判断の速さ」です。
今回は、利益が出る運送会社ほど会議が短くなる理由と、そのために必要な情報共有の仕組みについて考えてみたいと思います。
会議の大半が「状況説明」になっていないか
長い会議にはある共通点があります。それは会議が始まってから状況を説明していることです。
「先月の売上はこうでした」
「この荷主でこんな問題がありました」
「このドライバーの拘束時間が長くなっています」
「この車両は最近修理が増えています」
一つ一つは大切な情報です。しかし、参加者がその情報を会議の場で初めて知るのであれば、当然そこから説明が必要になります。数字の確認だけで時間を使い、その背景を説明し、ようやく本題の話し合いに入る頃には、かなりの時間がたっています。
本来、会議で時間を使うべきなのは「何が起きているか」の説明ではありません。「では、どうするのか」を決めることです。
情報が分散している会社ほど確認に時間がかかる
運送会社には非常に多くの情報があります。運転日報、配車表、勤怠、点呼記録、車両情報、売上、請求、荷主とのやり取りなどです。これらが紙、Excel、ホワイトボード、電話、LINE、担当者の記憶などに分かれていると、何かを判断するたびに情報を集めなければなりません。
「その日の運行はどうなっていたのか」
「なぜ予定より時間がかかったのか」
「その荷主の売上はいくらだったのか」
それぞれの担当者に聞き、資料を探し、数字を確認する。こうした作業が会議の中で始まってしまいます。
問題は会議が長いことではありません。判断に必要な情報をすぐに取り出せないことなのです。
利益が出る会社は「同じ数字」を見て話している
意思決定が速い会社では、社長、管理者、配車担当者、営業担当者がそれぞれ別の情報を持っている状態をできるだけ減らしています。誰かが作った資料を誰かが説明するのではなく、同じ数字を見ながら話をします。
すると会話が変わります。
- 「最近ちょっと忙しいと思う」ではなく、「この数字が変わっている」
- 「あの荷主は大変だと思う」ではなく、「この部分に改善すべき点がある」
誰の感覚が正しいのかを議論する必要がなくなり、事実を出発点として話せるようになります。これは会議時間を短くするだけではありません。会社の意思決定の迅速化にもつながります。
会議のために資料を作る会社から卒業する
毎月の会議の前になると、担当者がExcelを集計し、数字を転記し、資料を作っている会社もあります。しかし、ここには少し考えるべき点があります。その資料は、会社の状態を把握するためのものなのか。それとも「会議をするため」に作っているものなのか。
もし毎月同じデータを集め、同じような資料を作っているのであれば、本来は人が繰り返す仕事ではありません。必要な数字が普段から見える状態になっていれば、会議のためだけに資料を作る必要はなくなります。
会議が始まった瞬間から、「どこに問題があるのか」「何を変えるのか」「誰がいつまでにやるのか」という話に入ることができます。
会議の効率化とは、話す時間を短くすることではありません。説明する必要そのものを減らすことなのです。
DXは「情報を探さなくていい会社」をつくる
ここで重要になるのが、DXやシステム化です。
運送会社のDXというと、紙の日報をデジタルにする、配車表をシステム化する、請求書を電子化するといった「業務のデジタル化」が注目されがちです。もちろん、それも大切です。しかし、本当の価値はその先にあります。
運行、労務、配車、車両、売上などの情報がデジタルでつながれば、経営者や管理者が「知りたい」と思ったときに、担当者へ聞いたり、紙を探したり、Excelを集計したりする必要がなくなります。
必要な情報を必要な人がすぐに確認できる。これがシステム化によって生まれる大きな変化です。そして、情報がリアルタイムに共有されるようになると、月に一度の会議まで問題を寝かせておく必要もなくなります。異変に気付いた時点で確認し、その場で対応しやすくなります。
DXとは単に業務を楽にするものではありません。会社の「判断までの時間」を短くする仕組みでもあるのです。
会議の目的は「報告」ではなく「決めること」
良い会議には、明確な目的があります。それは決めることです。何を改善するのか。誰が対応するのか。いつまでに行うのか。そして次に何を確認するのか。必要な情報が事前に共有されていれば、会議はこの話に集中できます。
反対に情報が見えない会社では、会議が報告会になってしまいます。担当者が順番に状況を説明し、それを聞いて終わる。それでは会社はなかなか変わりません。
会議の長さは、単なる時間の問題ではありません。その会社で情報がどのように管理され、どれだけ速く意思決定できているかを表す一つの指標でもあるのです。
まとめ
利益が出る運送会社ほど会議が短いのは、話し合いを大切にしていないからではありません。普段から必要な情報が共有され、会社の状態が見えているため、説明や確認に時間を使う必要がないのです。
紙、Excel、電話、口頭などに情報が分散した状態では、判断するたびに情報を集めなければなりません。会社が大きくなるほど、この負担は増えていきます。
だからこそ、DXやシステム化によって情報を一つにつなぎ、誰もが同じ情報を見られる環境をつくることが重要です。
DXの目的は、紙をなくすことだけではありません。情報を探す時間をなくし、会社の意思決定を速くすること。それもまた、運送会社がDXに取り組む大きな理由の一つです。
ポイント
社長へのワンポイント
次の会議で、「説明」と「意思決定」にそれぞれ何分使っているかを一度確認してみてください。説明や数字の確認に大半の時間を使っているのであれば、会議のやり方より先に、情報共有の仕組みを見直す必要があるかもしれません。
次回は9月25日(金)更新予定です。
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