第110回 うまくいかない運送業のDX(2) 拠点ごとにバラバラな実務をどうそろえるか

前回のコラムでは、システムを入れても現場が変わらない会社に共通する構造として、本社と営業所とのあいだで記録のやり方や精度がそろっていない実態を整理しました。今回はその続きとして、営業所ごとにバラついた記録や実務を、どうやって同じ形にしていくか。そのために欠かせない「責任範囲」と「記録ルール」の決め方を解説します。

うまくいかない運送業のDX(2) 拠点ごとにバラバラな実務をどうそろえるか

記録の内容、タイミングがそろわない最大の理由は「誰の仕事か分からない」

多くの運送会社で、次のような状態があるようです。

  • 点呼記録は運行管理者の仕事だと思っている
  • 勤怠の修正は本社総務がやるものだと思っている
  • 日報入力はドライバー任せになっている
  • ミスの修正は気付いた人がやる運用になっている

この状態では、営業所ごとにやり方が変わり、記録の精度やタイミングは決してそろいません。問題はシステムではなく、仕事の境界線が曖昧(あいまい)なままになっていることです。

まず決めるべきは「書く人」「見る人」「直す人」

記録の内容、タイミングをそろえるために最初にやるべきことは、帳票やシステムの見直しではありません。記録ごとに、次の3点をはっきりさせることです。

項目内容
書く人誰が最初に記録するのか
見る人誰が内容を確認するのか
直す人間違いがあった場合、誰が直すのか

例えば点呼記録であれば、

  • 書く人:点呼を実施した運行管理者
  • 見る人:営業所長または運行管理責任者
  • 直す人:原則なし。やむを得ない場合のみ管理者が履歴付きで修正

というように、例外まで含めて決めきることが重要です。

営業所ごとの「独自ルール」を残したままではそろわない

よくある失敗が、「大枠は本社で決めたが、細かいやり方は営業所に任せた」というケースです。

この場合、

  • A営業所はその日のうちに入力
  • B営業所はまとめて後日入力
  • C営業所は紙を優先してから入力

といった差が必ず生まれます。

やり方をそろえたいのであれば、自由にしてよい部分を残すのではなく、やってはいけないことを明確にする必要があります。

<例>

  • 後日まとめて入力する運用は禁止
  • 紙だけで完結する管理は禁止
  • 代理入力は理由の記載を必須

「こうしてください」よりも、「これはやらないでください」をそろえる方が効果があります。

記録ルールは完璧さより、誰でも守れるかどうか

複数拠点で同じやり方を求める場合、一部の優秀な営業所を基準にすると必ず無理が出ます。

大切なのは、

  • 誰がやっても同じ結果になる
  • 忙しい日でも守れる
  • 判断に迷う場面が少ない

という点です。

多少シンプルでも、全営業所で同じ精度が出るルールの方が、結果的に記録はそろいます。それを行うためにシステムを使うのが一番の成功パターンなのです。

本社の役割は「集め直す」ことではない

本社がやりがちなのが、「各営業所から上がってきた情報を、本社で直してそろえる」ことです。

しかし本来やるべきなのは、

  • 営業所の時点で同じ形で記録させる
  • ズレが出たら個別対応ではなく仕組みで是正する
  • ルール違反を注意ではなく、運用で防ぐ

ことです。

本社が後処理に回っている限り、現場のやり方は変わりませんね。

次回も「うまくいかない運送業のDX」の事例について取り上げていきたいと思います。

次回は2月27日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

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