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第147回 展示会後のアポイント獲得は自分が伝えたいことでなく相手が興味のあることを
展示会やセミナーの来場者に電話やメールでアポイントを獲得しようとしても、つながらない、返信がこない、断られる……。その原因の多くはお客さんではなく、営業担当者の電話やメールの内容です。今回は展示会やセミナー来場者へのアポイント獲得方法をご紹介します。
展示会後のアポイント獲得は自分が伝えたいことでなく相手が興味のあることを
日々の営業活動で忙しい中で一生懸命に展示会やセミナーの企画を考えて準備。展示会のブースやセミナーの構成、出展商品や講演内容、パンフレット、集客方法……
そして、忙しい中で駆り出されて展示会やセミナーを開催。展示会の接客やセミナーの参加者対応……
展示会やセミナーにはお金も時間も労力もかかっています。なんとしても営業活動につなげて売上を上げたいものです。
しかし、多くの名刺を集めたのにアポイントが取れない、営業活動につながらない。
みなさんはいかがですか?
展示会で得た名刺からアポイント獲得へ
Webマーケティング会社のリーディングCRMが展示会に出展しました。営業担当者が交代でブースに立ち一生懸命に接客し、多くの名刺を集めることができました。
営業部長
「今回はみんなが頑張ってくれたので、昨年より多くの名刺を集めることができました」
「でも、本番はこの後です。今週から名刺交換した人にアポイントを獲得して営業活動を始めるように」
営業担当Aさんは大手食品メーカーのセント食品のBさんと名刺交換しました。商品を説明したところBさんの反応が良く、デモも見てくれました。
Bさんが言っていたことは、
- 商品開発でカスタマーセンターに入ってくる消費者の声を活用している
- 消費者の声にはクレームなどいろんな情報があり、有効な情報を探すのが大変
展示会のときに回収したアンケートを見ると「商品の説明を詳しく聞きたい」にチェックあり。
「見込みがありそう! なんとしてもセント食品のアポイントを獲得したい」
Aさんは展示会の三日後にテレアポをしましたが、在宅勤務が多く不在とのこと。電話では連絡が取れないと思い、メールを送りました。
Aさんが送ったメール
セント食品株式会社
商品開発部 B様
お世話になっております。
先日の展示会でご挨拶させていただきましたリーディングCRMのAです。
先日は当社のブースにお立ち寄りいただき、ありがとうございました。
展示会でご紹介しました「AIマーケティングソリューション」は、
Webやカスタマーセンターに入ってくるお客様の声を分析するサービスで
貴社の商品開発にもお役に立てるのではと考えております。
(当社サービスの特長)
- Web、SNS、電話などの顧客の声を一元管理
- データ収集から分析までワンストップで実現
- 要約機能により分析業務の効率化を実現
現在、大手食品メーカー様や飲料メーカー様、大手製薬会社様など
多くの企業様に導入いただいております。
貴社の商品開発の効率化にもお役に立つと思いますので
当社サービスや食品メーカー様での導入事例をご説明させていただく
ご面談の機会をいただけますでしょうか。
ご多忙の折に恐縮ではございますが、よろしくお願い申し上げます。
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株式会社リーディングCRM
マーケティングソリューション事業部 A
Email abcdefg@hijklmn.com
TEL 03-1234-5678
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1週間たっても返信がなく、電話も3回かけたのに出てもらえませんでした。
なぜ、Aさんのメールは返信がなかったのでしょうか?
興味はあるはずなのに、なぜ連絡が取れなかったのか
みなさんもAさんが送ったメールに対して何が良くないのか考えてみてください。
「自分がお客さんだったらAさんのメールを見てどう思うか」というお客さんの視点で考えてください。
まずは、展示会の来場者とはどういう人なのかを考えてみましょう。展示会やセミナーに来場する人の目的はさまざまです。
- 単なる情報収集や勉強のため
- 会社の課題に対して参考になる情報を収集するため
- 自分以外が出展している商品(多種多様な他社の出展商品)を検討しているため
- 自分が出展している商品(自社商品)を検討しているため
多くの人が来場する展示会では、4.の自社商品を検討している人(顕在ニーズの人)は少なく、大半が1.2.3.(潜在ニーズの人)です。アンケートの「説明を聞きたい」や「興味がある」はうのみにできません。展示会のときは会話が盛り上がり商品を素晴らしいと感じて「商品の説明を詳しく聞きたい」にチェックしても、会社に戻り冷静になると「検討できない、必要ない」と思う人が多いのです。
とすると、1.2.3の潜在ニーズの人に対し、「商品の説明を詳しく聞きたい」をうのみにしないでテレアポやメールを送らなければなりません。
この点を踏まえてAさんのメールを振り返ってみましょう。
Aさんのメールの前半は、
「AIマーケティングソリューション」は、
Webやカスタマーセンターに入ってくるお客様の声を分析するサービスで
貴社の商品開発にもお役に立てるのではと考えております。
(当社サービスの特長)
- Web、SNS、電話などの顧客の声を一元管理
- データ収集から分析までワンストップで実現
- 要約機能により分析業務の効率化を実現
「貴社の商品開発にも」と書いていますが、ほぼ商品のアピールです。そして、後半は商品の導入実績、締めくくりが「商品や事例を説明させてください」。
つまり、Aさんがメールで伝えていることは、
「当社の商品は素晴らしいです。一度、商品を説明させてください」
商品の購入を検討していない潜在ニーズのお客さん、そして、展示会でデモまで見て商品を理解しているお客さんに「商品を説明したい」と言っているのです。
当然、アポイントになりません。
では、お客さんに何を伝えたらアポイントを獲得できたのでしょうか?
アポイントを獲得するときの基本
Bさんが展示会で言っていたことは、
- 商品開発でカスタマーセンターに入ってくる消費者の声を活用している
- 消費者の声にはクレームなどいろんな情報があり、有効な情報を探すのが大変
セント食品では、大変でも消費者の声を集めて商品開発をしているのです。なぜ、大変なのに消費者の声を集めて商品開発をしているのか?
セント食品のホームページを見ると「中食商品の開発を強化する」と書いてありました。セント食品では、中食商品の開発を強化していて、その商品開発のために消費者の声を活用しようとしているのです。つまり、「中食商品の開発を強化」という重要な方針があり、「消費者の声を活用して商品開発を進める」というミッションがあるのです。
これは、Bさんにとって重要なことであり興味のあることです。Aさんが、「当社の商品は素晴らしいです。一度、商品を説明させてください」ではなく、Bさんの興味があることを伝えていたら……
- セント食品では消費者の声を活用して中食商品の開発を強化している
- 消費者の声はクレームなどさまざまな情報があり、商品開発に活用するためには苦労が多い
- 当社では消費者の声を有効活用するためのお手伝いをしている
……だから一度お会いしたい。
アポイントを獲得するときの基本は、
「自分が伝えたいことを伝えるのではなく、相手(お客さん)が興味のあることを伝える」
自分が伝えたい「AIマーケティングソリューション(商品)が素晴らしい、商品の説明をしたい」ことを伝えるのではなく、相手が興味のある「中食商品の開発には消費者の声の活用が重要。しかし、消費者の声の有効活用は難しい」ことを伝え、その課題解決のために……と伝えてアポイントを獲得しましょう。
また、そのためには展示会で自分の商品の話ばかりせず、お客さんの課題や悩みについて会話することも大切です。展示会でお客さんの課題や悩みを聞いていれば、展示会後の電話やメールで伝えることができるのです。
展示会やセミナー来場者にアポイントを獲得するためのメール文章……詳しくは、
次回は9月16日(火)更新予定です。
今月のクイズ(営業のクイズ)
あなたは入社1年目の営業担当。お客さんに事業内容を質問したら、「医療機器向けの半導体を開発している」と言われた。
その後の会話が続かない……どうしたら会話できるようになる?
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