第146回 営業指導の原因追究は目的を明確にしてから「なぜなぜ」を

「部下が受注できると思っていた案件を失注」……売上をカバーするための営業計画の見直しと同じぐらい、部下の営業方法に対して原因を追究し改善することは大切。しかし、部下は「価格が高い」「商品が悪い」と自分の課題を考えない。今回は失注や案件停滞、目標未達成に対し、営業会議や指導の場で原因を追究する方法をご紹介します。

営業指導の原因追究は目的を明確にしてから「なぜなぜ」を

営業は思いどおりにいかない仕事。
そのため、原因を追究し対策を考えることは重要。

しかし、営業会議や指導の場で、部下に対し「なぜなぜ」で原因を追究しようとしても、話が脱線したり、発散したりする。
訪問件数について話をしていたのに、ターゲットの話、販促の話、商品力の話……
その結果、原因が明確にならず、的確な対策を指導できない。そして、次の会議や指導でも同じ問題について話し合っている……

営業方法を指導するための部下との面談で

ある会社の営業マネージャーAさんは悩んでいました。
「部下のBさんは引き合いのお客さんを担当しても失注ばかり」
「Bさんの営業は何がいけないのだろうか?」

Aさんは営業方法を指導しようとBさんと面談しました。

マネージャーAさん
「セント商事の案件はなんで失注したの?」
「受注できるって言っていたじゃないか」

部下Bさん
「提案したときはお客さんの評価が良かったんです」

Aさん
「提案の評価が良かったのに、なぜ?」

Bさん
「うちが提案した後に競合のリーディング技研とコンペになってしまったんです」
「結局、うちの商品は価格が高いって言われて断られてしまいました」

Aさん
「なんでコンペになるのが分からなかったの?」

Bさん
「だって、お客さんが他の会社には声を掛けないって言っていたんです」

Aさん
「でも、500万円規模の案件なんだからコンペになるのは予測できるだろう?」

Bさん
「コンペになるって分かっていても、うちの商品は高いから勝てないじゃないですか」

Aさん
「分かっていたら手を打てたかもしれないじゃないか?」
「受注しているお客さんだっているんだから、価格だけじゃなくてBさんの営業方法も見直さないと」

Bさん
「でも、私の案件はほとんどが価格のせいで負けているんですよ」
「なんでうちは他社より高いんですか?」

Aさん
「商品開発にかなり投資しているから価格を下げにくいんだよ」

Bさん
「それは他の会社も同じでしょう」
「なんでそんなに開発コストがかかるんですか?」

Aさん
「定価を下げるのは難しいけど、コンペでは値引きが必要かもしれないな」
「部長と話してみるよ」

結局、Bさんの営業方法を改善する話にはならず、値引きの話で打ち合わせが終わってしまいました。

意識の違いを考えてみる

みなさん、ここでAさんとBさんとの会話から考えてみてください。

なぜ値引きの話で終わってしまったのでしょうか?
Bさんの営業方法を改善するためには、どうすれば良かったのでしょうか?

Aさんの意識とBさんの意識とを比べてみましょう。

マネージャーAさんは、
「セント商事の案件はなんで失注したの?」
→「提案の評価が良かったのになぜ?」
→「なんでコンペになるのが分からなかったの?」
→「分かっていたら手を打てたかもしれないじゃないか?」
→「Bさんの営業方法も見直さないと」

部下Bさんは、
「セント商事の案件はなんで失注したの?」
→「うちの商品は価格が高いって言われて断られてしまいました」
→「コンペになるって分かっていても、うちの商品は価格が高いから勝てない」
→「私の案件はほとんどが価格のせいで負けているんですよ」
→「なんでそんなに開発コストがかかるんですか?」

Aさんの意識は、
Bさんの営業方法にも問題がある、Bさんの営業方法を改善しないといけない。

Bさんの意識は、
自分の営業方法ではなく価格の問題、商品の価格を見直さないといけない。

なぜ、AさんとBさんとの意識が食い違ってしまうのでしょうか?
その原因の一つは、失注や案件停滞、目標未達成など、営業活動の失敗にはさまざまな問題が関わっていること。セント商事の失注には商品の価格の問題もありますが、Bさんの営業方法にも問題があります。

その他にも……
「他の会社には声を掛けない」と聞いて安心したマインドの問題もあるかもしれません。価格が高いことを考えるとターゲット規模の問題もあるかもしれません。仕事が忙しくて提案後に対策を考える時間がなかった、という仕事量の問題もあるかもしれません。

商品の価格、営業方法、マインド、ターゲット、仕事量……
これだけさまざまな問題が関わっていると、上司と部下の意識が食い違ってもおかしくないでしょう。上司が営業方法に問題があると思っても、部下は価格や仕事量が問題だと考えてしまう。一つの失注や案件停滞、目標未達成に対してさまざまな問題が関わる営業では、上司と部下とが同じ目線で考えることが難しいのです。
そのため、営業の指導では何の問題について話し合うかという目的を明確にして、目線や考えることを合わせる必要があります。上司と部下とで意識が食い違いやすい営業で原因を追究するためには、指導目的の明確化が大切です。

話し合いでは会話の目的を明確化する

マネージャーAさんは、いきなり失注の原因を聞こうとするのではなく、何の問題について話し合うかを明確にするべきだったのです。
「失注の原因は、商品の価格やターゲット、仕事量にも問題があると思うんだけど、営業方法にもあると思う」
「まずはBさんの営業方法について何を改善するべきかを考えよう」

営業会議や営業指導を見ていると、話が脱線したり、発散したりして原因を追究できないまま終わっているシーンが多く見受けられます。訪問件数の問題について話をしていたのに、ターゲットの問題、販促の問題、商品力の問題……
一つ一つ原因を明確にできないため、営業が改善されず、次の会議や指導でも同じ問題について話し合っている。

みなさんの会社ではいかがでしょうか?

営業はさまざまな問題を抱える仕事です。一つの問題にこだわり原因を追究し、一つの問題を改善できれば次の問題に進むことができ、一つ一つ改善できるのです。そして、その結果が営業の効率化や営業の成果につながっていくのです。
営業にとって大切な原因追究の「「なぜなぜ」では、はじめに何の問題について追究するのかという目的を明確にしましょう。

営業指導で原因を追究する方法……詳しくは、

「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は8月18日(月)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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