第145回 ターゲットはニーズでなく顧客視点で課題の背景から考える

新規事業や新規マーケットの拡大、新規開拓営業ではターゲットの選定は重要。しかし、適切なターゲットを選定できず成果が上がらないという会社が多く見受けられます。ターゲットは顧客視点で「なぜ、必要なのか、買うのか?」を追求し考えるものです。今回は適切なターゲットを考える方法についてご紹介します。

ターゲットはニーズでなく顧客視点で課題の背景から考える

営業戦略が重視されている今日、ほとんどの会社でターゲットを考えて営業しています。商品の特性や競合他社の状況、今までの実績など、さまざまな情報から業界や規模など、ターゲットを考えて営業活動を進めています。

しかし、一生懸命に考えてターゲットを絞ってもなかなか売上が上がらない。
そして、他の業界にアプローチしたいけど、どのターゲットが良いか分からない。
取引先や引き合いの営業はできるけど、新規開拓営業はどのターゲットが良いか分からない。

新規開拓営業では多くの人がターゲットの選定に悩んでいます。
みなさんはいかがですか?

テレアポを500社に行ったが、受注できたのは1社だけ

セントテクノロジーでは、Web会議システムの営業担当Aさんが期初にターゲットを考えていました。

セントテクノロジーのWeb会議システム

  • 競合他社のWeb会議システムよりも価格が高い。
  • 強みは資料共有やコメント機能が充実。

営業担当Aさんは悩んでいました。

  • うちのWeb会議システムは価格が高いから大手企業じゃないと売れない。
  • Web会議システムはほとんどの企業が既に導入している。
  • 強みである資料共有やコメント機能が必要な会社に絞らないといけない。

そして、Aさんが設定したターゲットは……

  • 従業員数が1,000人以上の企業。
  • 設計図を共有し、図面に書き込みながらミーティングする必要がある製造業。

5月に入り営業活動をスタート。

  • 製造業の200社をリストアップしてDMを送付しテレアポ。
  • 製造業の業界団体にもアプローチ。

半年後、20件は訪問できたけれど受注は1件。
製造業以外にアプローチしないと売上目標を達成できない。

そこでAさんはマネージャーのBさんに相談しました。

営業担当Aさん
「製造業200社にアプローチしましたし、業界団体にもあたったんですが1件しか受注がとれていないんです」
「他のターゲットにもアプローチしないといけないんですけど、どうしたらいいでしょうか?」

マネージャーBさん
「受注できたのはどこの会社?」

Aさん
「リーディングコーポレーションです」

Bさん
「なんで売れたの? リーディングコーポレーションのニーズは?」

Aさん
「うちのWeb会議システムの文字起こし機能とAI要約機能を評価してくれたんです」

Bさん
「何に使うの?」

Aさん
「営業部と設計部、DX開発部のミーティングで使うらしいです」
「リーディングコーポレーションでは営業部と設計部、DX開発部の連携が重要みたいで」
「だからミーティングの内容を三者で共有するために議事録で使うみたいです」

Bさん
「なるほど、うちのWeb会議システムは、文字起こし機能とAI要約機能でミーティングの情報を正確に共有できることも強みだからな」

Aさん
「確かに」

Bさん
「ミーティングの議事録でニーズがあるだろう」
「ミーティングの議事録はどの会社でも必要だから全業界がターゲットになるし」

Aさん
「そうですね、ミーティング議事録のニーズにアプローチしてみます」
「どの業界から始めたらいいですか?」

Bさん
「そうだな……今までアプローチできていない小売や流通業あたりから始めてみれば」

Aさん
「分かりました」

その後、Aさんは、小売・流通業で200社をリストアップしてアプローチ。
成果が出なかったので、広告業界と人材業界にもアプローチ。

1年間でDMを送付してテレアポを行った会社は500社。
しかし、受注できたのはリーディングコーポレーションだけ。

はたして「ミーティングの議事録はどの会社でも必要だから全業界がターゲット」は正しかったのでしょうか?
みなさんだったらどのようなターゲットを選びますか?

リーディングコーポレーションのニーズはどこにあったのか

ここでリーディングコーポレーションのニーズについて考えてみましょう。
リーディングコーポレーションは生産設備のメーカーです。

リーディングコーポレーションのニーズは、営業部と設計部、DX開発部が情報共有するためのミーティングの議事録に対する文字起こし機能とAI要約機能。なぜ営業部と設計部、DX開発部は議事録まで残して情報を共有する必要があったのでしょうか?

今までお客さんへの提案では生産設備の構成や性能ばかりでしたが、最近は自動化システムの提案も増えていました。そのため、営業部と設計部だけで共有すればよかったのに、自動化システムの開発を担当しているDX開発部を含めた三者での共有が必要になっていたのです。

自動化システムの提案では、生産設備に関する機械設計以外に営業部や設計部にとって難しい通信の回路設計や電力設計、ソフトウェア、セキュリティの情報が必要になり、また、ミーティングでDX開発部が説明する回路設計や電力設計などの問題や対策も必要になりました。そのため、ミーティングでDX開発部が話した内容を提案前に確認できるようにする必要があったのです。

なぜ、自動化システムの提案が増加しているのでしょうか?
お客さんである自動車メーカーの工場では、生産設備の操作や故障検知の自動化を進めていました。そのため、リーディングコーポレーションでは、生産設備だけを提供する事業から自動で操作や故障検知する仕組みまで総合的に提供する事業へと変化し高度化していたのです。

ターゲットになりうる要因は何か

リーディングコーポレーションにおける文字起こし機能とAI要約機能のニーズの理由は……

ニーズが生まれた理由(=課題)

  • 自動化システムの提案が増えたため営業部と設計部、DX開発部の三者の情報共有が必要になったこと。
  • 提案で難しい情報や、自動化に関する問題や対策も必要になったこと。

そして、課題が生まれた理由(=課題の背景)

  • 自動で操作や故障検知する仕組みまで総合的に提供する事業へと変化し高度化したこと。

リーディングコーポレーションにおける文字起こし機能とAI要約機能のニーズの理由の大本は「総合的に提供する事業へと変化し高度化したこと」。
この大本の理由から、「営業部と設計部、DX開発部の三者による高度で複雑な情報の正確な共有」という課題が生まれ、この課題から「ミーティングの議事録に対する文字起こし機能とAI要約機能」というニーズが生まれたのです。

商品を買う大本の理由(=課題の背景)から課題やニーズが生まれるということは、大本の理由が同じ、または似ている業界や企業は、同じ課題やニーズが生まれる可能性が高いということです。

つまり、お客さんが商品を買う大本の理由である課題の背景がターゲットになりうる要因(=ターゲットの選定要因)なのです。
「事業が変化し高度化している会社」

ターゲットを商品の強みやニーズという商品の視点で考えている営業の人が多く見受けられます。しかし、営業活動のターゲットは「お客さんはなぜ買うのか?」という顧客の視点の追求で考えるものです。

  • 商品の強みはどのようなニーズに有効なのか? → 商品視点
  • なぜそのニーズがあるのか? お客さんは何を解決したいのか?(課題) → 顧客視点
  • なぜお客さんは課題を解決したいのか? 解決して何を実現したいのか?(課題の背景) → 顧客視点

この顧客視点の追求による課題の背景がターゲットの選定要因になるのです。
ターゲットを考えるときは、お客さんは「なぜ必要? なぜ? なぜ?……」を追求して課題の背景を考えましょう。

ターゲットを考える方法……詳しくは、

「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は7月22日(火)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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