第81回 悪い場所を探す情報と問題点を探す情報で適正な営業指導を

営業会議で営業進捗や見込み案件一覧だけを見ながら「商談が足りない」「ターゲットを変えろ」「予算を聞いてこい」……本当にその指導は正しいですか? 営業には、受注や営業進捗、見込み、説明や提案内容、ヒアリング方法、顧客の課題やニーズ、担当者の状況や考え……さまざまな情報があります。今回は問題点を見つけるための営業情報の使い方についてお話しします。

悪い場所を探す情報と問題点を探す情報で適正な営業指導を

今日における営業は、ターゲットや商談、提案、交渉、戦略に左右される難しい仕事です。
たくさん訪問すれば売り上げも上がるという時代であればよいのですが、現在の営業はそう単純ではありません。

そして、ターゲットや商談、提案、交渉、戦略……。難しい営業では指導もまた難しいものです。

マネージャーと営業担当のやり取り

マネージャーAさんが、12月下旬の営業会議で営業担当Bさんに指導していました。
期末まであと3カ月……
営業担当Bさんは会議前に作成した月報を説明。

月報には、

  • 受注目標に対する現在の実績
  • 計画に対する営業進捗として、商談件数、提案件数、見積件数、受注件数
  • 見込み案件の一覧として、ABCランク別の見込み案件と受注予想時期
  • 目標を達成するための計画とアクション

営業担当Bさんは現在、

受注金額は、1億円の目標に対して6,000万円
提案件数は、10件の目標に対して5件
商談件数は、20件の目標に対して25件
今のところ期末までに受注できそうな見込み案件がない
受注スパンを考えると、2月中旬までに提案できれば受注金額を伸ばすことができる

皆さんなら、営業担当Bさんにどのように指導しますか?
マネージャーAさんになったつもりで考えてみてください。

マネージャーAさん
「後3カ月で残り4,000万円、どうするんだ?」

営業担当Bさん
「見込み案件が厳しいので、上期に訪問した顧客に再度訪問してみます」

マネージャーAさん
「再度訪問して達成するの? そもそも商談しても提案になっていないじゃないか」

営業担当Bさん
「ニーズがないお客さんばかりで……」

マネージャーAさん
「ターゲットが良くないんじゃないか? もっと大手企業にアプローチしないと。中小企業だと予算的に難しいだろう」

営業担当Bさん
「分かりました。後3カ月なので、今まで訪問したお客さんの中で大手企業を中心に当たってみます」

それから3カ月が経ち、3月末。
受注金額は変わらず6,000万円のまま、提案も獲得できませんでした。

Aさんの指導は何が良くなかったのでしょうか?

Aさんの指導の何が良くなかったのでしょうか?

提案件数が、目標10件に対して5件
商談件数が、目標20件に対して25件

Bさんは、一生懸命に訪問し商談しているけれど提案に至っていない。
Aさんの指導のとおり、商談、またはその前のプロセスに明らかに問題があるのでしょう。

では、商談、またはその前のプロセスの何が問題なのでしょうか?

Aさんは、ターゲットに問題があると判断して指導しています。
しかし、商品説明やヒアリングに問題があったらどうなるでしょう。

Bさんは、「ニーズがないお客さんばかり」と言っていますが、

  • 商品の強みや価値を理解させるような説明ができていない
  • 単純に必要か、購入を検討できるか聞いているばかりで、課題やニーズを聞こうとしていない
  • 顧客に信頼されるような商談ができていない

これでは、いくらターゲットを変えても無駄。
大手企業にターゲットを変えても受注を獲得できないでしょう。

誤った判断をした要因とは

では、なぜAさんはターゲットに問題があると判断してしまったのでしょう?

それは月報の説明で聞いた、営業のプロセスや件数といった進捗情報、定量的な情報しか見ていないからです。

営業はさまざまな要因が複雑に絡み合って影響する仕事です。
説明方法、ヒアリングの内容や聞き方、顧客の状況や考え、顧客担当者の立場や組織内での力関係、競合他社の商品や営業方法、顧客との関係……など。

問題点は、これらのさまざまな要因(定性的な情報)の中に隠れているのです。
営業のプロセスや件数といった進捗情報、定量的な情報の中にはありません。

Aさんは、この定性的な情報である営業活動の中身を見て問題点を探そうとせず、進捗情報、定量的な情報だけを見て、自分の経験や感覚から判断したため「もっと大手企業にアプローチしないと」と当たっているのか分からない指導をしたのです。

営業活動の問題点を探すには

営業活動の問題点を見つけるためには、以下の2段階が必要です。

  1. 営業のプロセスや件数といった「進捗情報」「定量的な情報」から悪い場所を探す
  2. 悪い場所に対して「定性的な情報」から問題点を探す

営業のプロセスや件数から「どの辺りが悪そうか」という悪い場所に当たりを付け、それに対して、説明方法や顧客の状況、顧客担当者の立場や競合他社など、営業活動の中身を多角的に見て「どこを改善すべきか」という問題点を探すのです。

たくさん訪問すれば売り上げも上がるという時代であれば、営業のプロセスや件数だけを見て指導しても売り上げが上がるかもしれません。
しかし、ターゲットや商談、提案、交渉、戦略が売り上げを左右する昨今の営業では、その中身から問題点を探し指導しなくてはなりません。

売り上げを上げさせたいのであれば、「進捗情報」「定量的な情報」から悪い場所を探した後に、「定性的な情報」から悪い場所の原因と問題点を探しましょう。

営業活動の進捗や見込み案件の一覧だけを見ても、問題点は分かりません。

定性的な情報から問題点を探す方法は……、

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次回は2月17日(月)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
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