第150回 「なぜなぜ」で顧客に原因を聞くときは否定的な印象を打ち消すシナリオを

予算がない、決裁者が反対している……営業にとって「あきらめる、待つ、対策を考える」の三つしかない。みなさんはどれを選択しますか? 「対策を考えよう」と思って「なぜ決裁者が反対しているのか」を聞いても教えてもらえない、その結果、「あきらめる、待つ」しかなくなる……。今回は顧客が反対している原因を聞くための「なぜなぜ」の使い方ついてご紹介します。

「なぜなぜ」で顧客に原因を聞くときは否定的な印象を打ち消すシナリオを

営業ではお客さんが話してくれたことを聞くだけではなく、その原因や背景を聞き出すことが大切です。

  • なぜ、商品に否定的なのか?
  • なぜ、予算がとれないのか?
  • なぜ、決裁者が反対しているのか?

原因が分かれば対策も考えられる、分からなければ対策を考えられない……
「なぜなぜ」で原因を聞き出すことは大切。しかし、「なぜなぜ」を続けていると、お客さんは追及されている、突っ込まれている、否定されているように感じてしまう。そのため、印象を悪くすることを恐れて「なぜ」を聞けず原因や背景を把握できない。そして、対策を考えられず失注……

決裁者が反対していて提案した営業案件が進まない

システム開発会社セントテクノロジーでは、営業担当Aさんが人材派遣会社ヒューマンリーディングにWeb会議システムを提案しました。しかし、決裁者の営業担当役員が反対していて案件が進まない。

Aさんは、営業会議で上司から指導されました。
「なぜ反対しているのかが分からないと、営業担当役員を説得できないだろう」
「すぐに訪問して、なぜ反対しているのか聞いてくるように」

Aさんはアポイントをとって3日後にヒューマンリーディングを訪問しました。

営業担当Aさん
「先日、営業担当役員の桜井さんが反対しているっておっしゃっていましたけど、なぜ反対されているんですか?」

ヒューマンリーディングBさん
「桜井は『営業は直接会って話をすることが大切、Web会議システムは必要ない』って言っているんです」

Aさん
「そうなんですか、でも営業現場は必要だと言っているんですよね」
「それなのに、なぜ必要ないっておっしゃっているんですか?」

Bさん
「そうなんですけど、営業が必要って言っているのは、楽したいからだって決めつけているんです」

Aさん
「でも、実際に外出が多くて困っているんですよね」
「桜井さんもご存じだと思うのですが、なぜ楽したいからだって思っていらっしゃるんですか?」

Bさん
「知っていますけど、お客さんへの訪問が減って関係が弱くなることを心配しているんだと思います」

Aさん
「Web会議システムを使うとお客さんと頻繁に打ち合わせできるようになるのに、なぜ関係が弱くなることを心配されているんですか?」

Bさんは、ちょっと不機嫌そうに
「なぜなぜって聞きますけど、私にも分からないですよ」
「桜井を否定しているようですけど、彼も営業の責任者ですので真剣に考えて反対しているんです」

Aさん
「すみません、否定しているつもりはなかったんですが、申し訳ありません」

Aさんは一生懸命に原因を聞こうとしただけなのに、Bさんは不機嫌になり怒られてしまいました。

会社に戻ると上司から
「Aさんの聞き方が悪いんだよ」

そしてAさんが思ったことは
「聞き方が悪いって言うけど、原因を根掘り葉掘り聞くのって失礼だし、聞けるわけがない」

Aさんは一生懸命に原因を聞こうとしたのに……
なぜ、教えてもらえなかったのでしょうか?
なぜ、不機嫌にさせて怒られてしまったのでしょうか?

みなさんもAさんとBさんとの会話から、Aさんのどこが良くなくて、どのように改善すれば良かったのかを考えてみてください。

「なぜなぜ」は、相手に否定されているという印象を与える

「なぜなぜ」は、繰り返していると相手に追及している、突っ込んでいる、否定しているという印象を与えてしまいます。

「なぜ反対されているんですか?」
「なぜ必要ないっておっしゃっているんですか?」
「なぜ楽したいからだって思っていらっしゃるんですか?」
「なぜ関係が弱くなることを心配されているんですか?」

その結果、ヒューマンリーディングのBさんは、
「なぜなぜって聞きますけど、私にも分からないですよ」……追及されている、突っ込まれているという印象を受けてしまいました。
「桜井を否定しているようですけど」……否定されているという印象を受けてしまいました。
そして、AさんはBさんを不機嫌にさせ、怒られてしまいました。

Aさんが原因を教えてもらえなかった理由は、「なぜなぜ」によって、追及している、突っ込んでいるという印象、否定しているという印象を与えてしまったこと。

否定的な印象を解消するためには

「なぜなぜ」で原因追求するときは、相手に追及している、突っ込んでいる、否定しているという印象を与えてしまうという障壁を解消しなければなりません。

「なぜなぜ」で与えてしまう追及している、突っ込んでいるという印象を打ち消す。
「なぜなぜ」で与えてしまう否定しているという印象を打ち消す。

例えば、「なぜ必要ないっておっしゃっているんですか?」と聞く前に、一方的に聞きたいことを追及している、突っ込んでいる、否定しているという印象を打ち消すために……

「営業は直接会って話をすることが大切とおっしゃっているんですね」
とオウム返しで、相手の話をちゃんと聞いている、受け入れているという印象を与えてから「なぜ」で原因を聞き出す。

「今はオンラインで営業する会社が増えているみたいですけど、私も営業はお客さんとの関係が重要ですから直接会って話をするって大切だと思います」
と共感して、相手の話に同意しているという印象を与えてから「なぜ」で原因を聞き出す。

「そうなんですか、でも営業現場は必要って言っているんですよね」
「それなのに、なぜ必要ないっておっしゃっているんですか?」
といきなり聞くのではなく、

「営業は直接会って話をすることが大切とおっしゃっているんですね」
「今はオンラインで営業する会社が増えているみたいですけど、私も営業はお客さんとの関係が重要ですから直接会って話をするって大切だと思います」
「でも営業現場は必要って言っているんですよね、なぜ必要ないっておっしゃっているんですか?」
と追及している、突っ込んでいる、否定しているという印象を打ち消してから聞きましょう。

営業ではお客さんが話してくれたことを聞くだけではなく、その原因や背景を聞き出すことが大切です。
しかし、「なぜなぜ」は相手に追及している、突っ込んでいる、否定しているという印象を与えてしまいます。

お客さんとの会話で原因や背景を聞き出すための「なぜなぜ」では、追及している、突っ込んでいる、否定しているという印象を打ち消してから「なぜ」を聞きましょう。

「なぜなぜ」でお客さんの原因や背景を聞き出す方法……詳しくは、

「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は12月15日(月)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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