ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第135回 お客さんの課題を聞いた後……理由や背景の会話が勝てる営業を実現する
お客さんが課題を言ってくれた……案件を獲得しようと思い「何が必要か」をヒアリングして提案。しかし、予算を取ってもらえない、コンペで負ける。お客さんから課題を聞いてすぐに提案しようとすると失注する確率が高くなります。今回はお客さんが課題を言ったくれた時に受注できる対応方法についてお話しします。
お客さんの課題を聞いた後……理由や背景の会話が勝てる営業を実現する
お客さんから課題を聞き出せたら案件獲得の大きなチャンスです。多くの営業担当者が、このチャンスを逃したくないと、一生懸命に課題の内容を聞いて、解決策となりうる商品をアピールしています。
みなさんはいかがでしょうか?
でも、「課題の内容を聞いて、解決策となりうる商品をアピール」……本当に受注を獲得できるのでしょうか?
人材紹介会社のある商談にて
人材紹介会社セントコーポレーションの営業担当Aさんが、設備機器商社のポータル商事を訪問していました。
お客さん
「営業社員を2人採用したいんです」
Aさん
「そうなんですか、当社からもぜひご紹介させてください」
「採用したいのはどういう人材ですか?」
お客さん
「30歳前後で法人営業を経験してきた人材です」
「うちは、営業社員が少なくて未経験者だと教育できませんし、あとフットワークが軽くないといけませんから30歳前後の人を希望しています」
Aさん
「性格とかヒューマンスキルとかはいかがですか?」
お客さん
「コミュケーション力が高くて、積極的に人間関係を作ろうとする人がいいです」
Aさん
「いつまでに採用したいとかご希望はありますか?」
お客さん
「3カ月以内には採用して入社してもらいたいんです」
Aさん
「分かりました」
「ちなみに、他の人材紹介会社にもお声がけされていますか?」
お客さん
「この後、大手のヒューマンソリューション社と中堅のアドバイスリーディング社と打ち合わせする予定になっています」
Aさんは、仕事内容や待遇など一通り質問した後に
「当社は30歳前半までの若手の登録が多くて、私が直接求職者に面談して人物像を確認することができますので、御社に合う人材をご紹介できると思います」
お客さん
「そうなんですか、ぜひいい人材をご紹介ください」
Aさん
「分かりました、頑張りますのでよろしくお願いします」
と言い、会社に戻って紹介できる人材を探しました。
1週間後にポータル商事に合いそうな人材が3人いたため紹介し、お客さんに面接してもらいました。
ところが、全員不合格。
お客さんの要望どおり、30歳前後で法人営業経験も3年以上、コミュケーション力が高く、人間関係に積極的な人材なのに……
なぜ不合格だったのかお客さんに理由を聞いてみると
「アドバイスリーディング社から紹介してもらった人材が良かったので」
「アドバイスリーディングの方がいい人材だったんだ……当社もいい人材を紹介したけれど、しょうがない」
Aさんの営業のどこに問題点があったのか
本当にしょうがなかったのでしょうか?
Aさんの営業の問題点を探してみてください。
「30歳前後で法人営業経験、フットワークが軽い、コミュケーション力が高い、積極的に人間関係を作ろうとする人」といった採用したい人材像について聞いた後……
Aさんは「いつまでに採用したいとかご希望はありますか?」と聞いていますが、
もし、「なぜ、フットワーク軽い人材がいいんですか?」と聞いていたらどうなっていたでしょうか?
お客さんは、フットワークが軽い人材がいい理由を話してくれたでしょう。
例えば、「昨年から技術部と調整して提案することが増えたんです」「だから技術部など、社内に対してフットワークが軽く積極的に調整できる人がいい」
ここでもう一度理由を聞いていたらどうなっていたでしょう?
お客さんは、技術部と調整して提案することが増えた理由を話してくれたでしょう。
例えば、「製品売りからシステムを組み合わせた提案ビジネスに変革しようとしている」
ここまで把握できていたらどのような提案ができたでしょうか?
「技術部と調整して提案することが増えた」
「システムを組み合わせた提案ビジネスに変革しようとしている」
- 多少、技術の分かる人の方がいい
- 企画書や提案書を作成した経験のある人がいい
お客さんの要望に加えて、さらに良い提案ができたかもしれません。
しかし、Aさんは「フットワークが軽い人材がいい」「3カ月以内には採用して入社してもらいたい」という要望の内容と「ヒューマンソリューション社やアドバイスリーディング社に声をかけている」と検討状況を把握しただけで、「若手の登録が多くて、私が直接求職者に面談して人物像を確認することができる」と商品をアピールしてしまいました。
お客さんの要望の理由や背景を聞かずに……
つまり、要望だけを聞いて案件を獲得し商品紹介……ただ御用聞きして案件を獲得しただけ。
お客さんの課題や要望は、その理由や背景から生まれてくるものです。
そして、その理由や背景によって、課題や要望は変わってくるものです。
要望の理由や背景を把握すると、適切な課題を把握することができ、そして適切な提案をすることができます。理由や背景の情報をより多く集めることで、競合他社が聞いていない情報を収集することができ、差別化することもできます。
適切な提案で、競合他社に勝ち受注を獲得するためには、お客さんが課題や要望を言ってくれたら、課題の内容を聞いて商品をアピールする前に課題や要望の理由、背景を聞かないといけないのです。
お客さんが抱える課題の理由や背景を聞く
売上や受注獲得を目的とした営業は、お客さんから課題や要望を聞くと「案件を獲得したい、提案したい」という気持ちが強くなります。そのため、すぐに案件を獲得しよう、提案しようと、課題や要望の内容や詳細を聞こうとしてしまいます。
でも、課題や要望の内容や詳細を聞くのはちょっと待ってください。その前に、理由と背景を聞きましょう。
「なぜ、フットワークが軽い人材がいいのか?」
「なぜ、技術部と調整して提案することが増えたのか?」
「システムを組み合わせた提案ビジネスに変革しようとしているのか?」
なぜ? なぜ? なぜ? なぜ? なぜ?……
お客さんの現場の状況や戦略、経営課題を聞くことができるでしょう。
すると、
- お客さんの本当の課題を把握することができるのです。
- お客さんの課題や要望の重要性を把握することができるのです。
- 競合他社よりも多くの情報を把握することができるのです。
これらの本当の課題、課題や要望の重要性、競合他社よりも多くの情報が、受注を獲得するための適切な提案を実現するのです。
お客さんが課題を言ってくれたら、要望を言ってくれたら……
急いですぐに案件を獲得しようと課題や要望の内容や詳細を聞かず、まずは課題や要望の理由や背景を聞きましょう。
新規事業や新商品の営業を成功させるためには……
次回は8月19日(月)更新予定です。
今月のクイズ(営業のクイズ)
あなたは小型プリンターの営業です。
お客さんの価値を考えて提案するように上司から指導されました。
どのような提案を考える?
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