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第127回 会社説明が自分の伝えたいことばかりで興味を持たれない
営業活動で初めにする会社説明。この会社説明によって顧客の印象が変わってきます。しかし、長々と説明しても聞いてもらえない、一方的に伝えたいことばかり説明して興味を持ってもらえない。本当はもっと価値があるのに伝わらない……。今回は会社の価値を伝え、興味を持ってもらえる会社説明についてご紹介します。
会社説明が自分の伝えたいことばかりで興味を持たれない
初回の訪問で、はじめにする会社説明(会社紹介)。
自分の会社を知ってもらいたい、よく思ってもらいたいと思い、一生懸命に自分の会社を説明。
設立や資本金、沿革、事業内容や事業の領域、拠点や組織、実績、事例……
しかし、お客さんに興味を持ってもらえない、反応が悪い。
なぜ、興味を持ってもらえないのでしょうか? 反応が悪いのでしょうか?
訪問先で会社の強みを説明したが……
ある日、IT企業リーディングソフトの営業担当Aさんが、不動産会社のセントコーポレーションから問い合わせが入り、訪問しました。
問い合わせ内容は……
- 営業社員が使うノートパソコン100台を購入検討中
- 今までIT関係は全て大手システム会社のアドバイステクノロジーに依頼していた
- 今後もネットワークやシステムはアドバイステクノロジーに依頼するけれど、ノートパソコンは価格が高いので他の会社から購入しようと探している
リーディングソフト(Aさんの会社)は……
現在の事業内容
- モバイル事業:ノートパソコン、スマートフォンの販売
- オフィス機器事業:複合機、プロジェクターなど、オフィス機器の販売
- ソリューション事業:グループウェア、Web会議、CRMなどの販売
拠点と組織
- 東京本社、名古屋、大阪、福岡、札幌を中心に全国20拠点
- カスタマーセンターがあり、各拠点のサポートスタッフと連携し、すぐに顧客対応できる
実績
- 中堅から準大手企業を対象に取引先が200社
- モバイル、オフィス機器、ソリューション事業と総合的に支援している企業が多い
- 社長の人脈で金融業界最大手のポータル銀行とノートパソコン、複合機、グループウェア、Web会議からCRMと幅広く取引している
セントコーポレーション(お客さん)は……
- マンションの開発・販売会社
- 設立10年で急成長している
- 社長は大手不動産会社出身で、まだ40歳
- 東京本社、名古屋、大阪に拠点がある
- 来期に仙台、静岡、広島に拠点を立ち上げる予定
Aさんは訪問前に先輩からアドバイスをもらいました。
「価格勝負になると他の会社に負けるから、うちの強みをしっかり伝えるように。
- モバイル、オフィス機器、ソリューション事業と総合的に支援できること
- 拠点の多さとこまめなサポート体制
- 総合的に支援している企業が200社あること
- 金融業界最大手のポータル銀行との取引
この四つがうちの会社の強みなんだからしっかり伝えてくるように」
そして、Aさんはセントコーポレーションを訪問。
名刺交換して、軽く会話をしながら用件を確認した後に会社紹介資料を渡し、説明をはじめました。
「それでは、簡単に当社についてご説明させていただきます」
「当社は設立15年で、ノートパソコンから複合機やプロジェクター、ソフトウェアと企業様のIT環境を総合的に支援している会社です」
「当社の代表取締役が大手システム会社で新規事業の立ち上げから責任者を務め、その後設立しました」
「当社の代表は、大手システム会社のときに……」
「事業内容としては、
ノートパソコン、スマートフォンの販売といったモバイル事業
複合機、プロジェクターなどオフィス機器の販売といったオフィス機器事業
そして、グループウェア、Web会議、CRMなどのソリューション事業
の三つの事業領域で企業様のITに関するお困りごとを総合的に支援しています」
「モバイル事業では……」「オフィス機器事業では……」「ソリューション事業では……」
「営業やサポートの拠点は、
東京本社、名古屋、大阪、福岡、札幌を中心に全国20拠点で全国をカバーできる体制を整備しています」
「この5年間で拠点数が……」
「組織体制は、
各拠点に営業と技術サポートスタッフが配置し、その他にカスタマーセンターを持っています」
「カスタマーセンターと技術サポートスタッフが連携し、全国でこまめに対応できる体制を整備していて、何かありましたら全国どこでも技術サポートスタッフすぐにかけつけられるんです」
「また、技術サポートスタッフは、社内で教育し……」
「取引先としては、
中堅から準大手クラスの企業様が200社あり、ほとんどの企業様とモバイル、オフィス機器、ソリューション事業と幅広くお取引させていただいています」
「また、金融業界最大手のポータル銀行様ともお取引させていただいて、ノートパソコン、複合機、グループウェア、Web会議からCRMと総合的に支援させていただき……」
と説明していたら15分がたち、一通り説明した後にAさんは、
「何かご質問はありますか?」
お客さん
「いえ、ありません」
「ノートパソコンの説明をお願いできますか?」
Aさんは「反応が悪いな」と思いながらノートパソコンの説明に移りました。
なぜ、反応が悪かったのでしょうか?
Aさんの会社説明で改善した方が良いところを探してみてください。
自社の強みはお客さんにとって役に立つ情報なのかどうか
お客さんにとって会社説明の強みは、お客さんにとって役に立つかどうかです。
「モバイル、オフィス機器、ソリューション事業と総合的に支援できること」は、お客さんにとって役に立つか?
お客さんが「今後もネットワークやシステムはアドバイステクノロジーに依頼する」と言っているのですから、今のところお客さんにとって役には立たないでしょう。
ということは、一生懸命にアピールしても意味がない。
「拠点の多さとこまめなサポート体制」はお客さんにとって役に立つか?
お客さんは「来期に仙台、静岡、広島に拠点を立ち上げる予定」と言っていますので役に立つかもしれません。
拠点の立ち上げでは、ITの手配や調整でお客さんは手が回らないかもしれません。
であれば、
「拠点の多さとこまめなサポート体制」と言うだけでなく、「拠点の多さとこまめなサポート体制があるので、ITの手配や調整もサポートでき、拠点の立ち上げや移転をスムーズに進めることができる」と伝えた方が興味を持ってもらえたでしょう。
お客さんにとって会社説明とは、お客さんにとって役に立つかどうかです。
何が役に立つ情報なのかは一社一社異なる
お客さんにとって役に立つかどうかを考えて説明し「この会社は役に立つかもしれない」と期待させるものです。
つまり、会社説明はお客さんにとっての価値を説明し、期待させるもの。
当然のことですが、お客さんは事業も仕事も人の考え方も一社一社異なります。
そのため、役に立つかどうかも一社一社異なります。
会社説明は、お客さんに合わせて一社一社変えないといけないのです。
会社説明で「この会社は役に立つかもしれない」と期待させることができれば、その後の商品説明で興味を持たせることも、課題を聞き出すこともやりやすくなるのです。
お客さんを無視して一方的に伝えたいことを説明し、どのお客さんにも同じ会社説明をしている営業の人が多く見受けられます。
皆さんはいかがでしょうか?
会社説明では、自分が伝えたいことを一方的に説明するのではなく、「うちの会社の強みはお客さんにとって役に立つかどうか?」を考えて説明しましょう。
会社説明で価値を伝える方法は……
次回は12月18日(月)更新予定です。
今月のクイズ(営業のクイズ)
明日は新規のお客さんとオンライン商談。
うちの会社は事業内容が幅広いからオンラインだとやりにくい。
……どうやって説明しよう?
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