第133回 「どうしたら受注を獲得できるか」という策を考えるこだわりが営業を楽にする

売上を上げないといけないけれど忙しい。訪問、提案、社内調整、資料作成……。そして、目先の仕事に追われ、訪問してもニーズがないとすぐにあきらめ、次のお客さんにアプローチ。しかし、営業で効率的に売上を上げるためには訪問した1件の成果にこだわり、可能性と策とを考えることが大切です。今回は営業の業務効率についてご紹介します。

「どうしたら受注を獲得できるか」という策を考えるこだわりが営業を楽にする

お客さんを訪問してもなかなか見込み案件を獲得できない。
売上目標を達成するために、もっとお客さんのアポイントを獲得しないと、訪問しないと……
しかし、トラブル対応、社内調整、会議、資料作成と忙しい。

もっと楽に売上を上げられないのだろうか?

ホームページからお客さんの問い合わせが入って

オフィス機器を販売しているセント商事の営業担当Aさんは悩んでいました。

売上が足りないので多くのお客さんを訪問しないといけない。
社内調整や会議も多く、また取引しているお客さんの対応もあって忙しい。
その結果、残業が多くて最近お疲れ気味……

ある日、セント商事のホームページにお客さんから問い合わせが入りました。

お客さんは設備機器メーカーのリーディングテクノロジー。
問い合わせの理由は取引しているオフィス機器販売会社の対応が悪い。だから切りかえようと思って別の会社を探している。

そして、営業担当Aさんはリーディングテクノロジーの総務部Bさんを訪問しました。

Bさん
「今、取引しているオフィス機器販売会社は対応が遅いから他の会社に変えようと思っているんです」
「この間も、納品された複合機が不良品だったんですけど、交換に来たのが2日もたってからですよ。その間、会議資料とか見積書とかも印刷できなくて困りましたよ」

Aさん
「それは困りますよね、複合機を使えないと仕事がストップしてしまいますからね」

Bさん
「御社は大丈夫ですか?」

Aさん
「当社は全国30のサポート拠点があって、すぐに駆け付けられる体制をとっているんです」
「少し当社について説明させていただきますと……」
と言って、会社概要や組織体制、サポート拠点を説明しました。

Bさん
「当社は東京と大阪に支店があるんですけど、近くにサポート拠点があるんですね」

Aさん
「そうなんです。ですから何かあったときにはすぐに駆け付けられると思います」

Bさん
「支店の新設や社員の増員のときには、複合機以外にもパソコン、それとデスクなどオフィス家具も必要になるんですが」

Aさん
「当社では電話機やパソコン、プロジェクターなどオフィス機器全般を取り扱っていますし、Web会議システムやクラウドサービスも提供しています」
「また、オフィス家具メーカーさんと提携していますので、デスクやキャビネットも対応できます」

Bさん
「そうなんですね、そうすると支店の新設時には全て対応できるんですね」
「昨年から設備機器の販売だけじゃなくてシステムの提案を進めているんですが、デモンストレーションも必要ですのでノートパソコンを配布しているんです」

Aさん
「そうなんですか」
「ちなみに、支店の新設や社員の増員のご予定はあるんですか?」

Bさん
「まだ場所は言えないんですが、来期には支店を増やすと思うんです」
「その時はご連絡させていただきますのでよろしくお願いします」

そして、会社に戻り上司に報告しました。

Aさん
「来期に支店を新設する予定があるようで、定期的に訪問します」

上司
「今期の売上はどうするんだ?」

Aさん
「今期は予定がありませんので、他のお客さんにあたります」

そして、Aさんは今期の見込み案件を獲得するために……

取引しているお客さんを3社訪問……新たな見込みなし。
問い合わせが入ったお客さんを2社訪問……今期の見込みなし。
新規顧客リスト50件に電話をかけて1件アポイントを獲得し訪問……今期の見込みなし。
休眠顧客20件にメールを送って2件アポイントを獲得し訪問……やっと見込み案件を1件獲得。

そして、Aさんは「うちの会社の営業は仕事量が多すぎる、忙しすぎる」

本当に仕事量が多すぎるのでしょうか?
忙しいのは仕事量が多すぎるからでしょうか?

みなさんはどう思いますか?

訪問先で、今期は本当に案件を獲得できないのか

仮にリーディングテクノロジーから見込み案件を獲得できていたらどうだったのでしょうか?
その可能性はないのでしょうか?

リーディングテクノロジーは来期に支店を増やして拡大しようとしている会社です。
また、昨年から設備機器の販売だけでなく、システムの提案まで進めている会社です。

支店の新設は来期になるとしても今期に新入社員は採用していないのでしょうか?
採用しているのであれば、新入社員のパソコンやデスクはどうしているのでしょうか?
現在、取引している対応の悪いオフィス機器販売会社に依頼しているのでは……

昨年からシステムの提案を進めていると営業社員と技術社員の連携が必要なのでは?
連携するためのWeb会議システムやクラウドサービスは必要かもしれない……

総務部Bさんと話しても進まないのであれば、営業部を紹介してもらう方法はなかったのでしょうか?

仮に新入社員用のパソコンやデスク、あるいはWeb会議システムやクラウドサービスの見込み案件を獲得できていたらどうだったでしょうか?

Aさんが「今期は予定がないので、他のお客さんにあたります」とあきらめてから見込み案件の獲得までにかかった時間は、

お客さんの訪問が8件:移動時間含め15時間
新規顧客リスト50件に電話:10時間
休眠顧客20件にメール:5時間
合計:30時間

1日の勤務時間を8時間として約4日分もかかっている。

あきらめずに策を考え、見込み案件を獲得していたら、この30時間はいらなかったかもしれない……
アポイントを獲得することや多くのお客さんを訪問することは時間もコスト(営業社員の人件費や販売促進費など)もかかります。

時間もコストもかけて訪問したお客さんは簡単にあきらめずに可能性を探し、策を考えましょう。
その方が短い時間と低いコストで見込み案件を獲得できるのです。

営業の効率化とは、1回の仕事でより成果を上げること

営業には、訪問、提案、交渉、トラブル対応など、さまざまな仕事があります。
そして、今日の営業は社内調整や会議、報告書など、さまざまな仕事を抱えながら行わなければなりません。

会社の中で売上を担う営業は大変な仕事です。
この大変でさまざまな仕事を抱えなければならない営業では効率性も大切です。

営業にとって大切な効率性で最も考えなくてはならないことは、1回の仕事でより成果を上げることです。

訪問、提案、交渉、トラブル対応、社内調整、会議、資料作成……忙しい。
その結果、目の前の仕事をこなすばかりで、情報収集や策を考えることをおろそかにする。
すると、受注を獲得できずもっと多くのお客さんに訪問しないといけなくなる。
その結果、さらに忙しくなり目の前の仕事をこなすばかりで、さらに情報収集や策を考えることをおろそかに。
すると、さらに受注を獲得できずもっと多くのお客さんに……負のスパイラル。

簡単にあきらめ、策を考えることをおろそかにすると、いつまで経っても忙しいままで、また売上も上がらないのです。
忙しく大変な仕事にしているのは、目の前の仕事ばかり考えている今のやり方では?

効率的に、楽に、売上を上げるために、せっかく訪問できたお客さんはあきらめずに策を考えましょう。

訪問や提案の後、あきらめずに「どうしたら受注を獲得できるのか?」にこだわることが、忙しい営業にとって売上を上げるための近道です。

積極的な営業へ変革する方法は……

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次回は6月17日(月)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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