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第132回 受け身から積極的な営業へ……顧客の課題と解決策の提案が体質を変革する
御用聞き営業や商品案内営業から課題解決型営業や戦略営業に変えないといけない。しかし変わらない。この大きな原因の一つが体質です。課題解決型営業や戦略営業は、積極的な体質のもとに行う営業です。今回は、受け身体質から積極的な営業へ変革する方法についてご紹介します。
受け身から積極的な営業へ……顧客の課題と解決策の提案が体質を変革する
新商品の営業、新規取引の獲得、新規マーケットの拡大……いずれも積極的な営業が必要です。
しかし、
お客さんが要望を言ってくれたら対応するけれど……
今の取引の継続に対しては営業するけれど……
「うちの営業社員は受け身で積極的に営業しない」と悩んでいる営業部長やマネージャーが多い。
営業社員全員に“積極的な営業”を働きかけるが……
産業用カメラを販売しているセント商事では月初に営業会議をしていました。
営業部長は営業社員全員に、
「うちの営業社員は受け身で積極的に案件を獲得しようとしない」
「取引先の工場の再編が進んでいるから、今の取引ばかりだと売上が下がってしまう」
「もっと積極的に案件を獲得しないと」
「そのため、今月は次の二点を徹底するように」
「一点目は、取引を拡大するため既存顧客に対し、他の工場の紹介を獲得するように」
「二点目は、今期リリースした新商品の工場向けカメラを紹介するように」
新商品の工場向けカメラは……
競合他社の工場向けカメラより価格は高いけれど高画質。
工場内に設置して作業者の行動や作業、表情などを映像化できる。
そのため、作業方法を映像でマニュアル化したり、作業者の疲労や健康をチェックしたりできる。
セント商事の営業担当Aさんは、工作機械メーカーであるリーディングテクノロジーの埼玉工場を訪問しました。
営業担当Aさん
「新商品の工場向けカメラをご紹介させていただきたいのですが」
「このカメラはアメリカのアドバイス社製で、アメリカでは既に10万台販売されているんです」
「10万台も売れている理由は……
画素数が……で高画質であるため、工場内の作業者の表情や細かい作業まで撮影できて、映像データの伝送スピードが速く……」
「そのため、工場の作業者一人一人の健康管理や熟練工の作業を映像化することで、若手作業者に対する教育で……」
と一通り新商品を説明。
そして、Aさんは
「埼玉工場さんでもお役に立つと思うのですが、いかがでしょうか?」
するとリーディングテクノロジーの担当者Bさんは
「健康管理は毎日朝礼で確認していますし、熟練工の技術伝承は重要なので、若手作業者の教育も力を入れていますから問題ないですよ」
Aさん
「そうですか、埼玉工場さんでは健康管理も若手作業者への教育も進んでいるんですね」
Bさん
「うちの会社も作業者の高齢化が進んでいまして、10年前から若手作業者の採用と教育は強化しているんですよ」
Aさん
「そうですか」
「よろしければ、御社の福島工場さんにもお話ししたいのですが、ご紹介いただけないでしょうか?」
Bさん
「一応、聞いてみますけど、福島工場も間に合っていると思いますよ」
Aさんは会社に戻り、営業部長に報告
「積極的に案件を獲得しようとしたんですけれど……
新商品の工場向けカメラを紹介したんですけど必要なかったようで、あと、福島工場の紹介をしてもらおうとしたんですが、ダメでした」
“積極的な営業”とは何か
ここで問題です。
Aさんが、新商品の工場向けカメラを紹介したこと、福島工場の紹介をもらおうとしたこと
これらは積極的な営業なのでしょうか?
積極的とは、物事を自ら進んで行うこと。物事を自ら考え自ら行動すること。
新商品の工場向けカメラの紹介はお客さんから要求されたことではありませんが……
自ら考えてやろうとしたことではなく、営業部長に指示されてやったこと。
福島工場の紹介もお客さんに自らお願いしていますが……
自ら考えてやろうとしたことではなく、営業部長に指示されてやったこと。
そして、指示された新商品を紹介し、お客さんに「問題ないですよ」と言われたらあきらめてしまいました。
積極的に課題を聞き出そうとか、説得しようとせずに……
お客さんに要求されてやったことでなくても、上司に指示されてやったことは積極的ではありません。
営業活動における積極性とは、
売上を上げるために、どこに、どのようなニーズがあるかを自ら考えて、自ら行動すること。
積極的な営業の基本は、
自らお客さんの中(組織など)のどこにニーズがあるかを考えること。
自らお客さんの課題と解決策(=提案)を考えること。
そして、考えたことを自ら行動すること。
つまり、積極的な営業の基本は、自ら提案を考え、提案すること。
積極的な営業に変えたいのであれば、
「他の工場の紹介を獲得するように」「新商品を紹介するように」と指示するのではなく……
お客さんであるリーディングテクノロジーの中にどのような課題があるのか?
- リーディングテクノロジーの工作機械はどのような製品か?
- 製品はどのように変わっていくのか? 高度化するのか?
- 製造過程の中で技術伝承が必要なところはどこか?
- 若手作業者の教育のどこに問題があるのか?
そして、工場向けカメラでどのような解決策が考えられるのか?
- カメラで熟練工の作業を映像化することで実現できることは何か?
- 解決策によってリーディングテクノロジーはどのようなメリットがあるのか?
この課題と解決策を考えさせ、提案させる。
積極的な営業に変えるためにはこれを継続させる必要があるのです。
積極的に営業させようと「紹介を獲得するように」「新商品を紹介するように」と指示している営業部長やマネージャーが多いのですが、自らお客さんの課題と解決策(提案)を考えなければ積極的な営業はできません。受け身である御用聞き営業しかできないのです。
お客さんの課題や解決策を考え、提案する
受け身体質を変えることは容易なことではありません。
しかし、課題解決型営業や戦略営業は、自ら考え、自ら行動するという営業であり、積極的な体質が前提です。
「紹介を獲得するように」「新商品を紹介するように」という指示ではなく……
自ら課題と解決策を考えさせ、提案させましょう。
部下について「お客さんに対して興味がない、お客さんの課題や解決策を考えない」と悩んでいる営業部長やマネージャーが多いのですが、根本的な問題は売上や商品のことばかりで、お客さんの課題や解決策を考えさせる時間が少ないことです。
そのため、売上や商品の視点ばかりになり、お客さんの視点で考えられなくなっているのです。
課題解決型営業や戦略営業にとって、お客さんの課題や解決策を考える時間は大切です。
積極的な営業へ変革する方法は……
次回は5月20日(月)更新予定です。
今月のクイズ(営業のクイズ)
あなたはノートパソコンの営業です。
お客さんは「営業部にはスマートフォンを配布しているから大丈夫」。でも、ノートパソコンも必要なはず。
……どうやって説得する?
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