第142回 顧客に興味を持たせる提案書のタイトルは商品でなく課題を書く

提案書を顧客の立場に立って一生懸命に作成……課題、解決策、メリット。しかし、表紙のタイトルは自分の立場でアピールしたいことをまとめている……。一番はじめに目にする提案書のタイトルで興味を持たれず失敗している提案が多く見受けられます。今回は顧客に興味を持たせる提案書のタイトルについてご紹介します。

顧客に興味を持たせる提案書のタイトルは商品でなく課題を書く

新規案件の獲得やマーケットの拡大を進めるために積極的に提案しようとしている会社が多い……そして、多くの営業の人がお客さんの課題や解決策、メリットを一生懸命に考えて提案書を作成しています。
では、提案書で一番はじめに目にする表紙のタイトルにどれだけこだわっていますか?

コールセンター会社の、とある営業場面

コールセンター会社CRMリーディングの営業担当Aさんが、アパレルメーカーのセントジャパンを訪問しました。
お客さんのカスタマーセンター(コールセンター)は、問い合わせやクレームを対応していて、現在CRMリーディングの競合会社に外注していました。

訪問したときにお客さんから聞けたカスタマーセンターの情報は以下のとおり。

さまざまな問い合わせやクレームが入ってくる。
「購入したパンツの丈が短すぎるので交換してほしい」
「品番123-45のロングスカートで薄いブルーの色はないんですか?」
「購入したあと洗濯機で1回洗っただけで丈が縮んでしまった」
など

問い合わせは高齢者から主婦層、若年層と幅広く、以下の情報を聞いている。
「年齢、住んでいる地域、職業」
「問い合わせやクレームの理由……白のニットに合わせるブルーのスカートを探している、など」

そして、お客さんは、
「カスタマーセンターには有効な顧客の声が多いのに、商品企画に活用しようと考えていないんです」
「年齢や職業別に、問い合わせやクレーム内容とその理由を整理して分析すれば使えるはずなのに」

営業担当Aさん
「なんで使おうとしないんですか?」

お客さん
「うちの商品企画部は、売上データや競合の売れ筋情報から企画するという今までのやり方から変えないんですよ」
「どの店で何が売れているかという情報はリアルタイムに共有して商品企画に生かしているんですけど」

Aさん
「もったいないですね」

お客さん
「そうですよ、だから商品ラインアップの拡大が進まないんです」
「今まで中心だった主婦層から若年層に商品ラインアップを拡大しようという会社の方針なのに、若年層向けに売れる商品を企画できないんですよ」

Aさん
「よろしければ、顧客の声を有効活用するためのご提案をまとめてきましょうか?」

お客さん
「そうですか、ありがとうございます」
「ご提案していただいたら商品企画部に話してみますので」

そして、Aさんは会社に戻り提案書を作成しました。お客さんに聞いた情報から商品企画の課題と解決策、顧客の声を活用したときのメリットを整理して提案書を作成し、最後に表紙のタイトルを作成。

ここでみなさんに問題です。
下の二つの中からAさんの提案書のタイトルとしてどちらが良いでしょうか?

提案書のタイトル(1)
タイトル「顧客の声の有効活用を実現するカスタマーセンターのご提案」
サブタイトル「多様な顧客の声に対する属性別整理と分析するしくみを整備」

提案書のタイトル(2)
タイトル「若年層ニーズの収集力強化による商品ラインアップ拡大のご提案」
サブタイトル「売上データや競合の売れ筋情報に加えて若年層向け企画力の強化を実現」

Aさんが作成した提案書のタイトルは(1)でした。

Aさんが提案してから2週間後にお客さんから連絡がきました。
「せっかくご提案していただいたのに、商品企画部に必要ないと断られてしまいました」

何が良くなかったのでしょうか?

提案書の改善ポイント

提案書の表紙のタイトルは一番はじめに目にする部分です。はじめに目にする提案書のタイトルにより提案に対する相手の印象が変わります。

お客さんの状況は以下のとおりです。

  • カスタマーセンターの改善は検討していない。
  • 商品企画部は売上データや競合の売れ筋情報から企画している。
  • 顧客の声を商品企画に活用しようと考えていない。
  • 会社の方針は、主婦層から若年層に商品ラインアップを拡大。
  • 商品ラインアップの拡大が進まない、若年層向けに売れる商品を企画できない。

この状況にいるお客さんは提案書のタイトルにどのような印象を持つのでしょうか?

Aさんが作成した提案書のタイトル(1)
「顧客の声の有効活用を実現するカスタマーセンターのご提案」
「多様な顧客の声に対する属性別整理と分析するしくみを整備」

「カスタマーセンター」「顧客の声の分析」「顧客の声の有効活用」の提案という印象。

CRMリーディングの商品は「カスタマーセンター(コールセンター)」です。売り込みや商品紹介の提案という印象を持たせてしまいました。しかし、カスタマーセンターの改善を検討していないため、興味を持ちません。また、検討していない「顧客の声の分析や有効活用」にも興味はありません。必要ないと否定的な意識にさせてしまいます。

はじめに目にする提案書のタイトルで否定的な意識にさせてしまいました。そのため、その後の提案内容に対して否定的な意識のまま聞かせることになりました。その結果、必要ないと断られてしまったのです。

正解は……提案書のタイトル(2)

訪問時に聞いた情報から、商品企画部では会社の方針により商品ラインアップの拡大を進めるというミッションがあり、若年層に売れる商品を企画できないという課題があると考えられます。

「若年層ニーズの収集力強化による商品ラインアップ拡大のご提案」
「売上データや競合の売れ筋情報に加えて若年層向け企画力の強化を実現」

このタイトルは、商品企画部が重要だと思っているミッションや課題に対する提案という印象を与え、興味を持たせることができるのです。また、CRMリーディングの商品である「カスタマーセンター」という言葉が入っていないため売り込みや商品紹介の印象を持たせず前向きに提案を聞かせることができます。

はじめの印象で、その後に説明する提案内容に対する興味や理解も変わってくるのです。はじめに「関係ない、必要ない」と思わせてしまうと、その後に説明する提案内容も否定的にとらえられてしまいます。はじめに「自分に関係あるかもしれない、必要かもしれない」と思わせると、その後に説明する提案内容を前向きに聞かせることができます。

お客さんが何に興味を持つのかを考える

提案書のタイトルを自分が伝えたい、アピールしたいサービスや商品とそのメリットで作成している人が多く見受けられます。みなさんの提案書はいかがでしょうか?

「○○システムによる業務効率のご提案」
「採用支援○○ソリューションによる人材採用強化のご提案」
「販売促進サービス○○による集客力強化のご提案」

提案書で一番はじめに目にする表紙のタイトルは、お客さんに印象を与えるものです。与えた印象はその後の提案内容に対するお客さんの興味や理解に大きく影響します。
そのため、提案書のタイトルはお客さんが何に興味を持つのか、何が必要なのか、を考えて作成しましょう。自分が伝えたい、アピールしたいことではなく、お客さんの立場で考えて作成しましょう。

お客さんに興味を持たせる提案書のタイトルの作成方法は……
「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は4月21日(月)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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