第141回 顧客との発展的な関係は“嫌われない”ではなく“好かれる”行動を

全ての営業活動は顧客との関係のうえで成り立っています。商談、提案、交渉……顧客との関係が良ければ進めやすいし、悪ければ苦労する。しかし、現実は要求されたら対応するという受け身な行動ばかりで顧客との関係が発展しない……。今回は顧客との関係を発展させる方法についてご紹介します。

顧客との発展的な関係は“嫌われない”ではなく“好かれる”行動を

「お客さんとの関係は大切」
ほとんど全ての会社で営業の人が言っていることです。

では、ご自分の営業を振り返ってみてください。
本当にお客さんとの関係を大切にしていますか?

失注につながった営業の場面

システム開発会社・セントテクノロジーのAさんは営業担当になって5年。
大口のお客さんも任せてもらい、営業部の主力として活躍していました。

Aさんが大切にして若手社員によく指導していることは……

お客さんとの関係を大切にするために、

  • お客さんの要望をきちんと聞いて応える
  • 納期や資料の提出など期限、期日を守る
  • お礼や謝罪をきちんとする
  • 失礼なことを言わない、いい加減なことを言わない
  • トラブルやクレームがあったらすぐに駆け付ける

ある日、Aさんは新商品のWeb会議システムを紹介するためにお客さんを訪問しました。

Aさんが一通り商品を紹介した後にお客さんが、
「実は今使っているWeb会議システムの切り替えを検討していまして」

Aさんは要望を聞こうと
「Web会議システムを切り替えるにあたり、ご要望などございますか?」

お客さん
「社員の入社や退職、異動の時のID管理の負担を軽減したいんです」
「うちの会社は社員の入社や退職が多くて、それに異動も多いから大変なんですよ」

Aさん
「そうなんですか、当社のWeb会議システムは、人事管理システムと連携できますのでID管理が不要になると思います」

お客さん
「そうなんですか、上司に紹介したいので実績資料はありますか?」

Aさん
「導入実績は多くありますので、作成してお送りさせていただきます」
「実績以外に記載した方が良いことはありますか?」

お客さん
「そうですね、御社のWeb会議システムに切り替えた時のメリットがまとめてあると上司を説得しやすいと思います」

Aさん
「分かりました、いつまでに必要ですか?」

お客さん
「1月31日に会議があるんです。30日までに送ってもらえますか?」
「会議で上司に説明したいので」

Aさんは実績資料を作成し、期限の1月30日の夕方にお客さんに送りました。

そして、2週間後にお客さんから
「実は、リーディングシステムさんのWeb会議システムに決まってしまいまして」
「実績資料まで作成してもらったのに申し訳ありません」

半年後にお客さんを訪問すると、
「実は、あの後に名刺管理システムも検討することになって、来月からリーディングシステムさんの名刺管理システムを導入することになったんですよ」

Aさん
「そうなんですか、当社も名刺管理システムを取り扱っていますのでご紹介できたんですが」

お客さん
「そうなんですか、次に検討するときはお声がけさせていただきます」

Aさんは、Web会議システムを失注してしまいました。
また、その後に検討した名刺管理システムでは声をかけてもらえませんでした。

受注と失注とを分けた営業の進め方の違いはどこか

受注したリーディングシステムはどのような営業をしていたのでしょうか?

リーディングシステムの営業担当Bさんは、Aさんの後にお客さんを訪問していました。

Bさんも要望を聞こうと
「Web会議システムを切り替えるにあたりご要望などございますか?」

お客さん
「社員の入社や退職、異動の時のID管理の負担を軽減したいんです」
「うちの会社は社員の入社や退職が多くて、それに異動も多いから大変なんです」

Bさん
「そうなんですか、当社のWeb会議システムは、人事管理システムと連携できますのでID管理が不要になると思います」

お客さん
「そうですか、社内で検討してみようと思います」

Bさん
「検討される際に他社のWeb会議システムと比較するでしょうから、実績資料をお送りしましょうか?」

お客さん
「いいですか?」

Bさん
「あと、切り替えた時のメリットもまとめた方がいいですよね?」

お客さん
「そうですね、ありがとうございます」
「1月31日に会議があるんです。30日までに送ってもらえますか?」

Bさん
「分かりました、30日までにお送りさせていただきます」

お客さん
「お手数をおかけしますがお願いします」
「話は変わりますが、名刺管理システムを導入するかもしれないんです」
「まだ、検討しているわけじゃないんですが、御社で取り扱っていませんか?」

Bさん
「取り扱っていますよ、ご説明しましょうか?」

お客さん
「いいですか?」

Bさん
「今月、一度ご説明させていただきますよ」

Bさんは下の文章をメールに記載し、提出期限の2日前の1月28日に実績資料を送りました。
「31日の会議でご説明されると伺いましたので、月末のお忙しい時期でも会議前にご確認いただけるよう本日お送りさせていただきます」

そして、2週間後にWeb会議システムを受注し、半年後には名刺管理システムも受注しました。

“嫌われないため”と“好かれるため”との違いを考える

セントテクノロジーのAさんとリーディングシステムのBさんとを比べてみてください。
どこが違うでしょうか?

実績資料を提出すること、切り替えた時のメリットをまとめること、実績資料の提出日、Aさんはお客さんの要望を聞き、要望どおりに行動しています。
しかし、Bさんはお客さんに要望を聞く前に提案したり、また要望以上の行動(期限の2日前の提出)をしたりしています。

結果は、名刺管理システムについて、Aさんは相談してもらえず、Bさんは相談してもらえました。
Aさんはお客さんとの関係を大切にしていたのに、なぜ?

ここで、次のことを考えてみてください。

友人との関係で嫌われないためにすること、大切なことは?
友人との関係で好かれるためにすること、大切なことは?

それぞれを思いつく限り書き出してみてください。

Aさんが大切にしていたこと

  • お客さんの要望をきちんと聞いて応える
  • 納期や資料の提出など期限、期日を守る
  • お礼や謝罪をきちんとする
  • 失礼なことを言わない、いい加減なことを言わない
  • トラブルやクレームがあったらすぐに駆け付ける

これは、好かれるためにすること、大切なことというより、嫌われないためにすること、大切なことではないでしょうか。

好かれるためにすること、大切なことは、相手の要望や要求以上の行動をすること。
相手に要望や要求を言ってもらい、そのとおりに行動するだけでなく、自ら相手のことを考えて相手の役に立つ、喜ぶと思うことをしてあげる。

例えば、彼女の誕生日に、

  1. 何が欲しいかを考えずに、彼女に欲しいものを聞いてプレゼントする。
  2. 何が欲しいかを聞かずに、彼女の趣味や嗜好(しこう)、性格から欲しいものを考えてプレゼントする。

彼女との関係性により異なることもありますが、大半の人にとって
1.は嫌われないためにすること(関係を下げすに維持する)
2.は好かれるためにすること(関係をより良くし向上する)

彼女が欲しくないものをプレゼントしてしまうかもしれないので、1.の欲しいものを聞いてプレゼントするということは、欲しくないものをプレゼントして嫌われないようにするということ。

AさんとBさんの場合、お客さんにとっての印象は、
Aさんは要望を伝えたら応えてくれる人。
Bさんは自らお客さんの状況を理解し、役に立つことを考えて行動してくれる人。

多くの営業の人を見ていると、要望や要求を聞いて要望や要求どおりの“嫌われないためにすること、大切なこと”ばかりで、“好かれるためにすること、大切なこと”が少ないと感じています。

みなさんはいかがでしょうか?

“好かれるためにすること”は、お客さんとの関係を発展させる

”嫌われないためにすること、大切なこと”は、お客さんとの関係を維持することはできます。
“好かれるためにすること、大切なこと”は、さらにお客さんとの関係を発展させることができるのです。

お客さんとの関係は、商談や提案、交渉に大きく影響します。

“嫌われないためにすること、大切なこと”ばかりでなく、お客さんのことを想像しお客さんの要望や要求以上の“好かれるためにすること、大切なこと”に関する行動を増やしましょう。

お客さんを想像する方法は……
「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

顧客関係の維持・発展チェックシート付き

次回は2月17日(月)更新予定です。

今月のクイズ(営業のクイズ)

新規開拓営業

みなさんは営業管理システムの営業です。
アポイント獲得メールを送ろうとお客さんのホームページを見たら新商品の「SAO-2025」を発売していました。
……どんなメールを送る?

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
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