第140回 「自分がお客さんだったら」という想像が課題解決型営業を実現する

課題解決型営業や戦略営業で必要な情報は聞く、調べるという手段で収集できない情報が多く、そのため想像することが必要です。顧客の状況や課題、予算、決裁者の意向、組織の力関係……。今回は顧客視点の営業に必要な「顧客に関する想像」についてご紹介します。

「自分がお客さんだったら」という想像が課題解決型営業を実現する

顧客志向や顧客視点が大切と多くの会社がいっています。しかし、ほとんどの会社ではお客さんの視点ではなく、自分の会社や商品の視点で営業しています。

お客さんの視点で営業するとはどういうことなのでしょうか?

お客さんの方針を聞いて提案を考える

ある日、テレアポ代行会社セントカンパニーの営業担当Aさんは厨房(ちゅうぼう)機器メーカーのリーディングテクノロジーを訪問しました。

商談を進めていたらお客さんが今期の方針について話してくれました。
「新しく開発した自然冷媒の業務用冷蔵庫の販売に力を入れていく」

会社に戻り、お客さんに聞いた今期の方針から提案を考えようとミーティング。

上司Bさん
「Aさん、お客さんから聞いたリーディングテクノロジーの方針を説明して」

Aさん
「今期は新しく開発した自然冷媒の業務用冷蔵庫の販売に力を入れるみたいです」
「新製品の自然冷媒の業務用冷蔵庫を切り口に新規の取引先を開拓するみたいです」

営業担当Cさん
「自然冷媒って何?」

Aさん
「冷蔵庫は冷やすためにフロンっていうものを使っているみたいなんですが、フロンは地球温暖化を進める温室効果ガスの仲間みたいなものらしいです」
「そのフロンを使わないで、自然界にあるアンモニア、二酸化炭素、水、空気、炭化水素を使った環境負荷の少ない製品らしいです」

Cさん
「なんか難しそうだけど、環境問題を重視する会社が多いから売れるんじゃない?」

Aさん
「自然冷媒の業務用冷蔵庫は競合他社も売っているみたいなんですけど、リーディングテクノロジーの業務用冷蔵庫は省エネの性能も高いらしくて」
「だからこの製品を切り口に新規の取引先を開拓しようと考えているみたいです」

上司Bさん
「どうやってアプローチしようとしているの?」

Aさん
「今まで展示会に出展していましたので、今回も展示会に出展すると思うんです」

上司Bさん
「展示会に出展するなら来場者に対するテレアポのニーズがあるんじゃないか?」

Cさん
「そうですね、メーカーの営業ってテレアポが苦手な人が多いから」

上司Bさん
「当社は、新製品のテレアポ代行の実績が多いから受注できるかもしれない」
「Aさん、早めに訪問して展示会に出展するかを聞いてくるように」

Aさん
「分かりました」

そして、Aさんがリーディングテクノロジーを訪問するとお客さんは、
「今回も展示会に出展するんですけど、既に取引しているテレアポ代行会社に頼むと思います」

既に競合のテレアポ代行会社と取引があり、断られてしまいました。

3カ月後、セントカンパニーの売上は伸びていない。
マネージャーBさんは、営業部長Dさんとミーティングしていました。

営業部長Dさん
「当社のサービスを紹介することばかり考えているから売れないんだよ」
「もっとお客さんの視点で考えて提案しないと」

マネージャーBさん
「お客さんの視点で考えていますよ」
「リーディングテクノロジーの件だって、お客さんの方針を聞いてニーズを考えていましたし」

「お客さんの視点で考える」とは

ここでみなさんに問題です。
本当にお客さんの視点で考えていたのでしょうか?
Aさん、Bさん、Cさんの会話から考えてみてください。

さらに問題です。
お客さんの視点で考えていなかったのであれば、どのようなことを考えるべきだったのでしょうか?

確かに、Aさん、Bさん、Cさんはリーディングテクノロジーの方針からニーズを考えていました。

  • 新しく開発した自然冷媒の業務用冷蔵庫の販売に力を入れる
  • 自然冷媒の業務用冷蔵庫を切り口に新規の取引先を開拓する

この二つからテレアポ代行のニーズはないか?

そして、考えたことは、

  1. 今回も展示会に出展する
  2. メーカーの営業ってテレアポが苦手な人が多い
  3. 来場者に対するテレアポのニーズがある
  4. 当社は新製品のテレアポ代行の実績が多いから受注できるかもしれない

この(1)~(4)のうちお客さんの視点で考えたものは?

(1)「今回も展示会に出展する」は、今まで展示会に出展していたという情報からお客さんの視点で考えたこと。
(2)「メーカーの営業ってテレアポが苦手な人が多い」は、お客さん(リーディングテクノロジー)の視点で考えたのではなく、メーカーの営業に関する一般論。
(3)「来場者に対するテレアポのニーズがある」は、(2)の一般論から考えたことであり、お客さんの視点で考えたことではありません。
(4)「当社は新製品のテレアポ代行の実績が多いから受注できるかもしれない」は、自分の会社の視点(自分の会社の経験による視点)で考えたことです。

つまり、お客さんの視点で考えたことは「今回も展示会に出展する」ということだけ。
他は一般論のニーズと自分の会社の視点による短絡的な予測。

お客さんの視点で考えるとはどういうこと?
お客さんには、方針や戦略があり、そしてさまざまな仕事を抱え、他の部門や人と関わり、一つ一つの仕事にはそれぞれの悩みや苦労があります。

お客さんの視点で考えるということは、お客さんの立場で考えるということ。お客さんの方針や戦略、抱えているさまざまな仕事、他の部門や人との関わり、そして悩みや苦労を想像し、その想像したお客さんの立場で考えるということ。
つまり、「自分がお客さんだったら」……どのような方針や戦略に対し、どのような仕事を、どのような状況で行い、どのように悩み、苦労するかを想像することです。

もし、Aさんが一般論や自分の会社の視点ではなく、「自分がリーディングテクノロジーだったら」というお客さんの視点で想像していたら、

自然冷媒や新製品の機能、省エネ性能の知識を身につける時間が必要で、また、既存取引先の納品や設置まで対応しないといけないが、忙しくて新規取引先の開拓に時間がとれないかもしれない。
今まで既存取引先の営業ばかりで新規のお客さんのニーズを考えたり、提案したりすることが苦手かもしれない。と想像していたら……

「展示会の来場者に対するテレアポのニーズがある」という一般論でなく、「提案しやすいように、テレアポの時にお客さんのニーズを確認する必要がある」とリーディングテクノロジーに対し、有効なニーズや提案を考えられたかもしれません。

お客さんを想像しなければ課題や提案、戦略は考えられない

お客さんから情報を聞いたとき、想像せずにすぐ一般論や自分の会社の視点で考えてしまう営業の人が多く見受けられます。
「今回も展示会に出展する」と聞いたら、すぐに「来場者に対するテレアポのニーズがある」「当社は新製品のテレアポ代行の実績が多い」

みなさんはいかがでしょうか?

しかし、課題解決型営業や戦略営業に必要なお客さんの状況や課題、予算、決裁者の意向、組織の力関係など、いくら聞いても、調べても、収集できない情報がたくさんあります。お客さんを想像しなければ課題や提案、戦略は考えられません。

想像しないでできる営業は、お客さんから聞いた要求に応える御用聞き営業か、知っている商品を説明するばかりの商品案内営業のどちらかです。

お客さんの視点で想像することが課題解決型営業や戦略営業に近づけるのです。
「自分がお客さんだったら、どのような仕事を、どのような状況で行い、どのように悩み、苦労するか」を想像しましょう。

お客さんを想像する方法は……

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次回は1月20日(月)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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