第138回 営業の対策は“自社視点”の営業進捗でなく“顧客視点”の失注理由から考える

営業戦略は思いどおりにはいかないもの。そのため対策が重要。目に見える訪問件数や受注単価など営業進捗(しんちょく)から対策を考えている人が多いのですが、売上は一つ一つの受注の積み上げです。そのため、営業の対策は1社1社のお客さんの失注理由から考えるもの。今回は営業戦略の対策を考える方法についてご紹介します。

営業の対策は“自社視点”の営業進捗でなく“顧客視点”の失注理由から考える

売上目標、新商品やマーケットの拡大……多くの営業部では成果を上げようと常に課題と対策を考えながら頑張っています。
ターゲット、業務効率や行動量、組織の連携やサポート、販促施策、営業担当者の増員……

しかし、なかなか改善しない、成果が上がらない……なぜ?

リリースしたてのWeb会議システムの営業戦略を考える

システム開発会社のセントテクノロジーは昨年にWeb会議システムをリリースしました。
そして、営業マネージャーAさんが戦略を考え、営業担当者5人で営業活動を進めていました。

セントテクノロジーのWeb会議システム

  • 一番の特長は、他のWeb会議システムと比べて1ライセンス月500円と価格が安いこと。
  • そして、一般的なWeb会議システムの機能は網羅している。
  • 資料を画面共有しても参加者のビデオを共有しながら会議ができる。
  • グループウェアや営業管理システムなど他のシステムと連携できる。

Aさんが考えた営業戦略

今期の受注金額目標はリリースしたばかりなので200万円。

ターゲットについて、
大手企業は既にWeb会議システムを導入しているし、価格が安いという強みをいかしてWeb会議を導入したいけれど、予算を取りにくい中堅~中小規模の企業にアプローチしよう。

1社あたりの受注単価は、
平均10人のライセンス(ユーザー数)で受注したら500円×12カ月×10人で年間6万円。
受注単価が低いから多くのお客さんから受注しないといけない。

アプローチ方法は、
展示会に出展して名刺をたくさん集めてテレアポしよう。
その他にテレアポ代行会社に依頼して新規のアポイントを獲得しよう。

訪問したら、
一通り必要な機能がついていることを説明し、強みである価格の安さをアピール。

営業活動をスタートしてみると

そして、営業活動をスタート。
半年がたち9月末……

展示会で多くの名刺を獲得でき、テレアポ代行会社からのアポイントも含めて30件を訪問。
しかし、受注は6件で受注金額は36万円。

200万円の年間受注金額目標には全く足りない。
そこで営業マネージャーAさんは下期の対策を考えました。

Aさんが考えた対策

200万円の受注金額目標を達成するためには、あと164万円で28件を受注しないといけない。
上期のペースが30件訪問して受注が6件だから、140件訪問しないと。

1社あたりの受注単価を上げないと現実的に無理だろう。

1社あたりのライセンス数を10から20ライセンスに上げれば受注単価が12万円。
そうすれば、受注件数14件、訪問件数70件で達成できる。

訪問件数70件を達成するために、
展示会の出展を増やして、テレアポ代行会社も1社増やして2社にしよう。

1社あたりのライセンス数を増やすために、
ターゲット企業の規模を上げて、遠隔会議が必要な多拠点の製造業と商社に絞ろう。

そして、下期の営業活動をスタート。

期末の結果は……
70件訪問したけれど受注は少し増えて10件、受注金額が60万円。

あれ???
上期結果のシミュレーションでは、70件訪問すれば14件受注するはずなのに。
それにターゲット企業の規模を上げたのに受注単価が上がっていない。

なぜ、上期の結果から対策を考えたのに受注目標を達成できなかったのでしょうか?

実際に断られた企業から理由を聞いてみる

営業担当者が断られたお客さんに再訪のアポイントが獲得でき、Aさんは同行して失注理由を聞いてみました。

すると……

設備機器メーカーのアドバイスカンパニー

  • 3年前にWeb会議システムを導入、テレワークを進めているので全社員が使っている。
  • 今使っているWeb会議システムは資料を画面共有するとビデオが隠れてしまい参加者の顔が見えなくなる。
  • Web会議システムを変えると現場への説明やIDの配布、管理が大変になる。
  • 変えるだけのメリットがあればよいが、価格のメリットしかないと検討したくない。

人材派遣会社のヒューマンポータル

  • 営業活動をオンラインに切り替えるためWeb会議システムの導入を検討。
  • ログインやビデオ背景の変更など他社の方が使いやすかった。
  • 他のシステムと連携できるという説明があったが、営業現場で必要なのか分からなかった。
  • 来年に新しく営業拠点を立ち上げ営業社員も12倍に増やす予定。

なぜ営業活動がうまくいかなかったのか

ここでみなさんに問題です。
営業マネージャーAさんは下期の営業に対しどのような対策を考えるべきだったでしょうか?

Aさんが考えた対策は、
14件の受注を獲得するために訪問件数70件……そのため、展示会の出展を増やして、テレアポ代行会社も2社に増やした。
1社あたりのライセンス数を20ライセンス……そのため、ターゲット企業の規模を上げて、多拠点の製造業と商社に絞った。

訪問件数や受注単価など“自分の会社”の営業進捗に関する対策を考えていました。

しかし、お客さんが買わない理由は、
現場への説明やIDの配布、管理が大変になる。価格のメリットしかないと検討したくない。
他社の方が使いやすかった。
他のシステムと連携が営業活動で必要なのか分からなかった。

“お客さん”が買わない理由に関する対策は考えていませんでした。

もしヒューマンポータルに、
他のシステムと連携できる機能をお客さんの利用シーンに合わせて説明していれば……
営業社員を2倍に増やす予定をヒアリングでき、他社のWeb会議システムを利用した場合の将来にかかる費用との差を説明できていれば……

対策として何が足りなかったのか

営業活動において売上は一つ一つの受注の積み上げです。一つ一つの受注を獲得する方法があって、積み上げて売上目標を達成する方法を考えることが営業の売上目標を達成する方法を考えるということです。

一つ一つの受注を獲得する方法が正しくない、または考えていなければ、売上目標を達成するための訪問件数や受注単価など営業進捗の対策を考えても意味がありません。間違った営業方法で、いくら訪問件数を増やしても売上は上がりません。そもそも、売上の前提となる受注は、自分の会社や営業が決めることはできません。お客さんが決めるのです。

お客さんが決めることで売上を上げることができる営業の対策は、営業進捗という“自分の会社の視点”からではなく、“お客さんの視点”でお客さんがどうしたら買ってくれるのかを考えることから始めるものです。

営業戦略の対策を考える方法は……

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次回は11月18日(月)更新予定です。

今月のクイズ(営業のクイズ)

顧客との関係

あなたは営業マネージャーで新サービスの担当になりました。
営業戦略で市場環境や強み、弱みを分析するためにSWOTを作ろう……どのように作る?

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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