ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第106回 成長が大切な営業は、成長しにくい環境で仕事している
理解させる力、情報を聞き出す力、交渉力、提案や戦略を考える力……、営業は個人の力で成果を上げる仕事。個人が成長すればするほど売上が上がる仕事です。しかし、なかなか成長しない……。実は、それは個人の力や成長が大切な営業にとって、成長しにくい環境で仕事をしているからです。今回は営業が成長するための環境についてお話しします。
成長が大切な営業は、成長しにくい環境で仕事している
受注獲得、提案、情報収集、説得、交渉……、全て個人の力によって成果を上げる仕事です。業務や環境の改善、情報共有の促進、営業体制の改善、技術部との連携を促進しても個人の力を強化できなければ営業強化は進みません。
コンペで勝つためのポイントを教わっても……
ある会社が営業を強化するために営業部の情報共有を進めていました。
営業社員個人ごとに管理していた提案書を営業部で管理してほかの人が使えるように……。
上司
「Aさん、来週に人材派遣会社のセント商事の提案があるだろ?」
「Bさんが人材派遣会社のポータルカンパニーを受注しただろう。あれは提案が良かったから勝てたんだよ」
「ポータルカンパニーの提案書を参考にして、提案する前にBさんから勝つためのポイントを教えてもらうように」
Aさんは、提案書を見てBさんの話を聞いてみると、
- お客さんの課題と要求も同じ
- 会社の方針や決裁者の考え方も似ている
- コンペの相手も同じ
これは勝てる!
セント商事と比べてポータルカンパニーの方が価格にシビアそうだから価格を下げれば受注できるだろう。
Aさんは、Bさんに勝つためのポイントを教えてもらい、価格を下げて提案しました。
提案後、Aさん
「今、提案してきたんですけどイマイチ理解されませんでした。コンペで負けるかも」
上司
「なんで?」
「うちの強みである使いやすさと品質はちゃんと説明したの?」
「ちょっと提案書を見せてみな」
上司はAさんの提案を見て
「分かりやすくポイントもしっかりまとめてあるじゃん」
「ちゃんと説明したの?」
Aさん
「Bさんに教えてもらったとおりに説明したんですけど」
2週間後にセント商事から電話がありました。
「今回は申し訳ないのですが、他社に決めました」
ポータルカンパニーの提案書を参考に作成し、勝つためのポイントもBさんに教えてもらい、価格も下げて提案したのに……。
なぜ、負けてしまったのでしょうか?
成長しにくい環境で成長するために必要なこと
いくら提案書が良くても、いくら勝つためのポイントを押さえて説明しても、
提案の入り方、話し方や聞き方、相手の疑問や否定への対応方法で、相手の印象や理解が大きく変わってしまう……。これが営業という仕事です。
営業は個人の力をベースに行う活動。
- 説明して理解させる力や会話や質問で情報を聞き出す力
- 相手の疑問や否定に対応する力
- 顧客の情報に対し提案を考える力や表現する力
- 交渉で説得する力
- 良い印象を与える力、信頼を得る力
……など
これらの個人の力によって成果を上げる仕事で、成果が変わってしまう仕事です。
個人の力を強化し、その強化した個人の力のうえで、業務や環境の改善、情報共有の促進、営業体制の改善、技術部との連携を促進することにより成果を上げる仕事です。
個人の力なくして、情報共有を促進しても成果が上がらないのです。
営業として個人の力がつけばつくほど……、
より情報も収集できるし、より理解してもらうこともできるし、よりお客さんとの関係も良くなる。
営業とはそういう仕事です。
営業は、成長すればするほど成果の上がる仕事。
では、どうしたら成長することができるのでしょうか?
実は、営業は成長しにくい環境で仕事をしています。
お客さんのタイプや状況も変わってしまう
同じタイプ、同じ状況のお客さんであれば前回の反省を生かすことができるけど、毎回変わってしまう。変わってしまうので反省を生かす場がなく、しばらくすると忘れてしまう。
お客さんの性格や考え方、状況や課題、決裁者の意向、競合、そして商品の強みや価格……、いつもさまざまなことが絡みあっている
これだけさまざまなものが絡み合っていると自分の何がいけなかったのか明確にしにくい。明確に分かれば改善しやすいけれど。
商談、提案、トラブル、社内調整……、仕事が雑多でコロコロ変わる
同じ仕事を継続的に行えば発展、成長しやすいけれど、仕事が雑多で流動的に変わるので継続できない、徹底できない。目先の仕事に追われて成長できない。
今月はお客さんへの課題ヒアリングを徹底しよう。3日後にトラブルが発生し、それどころではない……。
場数や経験ばかりで育ってきている
やり方(理論や手法)のない場数や長い間の経験で身につけたものは癖や習慣のようなもの。癖や習慣は変えにくい。今までやってきた営業が凝り固まってしまい、改善できない、発展できない。
なんだかんだいって売上、結果至上主義
皆さんは営業会議で何を話しあっていますか?
やり方やプロセスよりも、売上目標のために、受注になるかならないか、ほかに案件はないか……ばかり。
やり方やプロセスにこだわらないと成長しないのに……。
成長しにくい環境で成長するためには、“あえて”成長するために取り組む機会を作らなければなりません。
教えてもらうのではなく自ら考える機会、限界を超えて無理をする機会、行動や発言を変える機会、さまざまなものを見て考える機会……。
顧客対応や社内調整など目先の仕事に追われるばかり、今期の売上ばかりでなく、成長を促進するために“あえて”作らなければなりません。
個人の力を伸ばすことは将来の可能性につながる
営業は個人の力で成果を上げる仕事です。
個人の力が上がれば……、
営業成果も売上も上がります。
また、より効率的に楽に仕事ができるようになります。
苦労し時間がかかっていた情報収集や交渉もスムーズになります。
そして、皆さんの将来の可能性も大きくなるのです。
個人の力で仕事をする営業の本当の価値は、個人の力が身につくことであり、力を身につけたことによる将来です。
皆さんは、成長するために取り組む機会を“あえて”作っていますか?
定期的に自分を振り返り、取り組んでください。
今期の売上や目先の仕事に追われているだけでは“営業にとって大切な成長”はできません。
営業として「成長するための四つの要件」は……
「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス
次回は3月28日(月)更新予定です。
今月のクイズ(営業のクイズ)
戦略・計画
あなたは営業チームのマネージャーです。
営業部長から売上目標は3億円と言われ来期の営業計画を作成中。
今期の売上は2億5,000万円で3億円は難しい……どうする?
お知らせ
営業強化を考える会
さまざまな会社の営業責任者やマネージャー、営業担当者が集まり一緒に営業強化を考える座談会形式の「営業強化を考える会」を開催します。
3月16日(水) 営業強化を考える会/管理職編【Web】
3月23日(水) 営業強化を考える会/営業担当者編【Web】
営業強化セミナー
課題解決型営業や戦略営業に関する参加料無料のセミナーを開催しています。
3月3日(木)「課題解決型営業セミナー」【Web】
課題解決型営業プロセス、顧客課題・提案考察力、商談・提案力、顧客関係力
3月9日(水)「営業マネジメントセミナー」【Web】
PDCAマネジメント、進捗状況・課題の把握、対策策定・指導、営業管理、営業会議
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