第107回 営業強化は今期でなく中期視点で考える

提案力、戦略営業、情報収集力や共有・活用力……皆さんの会社も営業強化に取り組んでいることでしょう。しかし、今期の売上を上げることに必死で、顧客対応に追われる、仕事が多すぎる、忙しい……そして、徹底できない、進まない。今回は、「そもそも営業強化とはどのようなものか?」についてお話しします。

営業強化は今期でなく中期視点で考える

いい商品、高い技術力があれば売上が上がる……もはやそんな時代ではありません。
市場の変化が速く、顧客の課題が複雑化している今日、変化する市場についていく、複雑な課題を押さえる営業力も重要です。

そのため、多くの会社で営業強化を進めています。
しかし、うまくいかない……。「仕事が多くて大変」「忙しいからできない」となかなか徹底できない、進まない。

今回は営業強化とはどのようなものかについてお話ししましょう。

営業強化を進めるためのよくある営業マネジメントの例

ある会社の営業部長AさんとマネージャーBさんがもめていました。

2年前……。

営業担当者にアカウントプラン(お客さんから受注を獲得するための戦略と計画)を作らせて営業強化を進めようとしていました。

営業部長Aさん
「アカウントプランを見たけど、ちゃんとやっていないだろう」
「営業担当者が明らかに手を抜いている」

マネージャーBさん
「みんな慣れていないからうまく作れなくて」
「今まで御用聞き営業しかやってこなかったから、戦略や提案を考える方法も知らないし」

営業部長Aさん
「だったら勉強すればいいじゃないか」
「戦略や提案の本も売っているし、インターネットで調べればいろんな情報があるだろう」

マネージャーBさん
「そんなこと言ったってみんな忙しいんですよ」
「売上目標だって3億円ですよ。前期の2億8千万円だって頑張ってギリギリ達成したっていうのに」
「営業社員も増やしてもらえないし、技術部のせいでトラブル対応も多いし」

営業部長Aさん
「でも、このままじゃダメだろう」
「うちの会社も技術力に依存しているばかりじゃなくて営業力も強化しないと」

マネージャーBさん
「今期の売上目標を達成しなくていいんだったらやらせますよ」
「でも、そういうわけにいかないですよね」

営業部長Aさん
「分かった、その代わり何としても今期の売上目標3億円を達成しろよ」

そして、期末にギリギリで売上目標を達成。

そして、期が変わり1年前……。
何とか3億円の目標を達成したため売上目標は3億2千万円に。

今期もアカウントプランを作らせて営業強化を進めようとしていました。

営業部長Aさん
「アカウントプランを見たけど、ちゃんとやっていないだろう」
「営業担当者が明らかに手を抜いている」

(あれ? 前の年と同じ会話では……)

マネージャーBさん
「みんな慣れていないからうまく作れなくて」
「今まで御用聞き営業しかやってこなかったから、戦略や提案を考える方法も知らないし」

営業部長Aさん
「1年前も同じことを言っていたぞ」

マネージャーBさん
「今までやってこなかった営業社員にいきなり戦略を作れと言ったってちゃんと作れませんし、仮に作ったとしても実行できないですよ」
「一番大切なのは今期の売上目標ですよね?」
「アカウントプランが負担になって今期の売上目標を達成できなくなりますよ」
「逆効果ですよ」

そして、期末の売上が3億円……。売上目標の3億2千万円は未達成。

そして、期が変わり今年……。
今期の目標は前期と同じ3億2千万円。

果たして売上目標を達成できるでしょうか?

ラッキーパンチで大型案件を受注すれば達成するかもしれません。
しかし、“順当”にいけば未達成です。

ここで皆さんに問題です。

マネージャーBさんの会話の中で営業マネジメントの考え方に関する大きな間違いがあります。
それは何でしょう?

営業マネジメントの考え方に関する間違いとは

個人の営業力とは……
お客さんと関係を作る力も提案力も、やり方を教わればすぐにできるというものではありません。

提案は、話し方や聞き方、お客さんとの関係に左右されますし、お客さんの状況や性格に合わせて変えなければなりません。
仮に提案力が身についても、説得力や交渉がなければ売上に結びつきませんし、そもそも情報収集力がなければ提案に至りません。

また、営業に必要な情報やノウハウは、会社や個人に蓄積されていくものです。
さまざまな行動をすることで蓄積されるものです。

つまり、個人の営業力と情報力は、行動することで蓄積される力であり、蓄積された力が成果である売上につながるのです。

すぐには成果(売上)に結びつかない力。
徐々に蓄積される力であり、徐々に成果(売上)に結びつく力。

1年間を通して行う(徹底&継続する)ことで蓄積される力であり、来期以降の成果に結びつく力です。

1年間を通して行う(徹底&継続する)ことで来期に新たな個人の営業力、新たな情報やノウハウが蓄積されている……1年間の努力の結果、来期の営業が変わっているのです。

同じやり方、同じ行動をしていても、個人の営業力も会社や個人に蓄積されている情報やノウハウも変わりません。
その結果、来期も同じような営業活動を行い、同じように苦労するしかないのです。

マネージャーBさんの間違いは……
「一番大切なのは今期の売上目標ですよね?」

目の前の仕事ばかりに追われない営業計画を考える

会社は今期だけでなく、中長期的に発展しなければなりません。
その会社で働く営業にとって、今期の売上と同じく中長期的な来期以降の売上も大切なことです。
中長期的な来期以降の売上の方が大切かもしれません。
今期の売上目標を達成できなければ会社が倒産してしまうというなら別ですが……。

今期の売上だけを考えると、来期以降の成果に結びつく個人の営業力や情報・ノウハウにこだわらなくなります。
今期の売上に直結する目先の案件、目の前の仕事ばかりになる……目先の仕事に追われる。

「仕事が多くて大変」「忙しい」とよく聞きますが、目先の仕事に追われて中期的な視点で考えなければ、来期も「仕事が多くて大変」「忙しい」です。

個人の営業力、情報やノウハウが蓄積されると、売上が上がるだけでなく仕事も楽になります。

話し方や聞き方、お客さんとの関係が変われば、2回訪問していた商談が1回で済むようになる。
情報があれば今まで3回で説得していたお客さんを1回で説得できる。

商談の回数が2分の1、説得の回数が3分の1になったらどれだけ楽になるでしょう。

今期の売上目標を達成することも大切ですが、今期の売上ばかりでなく、来期以降のことも考えましょう。
そして、来期以降の売上のため、仕事を楽にするため、営業強化に取り組みましょう。

「アカウントプラン」も真剣に取り組んでいたら、来期の営業が変わっていたのです。
来期の苦労は今期の自分の行動が原因です。

多くの営業責任者やマネージャーが来期の営業計画を考えている時期かと思います。
来期の営業計画だけでなく、中期視点で再来期以降のための営業強化も考えましょう。

中期視点で営業強化を考える方法は……
「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は4月18日(月)更新予定です。

今月のクイズ(営業のクイズ)

ヒアリング
あなたは求人広告の営業です。
お客さんの組織図を見たら、新規事業本部ができていたのでミッションを聞いてみよう。
……どうやって聞く?

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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