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第100回 営業の成功体験は共有しても意味がない
営業の書籍、コンサルティング会社の多くが「成功体験の共有」と謳って(うたって)いる……。しかし、強化できない、売上が上がらない。営業担当者の説明内容や方法、話し方、顧客の状況や性格などさまざまな要因が絡み合う営業では、成功した人のやり方を共有しても成果は上がりません。今回は営業組織における成功体験の生かし方についてご紹介します。
営業の成功体験は共有しても意味がない
「成功体験の共有は大切」
とよく聞きますが、本当に大切なのでしょうか?
成功体験を共有して営業強化が進んだ会社も、営業力が身についた営業担当者もあまり見たことがありません。
みなさんはいかがでしょうか?
よくある成功体験の共有
営業の成功体験とは何なのか?
あるWeb会議システム会社で三人の営業担当者が新商品の販売を任されていました。
Web会議システムの画面上でさまざまな資料やデータを共有でき、営業会議で役に立つ商品です。
営業担当Aさんのお客さんは、人材紹介会社のセントコーポレーション(セント社)。
営業担当Bさんのお客さんは、食品メーカーのリーディングカンパニー(リーディング社)。
営業担当Cさんのお客さんは、日用品商社のアドバイス商事(アドバイス社)。
Aさんは三人の中でいつも営業成績が一番で、新商品も一番売れていました。
BさんとCさんはなかなか営業成績が伸びず、新商品も売れていない。
ある日、マネージャーが、
「Aさんが売れているのに、なぜBさんとCさんはマネしないんだ」
「Aさんも売れたときのやり方をBさんとCさんに教えて共有しなさい」
そして、BさんとCさんはAさんのやり方を教えてもらいました。
Aさんは、デモンストレーションを見てもらうことを重視して営業していました。
そのため、
- 商品説明は簡単にして「少しで良いのでデモンストレーションを見ていただけるお時間をください」とお願いしていました。
- お願いした後で、営業会議でどのような資料を使っているかを聞き出していました。
- そして、似たような資料を会社に戻ってから作り、その資料を使ったWeb会議システムのデモンストレーションを見せていました。
「午前中、午後、夕方のいつが一番忙しいかを聞いてから、忙しくない時間に15分ぐらい見てもらえないかとお願いしている」
「とにかく見てもらうことが大切なので多少強引にお願いしている」
とお願いする方法を教え、
「営業会議で使っている資料について、ExcelかPowerPointか、また、資料の内容や細かさを聞いている」
と聞き出す資料の内容を教え、
「15分のデモンストレーションを見せた後に、他社の事例を説明」
とデモンストレーションの進め方を教えました。
そして、BさんとCさんはAさんに教わったやり方をお客さんに実践。
その結果……
Bさんは、デモンストレーションを見てもらえるよう多少強引にお願いしてみると、それまでは楽しそうに話していたリーディング社の担当者に「必要ない」と不機嫌そうに断られてしまった。
Cさんは、アドバイス社にデモンストレーションを見てもらうことは約束してもらえたが、資料については教えてもらえず、デモンストレーションはWeb会議システムの画面を見せただけで終わってしまった。
成功体験の共有は、なぜ成果につながらないのか
なぜ、Aさんは成功したのに、BさんとCさんは失敗してしまったのでしょうか?
営業という仕事はさまざまな要因に影響される仕事です。
- 営業担当者の説明やヒアリングの内容や方法、その順番
- 営業担当者の話し方や聞き方、お客さんとの関係性
- お客さんの状況や課題
- お客さんの予算や計画
- お客さんの担当者の性格や考え方
- お客さんの担当者の環境や仕事の忙しさ
- お客さんの担当者の上司や決裁者、社内の人間関係
- 競合他社の提案や商品力
など……
そして、これらは複雑に絡み合って影響し合い、成果が変わってしまいます。
説明やヒアリングの内容や方法は、お客さんの状況や課題、お客さんの担当者の性格や考え方に影響され成果が変わり、当然、営業担当者の話し方や聞き方も影響します。
お客さんの状況や課題が全く同じで、お客さんの担当者の性格や考え方も全く同じ、そして、同じ性格で同じ話し方の営業担当者がマネをするのであれば有効でしょう。
しかし、そんなお客さん、そんな営業はいません。ほとんどが異なります。
状況や性格が異なる他のお客さんに対し、性格や話し方が異なる他の営業担当者がやり方をマネしても通用しません。
成功するために必要な共有とは
では、営業の成功体験にはどのような価値があるのでしょうか?
さまざまな要因に影響される営業では、成功したやり方の共有ではなく、「なぜ?」によって顧客を考えることに価値があるのです。
なぜ、デモンストレーションを見せることができたのか?
なぜ、営業会議で使っている資料を教えてもらうことができたのか?
なぜ、資料を使ったデモンストレーションを見せ、他社の事例を説明することで受注することができたのか?
この「なぜ?」によってお客さんを理解することで、必要なことや有効な営業方法を考えることができるのです。
「なぜ、成功したのか? → 営業担当者がうまく説明できた……だからマネしよう」ではなく、「なぜ、成功したのか? → お客さんの担当者と営業部の仲が良かったから」
BさんとCさんは、Aさんのマネをしてうまく説明することやデモンストレーションを見てもらうことよりも、営業部を紹介してもらうことの方が必要だったかもしれません。
営業方法の正解は、成功した人のやり方にはなく、お客さんの中にあるのです。
そのため、成功体験はやり方を共有するのではなく、「なぜ、成功したのか?」によってお客さんを理解することが大切なのです。
営業組織における成功体験をいかす方法は……
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次回は9月21日(火)更新予定です。
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- * セントリーディングHP>News>リリース情報 2020年5月18日