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第99回 「新人だから、まず商品説明」の教育は3年後にご案内営業しかできなくなる
考え方からマインド、スキル、人間性まで総合的な力が必要な営業では、初めの教育が大切。「いきなり提案営業はできないから、まずは商品説明を」と商品説明ばかり教えていると、ご案内営業が固まり提案営業ができなくなってしまいます。今回は、新入社員の営業教育に必要なことについてご紹介します。
「新人だから、まず商品説明」の教育は3年後にご案内営業しかできなくなる
新入社員の営業教育は初めが大切
新入社員の営業教育はどうしていますか?
新入社員が入ると会社や事業、商品について入社研修で教え、営業の教育は現場に配属されてからOJT。
その結果、ついた先輩によって、育たない、モチベーションが上がらない、辞めてしまう。
せっかくお金をかけて採用した貴重な営業社員に対し、人任せ、運任せの教育で良いのでしょうか?
考え方からマインド、スキル、人間性まで総合的な力が必要な営業では、初めの教育が大切です。
ある会社に10人の新入社員が入社しました。
4月から5月の2カ月間、人事部主催の新入社員研修
- 社会人のマナーや常識、日々の行動について
- 会社や組織の役割について
- 事業内容や仕事について
- 商品やサービス、基礎的な技術について
そして、6月から各部署に配属。
営業部には4人の新入社員が配属されてきました。
営業部に配属されると2日間の研修
- 営業部内のチームの説明
- 仕事内容やシステムの使い方
研修後、各チームに配属され先輩についてOJTがスタート。
新入社員Aさんは、先輩Bさんにつきました。
先輩Bさんと同行して……
Bさんの営業を見ながら商談や提案の進め方を学び、提案書や見積書の作成、受注登録を教えてもらいました。
報告書の作り方も教えてもらい営業会議にも参加しました。
先輩Bさんの指導
「営業の仕事は受注を獲得すること、売上を上げること」と営業の考え方について教わりました。
まず「商品説明をちゃんとできるようにならないと」と指導され、商品説明の練習。
あと「提案書や見積書を作るために必要な質問事項を覚えてヒアリングしないと」と質問事項を渡され丸暗記し、ヒアリングのロールプレイング。
Aさんの入社1年後
Aさんは独り立ちし、Bさんの指導を受けながら自分で営業をしていました。
Bさんには、お客さんに訪問する前に、競合商品より優れていることをアピールするために商品の説明方法を教えてもらっていました。
実績や事例、参考資料を使って説明する方法を。
ある日、見込み案件を獲得すると……
- 提案書を作るために技術部と打ち合わせ
- お客さんの決裁者が納得していないようなので説得方法を上司と相談
- 値引きして提案するため社内の承認をもらおうと経営企画部に説明
そして、毎日残業。
新入社員Aさん
「なんでいちいち経営企画部に説明しないといけないんですか。技術部の調整も営業がやらないといけないし、こんなんじゃ営業活動ができないですよ」
先輩Bさん
「うちは人が少ないからしょうがないんだよ」
「経営企画部の承認をもらわないと値引きできないし、技術部に相談しないと提案書を作れないだろ」
Aさんの入社4年目
一生懸命に受注を獲得しようと商品のしくみや強み、実績や事例を説明していました。
そして、見込み案件を獲得すると面倒くさいと思いながらも技術部や経営企画部との調整もしていました。
しかし、上司から
「なんで商品説明ばかりでお客さんの課題を聞いてこないんだ」
「お客さんがどうしたら納得してくれるかは、お客さんの立場で考えないと分からないだろ」
「日ごろから技術部や経営企画部と関係を作らないとダメだろ。だから社内調整や説得に時間がかかるんだよ」
と説教されてばかり。
ここで問題です。
入社4年目のAさんは、なぜ……
お客さんの課題を聞いてこないのか?
お客さんの立場で考えられないのか?
日ごろから技術部や経営企画部と関係を作ろうとしないのか?
視点は、日々の環境で身につくもの。
適切な考え方は、適切な行動のもとになるもの。
考え方ややり方なき行動の継続は、癖や習慣のように固まってしまうもの。
Aさんは入社してからどのように育てられたのでしょう?
教育内容と会社が求めるものとに乖離(かいり)が発生
Aさんが入社してからの3年間を振り返ってみると……
Aさんが教わってきたことは、
「商品説明をできるようにならないと」「提案書や見積書を作るために必要な質問事項を覚えてヒアリングしないと」「実績や事例、参考資料を使ってお客さんに説明する方法」
……全て、お客さんのことではなく、商品や自分の会社のこと。
「営業の仕事は売上を上げること」と漠然と言われて育ち、技術部や経営企画部の調整は、「人が少ないからしょうがない」「承認をもらわないと提案できない」「相談しないと提案書を作れない」
……社内調整は、積極的に取り組むことではなく、しょうがないからやること。
しかし、3年後の入社4年目に……
「お客さんの課題を聞いてこい」「お客さんの立場で考えろ」「技術部や経営企画部と関係を作れ」と説教されています。
自分の会社や商品の立場で考えること、商品を説明することばかり指導していたのに。
売上を上げることばかりで、社内調整の大切さを教えていないのに。
後輩を指導する立場になった入社5年目のAさんは、
同じように、後輩に対し自分の会社や商品の立場で考えること、商品を説明することばかり指導し、技術部や経営企画部の調整は「人が少ないからしょうがない」と教え、その後輩も次の後輩に……。
将来活躍できる人材を育てるために
営業として成長し活躍してもらうためには、初めに営業についての適正な考え方を教え、将来身につけてほしい営業方法に対し教育内容を考えなければなりません。
提案営業をできる人材になってもらいたいのであれば、提案営業をできる人材になるような教育を。
売上を上げるために社内調整に取り組む人材になってもらいたいのであれば、営業として積極的に社内調整に取り組む大切さに対する教育を。
営業は、初めに携わるときの考え方にその後の行動が影響され、その後の行動の積み重ねという経験により凝り固まってしまうものです。
新人だからお客さんの課題を考えさせることも難しいし、提案営業を教育してもできないから、まずは商品説明を……そのまま3年たったらご案内営業が凝り固まってしまい提案営業に変えられなくなってしまいます。
「新人だから」ではなく必要なことは教えましょう。
経験により凝り固まってしまう前に営業は初めの教育が大切なのです。
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- * セントリーディングHP>News>リリース情報 2020年5月18日
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