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第101回 “個人の力”で成果を上げる営業では社内で教育する体制を
情報収集力、提案力、交渉力、戦略策定力……この“個人の力”を強化することが営業強化の大前提です。皆さんの会社ではどうしていますか? 場数や経験で育ってきた先輩のOJT、営業教育会社の一般論や机上の研修……。今回は、営業で成果を左右する“個人の力”の教育についてご紹介します。
“個人の力”で成果を上げる営業では社内で教育する体制を
商談、提案、交渉、調整……、営業は個人の力で成果を上げる仕事。
個人の力があれば情報収集もできるし提案で説得もできる。
なければ、情報収集もできないし提案で説得もできない……。
皆さんの会社では、成果を上げるために必要な個人の力をどうやって強化していますか?
営業活動で必要な要素
今日の営業で売上を上げるために必要なことを並べてみました。
(1)営業社員の人数
(2)営業社員が活動しやすい環境
(3)商品企画部や技術部など、他の部門との連携や協力
(4)問い合わせや引き合いを増やすための販売促進
(5)営業活動を促進するためのパンフレットや営業ツール
(6)情報やノウハウを共有し組織的に促進できる環境
(7)営業部内で戦略や計画を共有し促進、サポートする体制
(8)営業社員のモチベーションを上げるための評価制度やコミュニケーション
(9)顧客を増やすためにアプローチ・コンタクトする力
(10)顧客に商品を理解させる力
(11)顧客の課題を聞き出す力
(12)顧客に提案を理解させる力
(13)予算や決裁者など顧客と交渉したり説得したりする力
(14)戦略やアクションプランを考え実行する力
(15)提案や戦略を考えるための情報を収集する力
(16)問題を把握し対策を考える力
(17)顧客と関係を作る力
営業で売上を上げるためにはこの(1)~(17)が“必要なこと”です。
皆さんの会社では、この17個の“必要なこと”をどうしていますか?
この17個の“必要なこと”を大別しますと、
(1)~(8)は、営業活動を促進するために必要なこと
(9)~(17)は、営業活動そのものに必要なこと
ほとんどの会社で「営業活動を促進するために必要なこと」は取り組んでいます。
- 採用や人事異動で営業社員を確保している
- モバイルを持たせて働きやすい環境を整備している
- 他の部門との会議や営業活動のサポート体制などを整備している
など。
では、「営業活動そのものに必要なこと」はどうしていますか?
営業で売上を上げるために最も必要なことは「営業活動そのものに必要なこと」。
いくら「営業活動を促進するために必要なこと」を整備しても「営業活動そのものに必要なこと」がなければ売上は上がりません。
なぜなら、営業は「営業活動そのものに必要なこと」である“個人の力”で成果を上げる仕事だからです。
いくら環境を整備しても、商品企画部がサポートしても……
- 営業担当者の顧客との話し方や聞き方で、収集できる情報が変わってしまう
- 収集できる情報が変われば、提案が変わってしまう
- 提案が変われば、成果や結果(受注獲得)も変わってしまう
営業は、個人のコミュニケーション力や情報収集力、提案力……が成果や結果を左右する仕事なのです。
必要なものをどうやって身につけるのか
皆さんの会社では、この成果や結果を左右する「営業活動そのものに必要なこと」をどうやって身につけようとしていますか?
ほとんどの会社で先輩のOJTばかり。でも、先輩も習ったことがない。
習ったことがなくてどうやって指導しているのでしょうか?
場数や経験を基に指導。
先輩社員個人の場数や経験に依存したOJTで「営業活動そのものに必要なこと」を身につけることができるのでしょうか?
そもそも「場数や経験」というものは過去のものです。過去にやってきた場数や経験。
しかし、今日の営業は変化しています。
変化した新しい営業が必要。
この変化した新しい営業に対し、場数や経験による過去の営業が通用するのでしょうか?
例えば、新規開拓営業。
私のところにも商品の良さをアピールしてアポイントを獲得しようと「安価で優れた商品です。お役に立つと思いますので紹介したい」という営業メールがたくさん届きます。
これは、顧客が似たようなものを求め、多くの顧客が商品を探しているという過去の時代に通用した営業です。
しかし、今は顧客の課題や解決策の選択肢も多く、投資を選別しながら行っている時代……過去の場数や経験で身につけた「安価で優れた商品です。紹介したい」というアプローチは通用しません。
そもそもこれから必要な新しい営業は、過去にやっていないのだから誰も身につけていません。
誰も身につけていない営業を場数や経験に依存した先輩社員のOJTで強化できるのでしょうか?
また、当たり前のことですが場数や経験とは自分の場数や経験です。自分が見て聞いて経験したものしか身につけられません。
営業社員が100人いても100人分の経験しか身につけられません。
しかし、皆さんの会社の他にさまざまな会社があります。
他の会社では他の経験があり、他のやり方があります。
世の中にはさまざまな営業の経験があり、さまざまなやり方があるのです。
自分、または自分の会社の過去の狭い経験の範囲で考え……
「お前が教えられないのか、ずっと営業を経験してきたじゃないか」と営業責任者やマネージャーに言っている経営者が多いのですが、無理です。
また、自分が経験し成果を上げてきたからと「俺が教えられる」と言っている営業責任者も多いのですが、これも限界があります。
その結果、「うちの営業社員は教えてもダメなんだよな」と営業社員のせいにする……。
“個人の力”を強化する営業教育
営業は、
- 基本は同じでも戦略や商品、顧客によって方法や対応が変わる仕事
- 顧客の状況、予算、決裁者の意向……、常に状況が変わり臨機応変な対応が必要な仕事
- 提案、交渉、引き合い、トラブル、社内調整……、雑多で流動的な環境で行う仕事
- 人の考え方やモチベーション、人間性が影響する仕事
雑多で流動的な環境で、個人の人間性が影響し、方法や対応が変わり、臨機応変な対応が必要な営業を教育するためには、社内で体系的かつ組織的に教育する体制が必要です。
何となく役に立つのではと漠然と思いながら、通用しない一般論や机上の研修を受講させている会社も多いです。しかし、お客さんから「予算が取れない」と言われた、そのときの指導が一番有効なのですから。
営業は個人の力で成果を上げる仕事です。
その力を教育しないということは、
「営業を強化しない」と言っていることと同じです。
「顧客の経営課題を把握しろ、経営課題から提案を考えろ」「顧客の予算を聞いてこい」
と指導している……。
「顧客の経営課題の調べ方や聞き出し方」「経営課題から提案を考える方法」を教えていますか?
「予算を聞き出す方法」を教えていますか?
「顧客の経営課題の調べ方や聞き出し方」「予算を聞き出す方法」を知っている営業担当者はどのくらいいるでしょうか?
いくら「営業活動を促進するために必要なこと」を取り組んでも「営業活動そのものに必要なこと」を取り組まなければ営業は強化できません。
“個人の力”を強化する営業教育は……
「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス
次回は10月18日(月)更新予定です。
今月のクイズ(営業のクイズ)
クロージング
あなたはノートパソコンの営業です。
お客さんの担当者に「予算がない」と言われ、上司の本部長に提案しても「予算がないから来期に検討」。
……さあ、どうする?
お知らせ
営業強化を考える会
さまざまな会社の営業責任者やマネージャー、営業担当者が集まり一緒に営業強化を考える
「営業強化を考える会」がスタートします。
11月10日(水) 営業強化を考える会/管理職編
11月17日(水) 営業強化を考える会/営業担当者編
営業強化セミナー
課題解決型営業や戦略営業に関する参加料無料のセミナーを開催しています。
10月8日(金)「営業改革セミナー」【Web】
営業改革、働き方改革、意識改革、オンライン営業、業務効率・生産性
10月15日(金)「課題解決型営業セミナー」【Web】
課題解決型営業プロセス、顧客課題・提案考察力、商談・提案力、顧客関係力
10月20日(水)「新規開拓営業セミナー」【Web】
新規開拓、ターゲット、アプローチ、潜在ニーズ発掘、商談・提案、計画・体制
10月27日(水)「営業マネジメントセミナー」【Web】
PDCAマネジメント、進捗状況・課題の把握、対策策定・指導、営業管理、営業会議