第91回 商品の価値は顧客によって変わるもの

商品案内営業から提案営業へ変わるために、商品の機能や強みばかりでなく顧客にとっての価値を考えよう。しかし、一生懸命に価値を考えて提案してもお客さんは「必要ない」。これは「顧客にとっての価値とは何か?」について理解していないことが原因です。今回は提案営業の前提となる顧客にとっての価値を考える方法についてお話しします。

商品の価値は顧客によって変わるもの

「商品の機能や強みばかりでなく、お客さんにとっての価値を考えなさい」
提案営業を進めようとしている営業現場でよく耳にします。

顧客にとっての商品の価値を考えさせているのに、なかなか提案営業が進まない……。

そもそも顧客にとっての価値とは何なのか?

営業担当Aさんに聞いてみると……。
「機能や強みばかりでなく顧客の価値を考えています。だから、いつも提案を考えています」

顧客の価値を考えた営業とは

ある日、Aさんがオフィス家具メーカー○○社に訪問する前に上司のBさんと訪問前の打ち合わせをしていました。

上司Bさん
「○○社にどの商品を紹介するの?」

営業担当Aさん
「最近テレワークを進めている会社が多いので、自宅にも設置できる小型プリンターを紹介しようと思っています」

Bさん
「なるほど、確かに引き合いも増えているからね。ところで、○○社にとって小型プリンターの価値は何?」

Aさん
「小さくて狭いところでも置けるプリンターなので、社員に配布して自宅に設置できることです。
社員が自宅でも印刷できるのでテレワークを進められること、つまり、社員の自宅に設置してテレワークを進められることです」

そして、お客さんに訪問しAさんが考えた価値を説明しました。

しかし、お客さんは
「当社は既にテレワークを進めていて、1週間のうち半分は在宅勤務にしていますが、半分は出社していて印刷しているので必要ないです」

せっかく機能や強みばかりでなく価値を考えて説明したのに、お客さんは「必要ないです」の一言。

果たして、「社員の自宅に設置してテレワークを進められること」は○○社にとっての価値なのでしょうか?

顧客の立場から価値を考える

○○社について調べてみると……、

  • 1週間のうち半分は在宅勤務、半分は出社させている
  • オフィス家具を売るだけでなく、レイアウトや働く環境まで提案している
  • 提案はコンサルティング部が作成して、営業部が提案している
  • オフィス家具だけでなく、レイアウトや働く環境も組み込んだ複雑な提案をしている
  • withコロナにより、事務所のレイアウトや働く環境の見直しを検討している顧客が増えている
  • 競合の△△社や□□社も同様に、レイアウトや働く環境の提案を強化している

ここで問題です。
○○社にとって自宅に設置できる小型プリンターの価値は?

Aさんは「社員の自宅に設置してテレワークを進められること」と考えましたが、既に「1週間のうち半分は在宅勤務、半分は出社」とテレワークが進んでいます。

つまり、Aさんが考えたことは顧客(○○社)にとっての価値ではないということです。

調べた情報から○○社の価値を考えてみると……、

「会社以外に自宅でも印刷できる」ことで、
「コンサルティング部が直前に修正しても、営業部がすぐに反映した提案書を印刷し、顧客に提案できる」
その結果、「複雑な提案の精度を上げることができ、競合の△△社や□□社とのコンペに勝つことができる」
そして、「需要が拡大しているレイアウトの見直しや、働く環境に対し事業を拡大できる」

つまり、○○社にとっての価値は「直前に修正してもすぐに反映し顧客に提案でき、複雑な提案の精度を上げることで、競合他社に先行し、需要が拡大しているレイアウトの見直しや働く環境に対し事業を拡大できる」ことです。

顧客ごとに異なる価値を提案する

市場環境の変化や高度化・複雑化が進んでいる今日、顧客の戦略や事業、業務が複雑になり多様化しています。
すると、顧客の課題も顧客によって異なり、同じ商品でも顧客がすることやできること、求められるメリットや利益も顧客によって異なります。

顧客にとっての価値を考えるときは、顧客ごとに考えなくてはならないのです。

「社員の自宅に設置してテレワークを進められること」はどの顧客にも当てはまる一般的なものであり、顧客にとっての価値を考えていることにはなりません。

提案営業や課題解決型営業は、顧客ごとに異なる課題に対して顧客ごとに異なる価値を提案する営業です。
この提案営業や課題解決型営業にとって、顧客ごとに異なる価値を考えているかが前提になります。

皆さんが考えた商品の価値はほかの顧客にも当てはまるものになっていませんか?
考えた価値がほかの顧客にも当てはまるものだったら、それは顧客にとっての価値ではありません。

顧客にとっての価値を考える方法は……、
「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は12月21日(月)更新予定です。

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  • * セントリーディングHP>News>リリース情報 2020年5月18日

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
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