第90回 顧客の経営課題はCFTの階層で考える

課題解決型営業や戦略営業は顧客の課題を考えることから始める営業です。自分の会社のことじゃないお客さんの課題は考えられない……。顧客の課題を考えるためには経営課題や戦略を理解することが大切です。今回は経営課題や戦略を理解する方法についてお話しします。

顧客の経営課題はCFTの階層で考える

お客さんから下記のような経営課題を聞きました。
「競争が激しいため、新商品の開発力を強化する」

営業担当者は、
「うちの商品はWeb会議システムだから関係ない」
「商品開発部は拠点が一カ所に集まっているから遠隔で会議する必要もないだろうし……」

せっかく経営課題を聞いても……、提案したい課題を考えられない、関係ないと流してしまう。

経営課題が変われば、さまざまな課題が生まれます。

戦略や業務フロー、情報管理や組織間の連携など……、Web会議システムに関係するコミュニケーションの課題も生まれていることでしょう。

経営課題の関係性

ここで皆さんに問題です。

ある会社のIR資料を見たら下の四つの経営課題が書いてありました。

  1. 業務効率を促進しコストを低減
  2. 営業体制の増強と連携強化を進め新商品の提案を促進
  3. 既存事業依存から脱却し新規事業でマーケットを拡大
  4. 社内コミュニケーションの活性化により製販の連携を強化

この四つの経営課題の関係性は?

同じ会社の経営課題であり、1~4はそれぞれ別のものではなく、関係性があります。
最終的に実現したい経営課題、その経営課題を実現するために必要な経営課題……。
上の1~4の経営課題に対し関係性を考えて解決していくべき順番に並べてみてください。

経営課題は階層で理解するもの

皆さんの会社でも経営陣が期初や期末に一年の経営課題を考え、戦略や施策を考えていることでしょう。その経営課題を考えるときには順番があります。

まずは、全社として大きな方針や経営課題を考えます。
そして、その全社の方針や経営課題に対し、各機能(部門)の課題に落とし込みます。
最後に、各機能(部門)の課題を解決するために必要な各テーマの課題に落とし込みます。

つまり、

全社的経営課題(Company Problem)

機能別経営課題(Function Problem)

テーマ別経営課題(Theme Problem)

の順番に落とされていきます。

例えば……、

全社的経営課題として「既存事業を強化しシェアを拡大」があります。

この全社的経営課題を実現するために、
機能別経営課題として、生産してから消費者により多くの商品を、より短期間で届けられるよう「生産・物流体制を改善し商品提供力を強化」。

そして、機能別経営課題を実現するために、
テーマ別経営課題として、工場の場所や生産方法を改善しようと「生産体制を見直す」また、配送ルートの調整や見直しができるよう「物流情報の管理方法を改善」があります。

皆さんが提案したいシステムや設備、部品や資材、採用や教育、広告やプロモーション……。これらに関する現場課題を考えるためには、経営課題をCFTの階層で考え、全体的に理解する必要があります。

例えば、顧客情報管理システムを提案したいとき……、
機能別経営課題の「生産・物流体制を改善し商品提供力を強化」だけ知っても、関係する課題は考えにくいのですが、テーマ別経営課題の「物流情報の管理方法を改善」まで考えると、配送先である「顧客情報」の管理方法を改善する必要があるかもしれないと考えることができるのです。

経営課題をCTFの階層にあてはめた例

先ほどの質問の答えですが、顧客の経営課題をCFTの階層にあてはめて考えると……、

1と4 → 2 → 3

になります。

一番実現したい全社的経営課題(Company Problem)は、

3:既存事業依存から脱却し新規事業でマーケットを拡大

そのための機能別経営課題(Function Problem)は、

2:営業体制の増強と連携強化を進め新商品の提案を促進

機能別経営課題を実現するためのテーマ別経営課題(Theme Problem)として、

1:業務効率を促進しコストを低減
4:社内コミュニケーションの活性化により製販の連携を強化

つまり、この会社の経営課題は……、

1:コストを削減し、営業人員を増やせる状況にする
4:製販の連携を強化し、営業と製造や技術が連携して提案できるようにする

この1と4により、

2:営業体制の増強と連携強化を進め新商品の提案を促進する

そして、

3:既存事業依存から脱却し新規事業でマーケットを拡大する

ということになります。

課題解決型営業の重要性

経営課題から提案したい課題を考えられない原因の一つは経営課題を部分的にしか理解していないことです。

課題解決型営業は、顧客の課題と解決策を提案する営業です。「何か課題はありませんか?」と聞くのではなく「○○○という課題があるんじゃないですか?」と伝え理解させる営業。

「○○○という課題があるんじゃないですか?」と伝えるためには、あらかじめ「○○○」を考えておかなければなりません。あらかじめ顧客の課題を考えることは、課題解決型営業の前提です。

そして、顧客の課題を自ら考えるためには、その課題が生まれる原因である経営課題を理解することが大切です。

ご案内営業や御用聞き営業ではなく、課題解決型営業をやるのであれば……、顧客の経営課題はCFTの階層で明確かつ全体的に理解しましょう。

経営課題のCFTの詳細は……、
「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は11月16日(月)更新予定です。

今月の3択クイズ(営業のクイズ)

教育・指導
あなたのチームは来月発売する新商品の営業を担当することになりました。
部下に新商品も提案させないといけない。
……どのように指導する?

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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