第85回 目に見える問題でなく隠れている原因が営業強化を実現する

提案力や戦略営業、情報共有、マネジメントや組織営業……営業強化を進めてもうまくいかない……。情報共有は、管理方法や指導だけでなく、営業戦略やプロセス、個人の情報収集力などさまざまなことを考えて強化するものです。しかし、「情報を管理し共有する」という目に見える問題しか見ずにうまくいかない……。今回は、営業強化を考える方法についてお話しします。

目に見える問題でなく隠れている原因が営業強化を実現する

課題解決型営業、戦略営業、組織的営業、マネジメントや指導、情報やノウハウの共有……多くの会社で営業強化に取り組んでいます。
しかし、うまくいかない……。

皆さんの会社はいかがでしょう?

営業強化取り組み事例

ある会社の営業責任者Aさんが営業強化に取り組んでいました。

Aさん
「うちの営業はノウハウや情報を共有できていない。個人がさまざまなノウハウや情報を持っているのに、共有できていないから他の人が使えない」

Aさんは、営業強化にノウハウや情報の共有が必要と考え、
「一人一人が持っているノウハウや情報を出させて、共有し、他の人が活用できる環境を整備しよう」

提案書は、共有して他の人が活用できるように、業界別・商品別にフォルダーを作り、提案後に結果を記入して保存させ、他の人が探し活用しやすいようにした。

顧客のニーズや案件情報は、営業管理システムに項目を作り、結果以外にも収集した情報を項目別に登録させ、業界や商品別に検索できるようにした。

誰が何を悩んでいるか把握できるように、営業プロセスを整理し誰が見ても進捗が分かるようにし、また、顧客ごとに重要度をチェックするフラグを付けて、重要な顧客の進捗を共有できるようにした。

そして、1年後……。

提案書は、フォルダーに保存されているけれど、誰も他の人の提案書を見ていない、使っていない。

営業管理システムの「ニーズ」の項目は、「失注、昨年他社製品を導入したためニーズなし」と結果とその理由ばかりで、どのようなニーズがあったのかという参考になる情報が入っていない。

営業プロセスに対する進捗も、営業会議前にあわてて登録し、会議でマネージャーがチェックしているぐらいで今までと変わっていない。

いろいろ考えて取り組みましたが、ノウハウや情報の共有は進みませんでした。

なぜ期待した成果が出ないのか?

ここで皆さんに問題です。
「何がいけなかったのでしょうか?」
ノウハウや情報の共有が進まなかった原因を考えられるだけ挙げてみてください。

  • 営業管理システムの使い勝手が悪い
  • 仕事が忙しくて登録したり、検索したり、探したりする時間がない
  • 営業社員の体質や意識が低い

と営業責任者Aさんは判断し、

  • 営業管理システムの使い勝手を改善しよう
  • 社外でも仕事ができるようにモバイルを導入しよう

しかし、変わらない、ノウハウや情報の共有が進まない。そして「うちの社員は意識が低いから無理」と諦めてしまいました。

「営業管理システムの使い勝手」「仕事の忙しさ」「営業社員の体質や意識」
いずれも不正解です。

情報共有できない原因を探る

「営業社員の体質や意識が低い」といいますが、どのような意識?
……情報共有の意識。

では、なぜ情報共有の意識が低い?
……情報共有の重要性が分かっていない。

では、なぜ情報共有が重要?
……個人の力に依存するのでなく組織で営業活動を進めないといけないから。

では、なぜ組織で営業活動を進めないといけない?
今まで個人の力に依存してやってきたのになぜ?
……営業が難しくなってきているから。

なぜ、営業が難しくなっている?
……顧客のニーズが多様化し異なるので、顧客ごとに提案を考えないといけないから(戦略や営業方法のこと)。

「情報を登録しない」といいますが、登録しない本当の理由は?
……課題やニーズを聞いていない。

なぜ、聞いていない?
……聞きにくるよう指導しているが意識が低い。

営業社員に聞いてみると「顧客に教えてもらえない」「聞くタイミングがなかった」
……意識の問題よりヒアリング力や商談の組み立て方の問題(営業スキルやシナリオのこと)。

ノウハウや情報を共有できていない本当の原因は、戦略や営業方法の理解、営業社員のスキルやシナリオでした。しかし、進めた取り組みは「情報管理・共有の仕組み」と「情報を共有しろという指導」。

情報共有を進めるためには、情報共有が必要な理由である戦略や営業方法を理解させないといけなかった。そして、情報収集するためのシナリオを教えスキルを身につけさせないといけなかった。

ほとんどの会社では、営業強化に対して目に見える問題を直接的に解決しようとしています。 しかし、営業の一つ一つの問題は、さまざまな要因が絡み生じるもので、その全ての中から原因を探し解決しなくてはなりません。

アプローチや提案、顧客との関係力、トラブル対応、マネジメントや指導、情報管理……、営業の全ての問題は、営業戦略や社員のスキル、営業ツール……、さまざまなところに原因があり、それらを探し解決しなければなりません。

営業会議を見ていると顧客のニーズを聞けないという営業社員に、ヒアリング方法や情報を聞いてくるようにという直接的な指導ばかりが目につきます。営業ツールであるパンフレットについて議論している営業会議は見当たりません。

その結果、顧客のニーズを聞けないという課題が解決せず、毎週・毎月同じ課題を話し合っている……。パンフレットの構成や内容を変えると、収集できる顧客のニーズや情報も変わってくるものです。

  • 目に見える一部しか改善せず、ほかに必要なこと、有効なことに気付かず改善していない
  • 目に見える表面的な問題しか見ず、本当の原因を見ないため改善していない

営業強化はこの二つが原因で進まないことが多い……。

営業強化は「情報を共有した=他の人の情報を活用する」という単純なものではありません。

営業強化を考えるときは、目に見える問題だけではなく、営業戦略や社員のスキル、営業ツール……、全てを考えましょう。

営業の問題を見つけたら、目に見える直接的な問題を解決するのではなく、営業戦略や社員のスキル、営業ツール……、さまざまな要因から原因を探しましょう。

「営業社員の人数が足りない」という問題を直接的に考えて「採用する」。しかし、採用しても戦力にならない、辞めてしまうという会社が多く見受けられます。

営業強化を考えるための要件と方法は……。
営業のアドバイス

次回は6月15日(月)更新予定です。

今月の3択クイズ(営業のクイズ)

顧客の知識・情報

「提案を考えるなら、お客さんの戦略や事業内容も把握しないと」と、上司に指導された。
……どうやってお客さんの情報を集める?

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
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