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第44回 営業で最も重要なことは顧客視点……営業は「想う」が欠けている
20年近く多くの会社の営業に関わってきてこう思う…営業は間違えている。
営業とは何か?…この質問を営業に携わっている方に聞いてみると、
「売上を上げる仕事、受注を獲得する仕事」
「商品や自分の会社の良さを理解してもらう仕事」
「顧客の要望や課題を把握する仕事」
……
そして、一生懸命に、
- 売上を上げよう、受注を獲得しようとしている
- 商品知識や技術的な知識をつけようとしている
- 顧客に商品を理解してもらおうとしている
- 顧客の要望を聞こうとしている
……
顧客は自分のために商品を購入するのです。
そこには悩み(課題)があり、その悩みを解決したいという気持ちがあります。
その悩みがあり、解決したいという気持ちがある顧客は、商品を売ろう、売上を上げようとばかり思っている営業に対し自分のことを真剣に考えてくれているとは思わない。
営業が、顧客は何を悩んでいるのか、どうしたら喜ぶかを一生懸命に考えるから顧客は信頼するのです。
先日このようなことがありました。
ある会社の営業の方が当社に「営業管理のシステム」を提案してきました。
当社は営業社員も少なく、Excelでの管理、個別管理で対応できています。
しかし、一生懸命に商品を説明し使いやすい、安いとアピール、その後、断っているのに「ぜひご検討ください」と連絡が来る…。
営業社員が少ないといっても悩みがないわけではありません。
少人数の営業組織であり個人の負荷が大きく、業務環境やコミュニケーションの問題、個人のモチベーションの問題があります。
しかし、これらの悩みは聞き流して、一生懸命に商品のアピールをしてくる…。
意外とこういう営業社員は多いものです。
なぜ、顧客の悩みを聞き流すのでしょうか?
なぜ、顧客の悩みを考えないのでしょうか?
顧客は悩みがあり、解決したいという気持ちがあるから商品を購入するのです。
そして、一生懸命に自分の悩みを考え、どうしたら解決できるかを考えてくれるから信頼するのです。
顧客の状況が分かり、何を悩んでいるか、何を重視しているかが分かると適切な商談や提案、交渉ができる…。
逆に分からないと適切な営業はできない…。
悩みがある顧客に対し解決策(商品)を提供する営業力の前提は、もっと人間の本質的な力です。
相手のことを考え、そして相手を何とかしてあげたいと想う力。
この力が顧客の悩みを理解し、解決へと導き、商品を売ることにつながります。その結果、売上や利益が上がるのです。
多くの会社の営業を見てきて「相手を考え」「相手を何とかしてあげたい」が乏しい気がしています。
なぜ、「相手を考え」「相手を何とかしてあげたい」が乏しいのでしょうか?
営業にとって顧客の中味は見えないもの。
自分の会社のことは所属しているためさまざまなものが見えています。職場の環境、雰囲気、周囲の人、業務内容や会議、社内調整…。
しかし、顧客のことは、いくらたくさん質問しても、いくら多くの情報を収集しても顧客の中で仕事をしているわけではないため見えているものはほんの一部です。
ほとんど見えない、ほんの一部しか見えない相手のことを考え、何とかしてあげたいと想うためには「想像」が必要なのです。
「想」という字は、「相」と「心」から成り立っています。
つまり、「相手の心」。
相手の身なりや行動、言動は見えるが、心は見えない。
この心を知るためには想像する(想う)しかないのです。
ほとんど見えない、ほんの一部しか見えない顧客のことを考え、何とかしたいと想い課題解決へと導く営業の力はこの「(相手の心を)想う」力が前提なのです。
私も多くの会社の営業教育に携わっていますが、
顧客を知る方法や顧客の課題(悩み)を想定(想像)する方法、そしてその顧客の状況や課題を一緒に考え理解しあう方法をプロセスや手法、テクニックとして教えているだけです。
商談や提案、顧客との交渉、新規アプローチ、紹介の獲得…。
全て、どのような状況でどのような悩みを抱えているのだろうという「(相手の心を)想う」から始まるのです。
しかし、現実は、商品知識・情報の習得、売上や営業進捗管理、営業方法や業務内容、社内の報告や調整…と自分の会社、自分のことばかりで、顧客を調べたり、考えるたり時間が少ない。いや、少ないのではなくほとんど顧客を調べたり考えたりしていない…。
営業とは、悩んでいる相手の悩みを解決して売上を上げる仕事。
顧客のことを考え、何とかしてあげたいという「相手の心を想う」力により、悩んでいる相手の悩みを解決してあげる素晴らしい仕事です。
この「相手の心を想う」営業にこだわり、プライドを持つべきです。
そのためには、商品知識や情報・ナレッジの共有、行動量も重要ですが、顧客を知り、考えることにもっと努力や時間を費やすべきではないでしょうか?
売上に追われて、「顧客の心を想う」を忘れていませんか?
「顧客の心を想う」が結果的に売上を伸ばすのです。
そして、営業という仕事の喜びが大きくなるでしょう。
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