ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第3回 顧客の課題とは? …顧客の課題は営業が理解させるもの
【営業における顧客課題の5つのPOINT】
- 課題とは、解決する必要のある問題
- 課題には、課題が生まれる原因や現状、そして解決する必要性が存在する
- どの企業、どの部門でもさまざまな課題を抱えており、課題がないということはありえない
- どの企業でも、課題には優先順位がある
- 課題は、人や役割、立場により知識・認識・意識が異なる
~ 「ソリューション」という名の御用聞き営業 ~
仕事柄、さまざまな会社の営業責任者、営業社員の方々とお話しする機会が多いのですが、意外と「うちの会社はソリューション営業をやっている」という方が多い。
しかし、営業社員からよくこんな言葉を耳にします。
「うちの会社は商品力が弱い…」
「最近は商品や提案で差別化できない…」
「うちは価格が高いから勝てない…」
実際に営業同行してみると、顧客から課題(何をしたいか)を聞いただけで、商品を持っていったり、顧客の要望に合わせて提案を作成したりしていることがほとんど。
顧客に対するソリューション=課題解決は2つ組み合わせで成り立ちます。
【1】 課題の明確化
「何が課題なのか?」「なぜこの課題が存在するのか?」「本当に解決すべき課題なのか?」「解決したときにどんな効果があるのか?」を把握し、明確化し、理解させる。
【2】 解決策の構築
商品や技術、資産で解決策を構築し、その解決策や実現性を理解させ、実現する。
顧客の課題解決に対して、【2】の「解決策の構築」は商品力や技術力によるものであり、営業において最も重要かつ営業力でしか成し得ないものは【1】の「課題の明確化」です。
なぜなら、顧客の課題解決を最も左右するものは、課題だけでなく起因する原因や現状を考え知ることであり、解決する必要性や解決したときの効果を理解することだからです。解決策はその後の手段に過ぎないのです。
~ 顧客の課題解決プロセス「PSUMA」(シューマ)
…「AIDMA」は商品認知型の理論 ~
顧客の購買プロセスとして「AIDMA」という理論があります。最近ではインターネット環境の浸透により「AISAS」とも言われています。
しかし、顧客志向が重視されている今日の営業においてこのプロセス「A=認知(させる)、I=興味(を持たせる)、D=欲求(を持たせる)、M=記憶(させる)、A=模索・選択(させる)」では通用しません。商品案内型の営業になってしまいます。
課題を発掘し、解決策を理解させ、課題解決=効果を実現する営業では、顧客の課題解決プロセス「P(Present)、S(Sense)、U(Understand)、M(Motive)、A(Action)」を基準に考えなくてはなりません。
なぜなら、顧客は必ず、様々な現状の中で(Present)、支障や不都合を感じ(Sense)、課題であることを理解し(Understand)、解決しないといけないという動機を持ち(Motive)、解決策を模索する(Action)という5段階を経て課題を解決していくからです。
この「PSUMA」である顧客の課題解決プロセスを把握し、誘導することが課題解決型営業なのです。
* 顧客の課題解決プロセス「PSUMA」:http://www.centleading.co.jp/bizteria2.pdf
~ 課題や解決策を的確に把握し考えられる顧客はいない ~
多くの営業社員は、顧客担当者から聞いたこと、得た情報を中心に、また信じて営業行為をしています。また、顧客の課題は顧客担当者に教えてもらおうとしています。
しかし、グローバル化、少子高齢化、競争激化、商品の高機能化、情報化社会…と世の中が複雑化し、各企業(顧客)の戦略や施策が複雑化し、各部門による分業化・専門化が進んでいる中で課題を的確に把握している人はいるのでしょうか。
経営者であっても現場の状況を的確に把握していない、購買部門は営業や企画部門などを把握していない、担当者は経営戦略や経営陣の考えまで的確に把握していない。
営業はその把握していない担当者に教えてもらおう、また聞いたことを中心に考えようとしているのです。
営業において、顧客の課題とは教えてもらうものではなく、営業自身が「PSUMA」を基準に顧客と一緒に考え、顧客担当者や顧客企業に理解させ、明確化させるものなのです。