第19回 『顧客の二つの課題』 …そもそも課題に対する理解を間違えている

私が各企業で営業研修や指導をしている中で、課題解決型営業に対して多くの営業社員が勘違いしている、または曖昧(あいまい)に理解していることがあります。

それは、顧客の課題に対する理解・・・

以前にもお話しましたが、ほとんどの企業が商品案内型や御用聞き型から課題解決型営業へ変革しようとし、「顧客の課題」を重視しています。

セミナーなどの販促や営業で顧客に課題を気づかせよう、理解させようとし・・・
営業活動の中で顧客の課題を把握しようとし・・・
課題に対しての提案を強化している・・・

しかし、
課題を把握・発掘し、課題と解決策を理解させることがなかなかできない・・・
なぜでしょう?

根本的に「顧客の課題」に対する見方や考え方が間違えているからです。

ここでちょっと私が営業研修をしている中の事例をお話ししましょう。
あるWeb会議システムを売っている営業社員に質問してみました。
「この顧客の課題を把握していますか?その課題は何ですか?」
すると営業社員は・・・
「課題はお客さんから聞けています」
「いま使っているWeb会議はちょこちょこ途切れてしまうことです」

顧客は「Web会議がちょこちょこ途切れてしまう」という課題がわかっているのに買い換えてくれない。
なぜなのか?

ここで「予算がないから」と結論付けてしまっている営業社員が多い・・・
この案件を進めるうえで「予算がない」ということが本当の支障なのでしょうか?
そもそも「ちょくちょく途切れてしまう」という課題は顧客にとって何なのか?

~ 『顧客の二つの課題』 ~
・・・「本質的な課題」(上位の課題)と「解決策を実現するための課題」(下位の課題)

顧客には必ず二つの課題が存在します。
それは、「本質的な課題」と「解決策を実現するための課題」

【1】「本質的な課題」

この本質的な課題とは顧客が本来やりたいことに対する課題。
これは、顧客の会社の戦略や事業・各部門の計画や戦略の中にあるものであり、それを実現するための施策や業務方法などの課題です。
例えば、日本で一次加工を行い、中国で二次加工を行っているメーカーであれば、日本と中国の生産計画や工程・進捗を密に共有できないと増産計画に影響する、また在庫リスクが発生する・・・
この「日本と中国の生産計画や工程・進捗を密に共有しないといけない」ということがこのメーカーにとっての本質的な課題です。

【2】「解決策を実現するための課題」

多くの営業社員が考え、把握し、顧客と話をしているのはこの「解決策を実現するための課題」ばかりです。
しかし、この課題とは、上記【1】の「本質的な課題」を解決するための課題です。
つまり、「日本と中国の生産計画や工程・進捗を密に共有しないといけない」
という課題を解決するために、ちゃんと会議ができる遠隔会議が必要であり、「Web会議がちょくちょく途切れてしまう」という課題を解決しようとするのです。

~ 『顧客の二つの課題』の使い方』 ~

顧客が「日本と中国の生産計画や工程・進捗を密に共有しないといけない」
という課題を解決するために、ちゃんと会議ができる遠隔会議が必要であり、「Web会議がちょくちょく途切れてしまう」という課題を解決しようとするのであれば営業活動の中で『顧客の二つの課題』に対する明確な使い方があります。

【1】「本質的な課題」は課題を検討させる材料

営業活動の中で、課題を理解させる、検討させる、予算を確保させるという活動は「=「本質的な課題」」を理解させるということ。
つまり、「日本と中国の生産計画や工程・進捗を密に共有しないといけない」ということを理解させることが顧客に課題を理解させ、検討させ、予算を確保させる活動なのです。

【2】「解決策を実現するための課題」は実現性を理解させる材料

この「解決策を実現するための課題」は顧客が具体的に検討を始めたときに理解させ、提案する商品の適合性・有効性を理解させるものです。
つまり、【1】の「密に共有しないといけない」という課題を明確に理解させ、具体的に検討を始めさせたあとに「Web会議がちょくちょく途切れてしまう」という課題の原因である通信環境や現在導入している他社のWeb会議の問題点を理解させ、自社の商品を提案することで「密に共有しないといけない」という本質的な課題に対する解決策が実現できるということを理解させることができるのです。
そして受注を獲得・・・

最近、営業活動の中で上位の課題や顧客の経営や事業戦略から抑えようという動きをしている企業が増えてきています。
ただ、営業現場ではできていない・・・
これは、営業現場で何が「本質的な課題」で何が「解決策を実現するための課題」なのかを明確化していない(明確に分けて考えさせていない)、そして『顧客の二つの課題』の営業活動における使い方を理解していないことが根本的な原因です。

そのため、一生懸命「顧客の事業や業務を抑えろ」と指導しても営業社員に聞いてみると・・・
「課題はお客さんから聞けています」
「いま使っているWeb会議はちょくちょく途切れてしまうことです」
という返答がくるのです。

意外とほとんどの営業社員が「本質的な課題」を把握しない、考えないで、「解決策を実現するための課題」ばかりを顧客担当者と話している・・・
これでは、課題を理解させ、検討させ、予算を確保させることはできないでしょう。

次回は6月5日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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