第88回 顧客の経営課題はテーマでなく中身を考える

経営課題は顧客が最も解決したいこと、実現したいこと。課題解決型営業や戦略営業にとっておさえなければならないことです。しかし顧客から経営課題を聞いても、提案を考えられない、決裁者や予算の対策、戦略を考えられない……。今回は、顧客の経営課題を考え、理解する方法についてご紹介します。

顧客の経営課題はテーマでなく中身を考える

課題解決型営業や戦略営業は顧客の情報から考える営業。顧客の情報の中で、顧客が最も解決したいこと、実現したいことである経営課題を理解することは大切です。

しかし、顧客の要望は把握できても、経営課題を把握できない、考えられない。
そのため、課題や提案を考えられない、決裁者を説得する方法を考えられない……。

ある営業担当者の例

スマートフォンの営業を担当しているAさんが、オフィス家具メーカー〇〇社のアカウントプラン(顧客から受注を獲得するための計画や戦略)を作成するために経営課題を把握するよう上司Bさんに指導されました。

Bさん

「顧客の課題を考えるためには、経営課題を理解することが必要だし、決裁者の説得や予算対策を考えるためにも必要だから、〇〇社の経営課題をおさえなさい」

そして、Aさんが〇〇社に訪問し経営課題を聞いてみると、顧客担当者は

「今期は営業の提案力を強化しないといけないんです」
「今まではオフィス家具の販売中心だったので、カタログで商品を紹介するか、オフィス家具の機能やサイズ、量などの要望を聞いて対応するばかりで、顧客との関係を作ることはできるんだけど提案ができていなくて……」

そして、Aさんは会社に戻りアカウントプランを作成するために、〇〇社のスマートフォンに関する課題を考えようとしました。
しかし、「営業の提案力を強化」という経営課題に対して、何かスマートフォンに関する課題があるのだろうか??? 分からない……。

そこで、上司のBさんに相談しました。

Aさん
「〇〇社から『今期は営業の提案力を強化しないといけない』と聞いてきたんですが、スマートフォンに関する課題を考えられなくて……」

Bさん
「その前に、営業の提案力を強化して〇〇社は何をしたいの?」

Aさん
「……、売上を上げたい」

Bさん
「売上を上げたいじゃなくて、もっと具体的に考えていることがあるだろう」

Aさん
「……、分かりません」

「営業の提案力を強化」とはどういうことか

ここで、問題です。

なぜ、Aさんは、経営課題を聞いてきたのに、スマートフォンに関する課題を考えられなかったのでしょうか?

顧客担当者は「営業の提案力を強化しないといけない」と言っていますが、〇〇社にとって「営業の提案力を強化」とはどういうこと?

新商品や新技術の提案なのか?
であれば、新商品や新技術の提案とはどのような提案なのか?

オフィス家具だけでなく、オフィス全体のレイアウトや使い方の提案なのか?
であれば、レイアウトや使い方の提案とはどのような提案なのか?

これを考えることができなければ、スマートフォンに関する課題を考えることができません。

例えば、レイアウトや使い方の提案だとすると……、

多くの会社で進めているようなテレワークにあわせてオフィスを狭くしフリーアドレスを導入しても、従業員が効率的に業務を行え、上司・部下・チーム間でコミュニケーションできるレイアウトや家具の提案を強化しないといけない。

すると、コンサルティング部や設計部との連携を強化しようとしているかもしれません。

今までのオフィス家具の販売と異なり、
「営業部が、コンサルティング部や設計部と外出先でも電話やメールで頻繁にコミュニケーションを取れる環境が必要」という課題を抱えているかもしれません。

顧客から経営課題を聞いたり、調べたりしたときは中身を考えることが大切です。
つまり、「営業の提案力を強化」とは「どういうこと?」を考える。
「営業の提案力を強化」と聞いて、顧客を想像しその中身である具体的な内容を考えなければなりません。

そして、その中身に対して、なぜ「営業の提案力を強化」が必要なのかを考えるのです。

「営業の提案力を強化」とはテーマです。
テーマだけ分かっていても中身が分からなければ経営課題を理解することも、考えることも、アカウントプランや営業活動に落とし込むこともできません。

Aさんは「営業の提案力を強化しないといない」という経営課題のテーマを聞いただけで理解したつもりになっていました。

経営課題を理解する

その結果、

  • 提案したいスマートフォンに関する課題を考えられない
  • 提案力を強化しないといけない理由(〇〇社にとっての重要性)を考えられない

ほかにも、「工場の生産性を向上」「組織間の連携を強化」「人材の質の向上と定着化を促進」「新領域への拡大」「商品の高度化」など……、テーマを聞いただけで理解したつもりになり、「経営課題を聞いてきました」と満足している営業担当者が多く見受けられます。

課題解決型営業は、顧客の要望を聞いてくる営業と異なり、自ら課題を考え提案する営業です。

戦略営業は、顧客の決裁者が重要視していることや予算を考え、そして対策を考える営業です。

この課題解決型営業、戦略営業にとって顧客が最も解決したいこと、実現したいことである経営課題を理解することは大切です。

顧客から経営課題のテーマを聞いたら「どういうこと?」と中身を聞きましょう。
また、「どういうこと?」と具体的な内容を考えましょう。

「提案力を強化」「工場の生産性を向上」「組織間の連携を強化」「人材の質の向上と定着化を促進」「新領域への事業拡大」「商品の高度化」など……は中身が大切なのです。

説得力を強化するために話し方を改善する方法は……、
「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は9月23日(水)更新予定です。

今月の3択クイズ(営業のクイズ)

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
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