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第35回 営業の成果と喜びと成長…営業は顧客を考えるロジカルな仕事
前回でもお話ししましたが、営業現場をみているとマイナスの思考・意識で働いている人が多い…
・受注を獲得したいではなく、獲得しないといけない
私は長年営業に携わってきて、苦労の多い、難しい仕事ですがおもしろい仕事でもあると感じています。
・受注を獲得しないといけない仕事ではなく、獲得したい仕事
今回はその営業の魅力やおもしろさについてお話しします。
私には今でも忘れられない受注があります。
約15年前、営業アウトソーシングサービスの営業をしていたときに獲得した従業員数千名の業界大手の設備機器メーカーA社での受注です。
当時、営業職派遣の解禁から数年が経ち、
営業派遣や営業アウトソーシングは広がりつつありましたが、
まだ、営業は自社で行うものであり外注に抵抗のある会社が多い時代でした。
ある日、新聞でA社が新商品を開発した記事を見つけました。
その新商品の拡販に営業アウトソーシングニーズを感じ新規アプローチ。
A社の組織図や沿革から、体質や力関係を考えると、
トップアプローチする必要がある…
しかし相手は業界大手のトップ、人脈やコネもない…
しかも、今期の売上計上を考えるとあまり時間がない…
そこで、便せん3枚程度の直筆の手紙をA社社長宛てに送りました。
過去の記事や業界動向を調べ、新商品拡販の課題と提案内容を考え文章を作成。
手紙は土曜日に出社して1日かけて作成しました。
するとA社営業役員から電話がかかってきました…
「手紙を読みました、一度お話を聞きたい」とのこと。
初回から社長、営業役員との商談、提案…
事前に業界情報誌、A社の過去の記事やHPから以下のことを調べ想定
・A社新商品のターゲットやターゲットごとのニーズ
・A社新商品と競合商品の優劣や競合他社の営業戦略
・A社の営業戦略や体制、営業社員の体質
・A社社長の記事や経歴、考え方
そして、上記調査・想定情報からA社の営業課題と対策を想定し、商談や提案でぶつけました。
その結果、提案後にA社社長から
「おたくに任せる、いつからスタートできるか?」とのお言葉!
ファーストアプローチの手紙から2週間での3000万円弱の受注。
提案後、A社を出てから1人で雄叫びをあげたことを今でも覚えています。
周りの人に怪訝な顔をされたことも覚えています。
なぜ、今でも忘れられないぐらいうれしかったのか?
アプローチ、商談、提案前に、顧客の様々な情報を調べ、調べた情報から課題や提案内容、受注を獲得するための戦略を考え勝ち取った受注。
営業アウトソーシングを検討していない、予算をとっていたわけでもない…
商品説明したら買ってくれたというわけではない…
必死に考えて、検討していない顧客を検討させ獲得した受注
…いわゆる戦略勝ち。
~ 1件の顧客にこだわった知的な活動が大きな喜びと成長を ~
受注の獲得には競合や顧客の状況が影響するため
いくら調べても良い策を考えても必ず獲得できるというものではありません。
そのため売上目標を考慮すると確率を考え、アプローチや商談、提案の量、その量を増やすための効率化も必要です。
そして、さまざまなスキルや素養が必要な仕事です。
・人間性や顧客との人間関係
・目標意識やマインド、計画性
・商品知識や顧客・ターゲットの知識・情報
・コミュニケーション、ヒアリング…
これらすべて必要です。
さらに、顧客や案件の状況ごとに仕事が異なります。
・商談の組み立て方やコミュニケーションの内容、提案内容
・顧客の対応方法
…
また、商談や提案に対して必要な情報を全て把握することができません。
・担当者や関係者、決裁者おのおのの状況や考え
・顧客の状況や予算、計画
…
この「活動量が必要」「さまざまな素養・スキル」「状況ごとに異なる」「必要な情報を把握できない」という特性のため1件1件に対して体系的に組み立てることが難しく、属人的、場当たり的、感覚的、淡白になってしまう…
しかし、顧客から1件の受注を獲得する活動=営業活動は
顧客の情報を収集し、見えない部分を想定し
その収集した情報、想定した情報を分析しながら
課題やどうしたら受注を獲得できるか(戦略)を考えるという
難易度の高い知的かつロジカルな仕事です。
この知的かつロジカルな顧客を調べ、想定し、課題や戦略を考えるという活動の結果である受注が、営業の面白さであり、自信にもなる…
活動量や目の前の仕事をこなすことも必要ですが、
1件の顧客や案件にこだわることが営業を成長させるのではないでしょうか?
次回は3月4日(水)更新予定です。