第34回 営業の労務問題…「すべき仕事を明確に」「理解しあう環境」の2つで解決

15年以上様々な企業の営業を見てきて感じていることがあります。
□ 仕事のストレスを抱えている人が多い
□ 仕事で疲れ切っている人が多い
□ 会社や上司、同僚に不満を持っている人が多い

「うちは良い会社、働きやすい、仕事がやりやすい」と言っている人は稀で、
大半は・・・
「売上目標が高すぎる」
「仕事が忙しすぎる、時間がない」
「上司や先輩が指導してくれない」
「会社や周囲のサポートや協力がない」
「商品力が弱いから頑張っても売れない」
「将来や先が見えない」
「適正に評価してもらえない」
不満や愚痴をあげたらきりがない・・・

そして・・・
□ 売上目標や顧客対応などの業務ストレス
□ 残業時間や土日出勤などの長時間労働
□ パワーハラスメントや上司、同僚との人間関係
□ 昇給やキャリアパス
などの問題を抱え、定着率やモチベーション、成長、精神面に苦慮している・・・

また、これらを気にするあまり
□ 上司が遠慮して部下をしっかり指導できない、・・・
□ 上司が自分の営業で時間をとられマネジメントが疎かに・・・

なぜ、これらの問題が起こるのでしょうか?

売上目標や仕事量が直接的に問題になっているケースもありますが、営業の労務問題の大半はそもそも組織で仕事をするうえで前提となる以下の2つに起因していることが多いのです。

1.仕事が明確でない

目標、計画や達成する方法、進め方、役割・・・、また、これらに対する課題と対策といった本来仕事をするうえで明確にすべきことをあいまいにしたまま仕事をしているケースが多く見受けられます。

2.一緒に考え、悩む仲間がいない

日々、上司や先輩に相談しているかもしれませんが、
仕事の大半は「一人で考え」「一人で行動」・・・
その結果、一人で考え、悩みながら仕事をしている・・・

この2つの前提となる原因を考えずに、前述した直接的な要因である売上目標や仕事量、上司や本人個人の改善、昇給制度を改善しても本質的には改善できないのです。

この「仕事が明確でない」「一緒に考え、悩む仲間がいない」という問題は営業という仕事の特性です。

営業という仕事の特性【1】・・・目標達成に多様な要素が影響

営業の目標達成は多種多様な要素に影響されます。
市場環境や競合、顧客の状況、商品力、社内のサポート、組織の考え方・・・
また、これらは変化し、見えにくいものも多いのです。
そのため、計画や達成する方法、課題や対策を明確にしにくい・・・

営業という仕事の特性【2】・・・仕事が雑多で流動的

既存顧客をフォローしていたら、急にトラブルが発生し対応に追われ、
そこに引き合いが入ってきて急ぎの提案書作成、
そして、トラブル対応や新規案件の社内調整や報告書・・・
仕事が計画通りにいかない、日々仕事内容が変わってしまう・・・
そのため、自分の仕事を管理しにくい・・・

営業という仕事の特性【3】・・・個人主義

仕事の成果である売上目標は個人ごと、担当も個人ごと、
そのため、計画や仕事のやり方も個人ごと、実践するのも個人ごと・・・
周囲の人と一緒に考え、悩み、仕事をするという環境が少ないのです。
その結果、理解者や共感者、協力者も少ない・・・
営業会議でも一方通行のコミュニケーションによる「報告と指導」が多く、
双方のコミュニケーションによる「話し合う」がほとんどありません。

営業の3つの特性を考慮しながら、「仕事が明確でない」「一緒に考え、悩む仲間がいない」
という問題を解決するためには、以下の2つが大切です。

(1) 計画を立て、状況と課題、対策を日々整理しながら仕事を進める。

当社では、朝出勤したら「何もしない時間を30分」作らせています。
「何もしない」というのは、営業活動や資料作成などをしないということで、メール対応やミーティングも禁止です。
業務前の30分は自分の目標や計画の確認、仕事内容と課題・対策の整理、一日の仕事の進め方を机にむかって考える時間にあてています。
つまり、自分の仕事を明確にする時間です。

朝出勤してすぐにメール対応や打合せ、資料作成や顧客対応をしているケースが多く見受けられます。
そのため、「何をどのように進めるたらよいのか」をあいまいにしたまま目の前の仕事に追われるというストレスだけでなく、ミスやロスによる非効率さ、仕事に時間がかかるといった状況に陥っている・・・
意外と「何もしない時間を30分」作った方が仕事は早く終わるのです。

(2)共通のプロセス、基準を作る。

個人主義になっている一因は、考え方ややり方がバラバラになっていることです。
個々の考え方や仕事のやり方がバラバラでは相互理解するための前提がなく、
指導も理解されにくい、そして部下も相談しにくい・・・
営業活動の進め方や進捗をチェックする基準を標準化し共有することで、
上司と部下、営業部内で話し合う前提ができ理解しあう環境を作りやすいのです。

多少、仕事量が多くても、
多少、仕事が難しくても、
多少、指導が厳しくても、
すべき仕事が明確で、上司や周囲の人と理解しあう環境があれば
業務ストレス、仕事量や時間、上司の指導、会社の制度等への不満や不信も減り、
前向きに仕事に取り組めるものです。

営業という仕事は、明確にすることも、相互理解を促進することも難しい仕事です。
だからこそ
「日々整理し明確にしながら仕事をする」
「共通のプロセスや基準による相互理解を促進する環境」
という2つが大切になるのです。

次回は1月上旬の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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