第78回 交渉での駆け引きは顧客を知ることから始まる

「予算を取ってもらえませんか」「定価でお願いします」とお願いばかり……。結局、顧客の言いなりになって値引き。価格、機能、納期、条件……営業では、始めから顧客と自分の要求に合っていることはまれです。その営業という仕事に駆け引きは必要です。今回は、交渉や駆け引きについてお話しします。 

交渉での駆け引きは顧客を知ることから始まる


価格、機能、納期、契約内容や条件……。
始めから顧客の要求と自分の意向がぴったり合っていれば楽なのですが、そんなケースはあまりありません。

自分は定価で売りたい、でも顧客は価格を下げたい。
「何とか予算を取ってもらえませんか」「定価でお願いできませんか」とお願いばかり……。結局、顧客の言いなりになって値引きして受注。

長年主力サービスとして販売してきたホームページ制作の営業担当者Aさんが、価格のことで顧客ともめていました。

会社に戻って上司のBさんに相談。

Aさん
「定価の100万円を伝えたら『予算が70万円しかない』と言われてしまって……値引きできませんか?」

Bさん
「言いなりになってちゃだめだろう。ちゃんと交渉しろよ。商売なんだから仮に値引きするなら何か勝ち取れよ。ただ値引きするだけじゃだめだよ」

再度、交渉しに顧客を訪問しました。

Aさん
「100万円でお願いしたいんですが、何とかなりませんか? 原価ギリギリなので値引きは難しいんです。お願いします」

顧客担当者
「前回お話ししたとおり、70万円しか予算がないので難しいです」

Aさん
「そうですか、分かりました。そうしましたら……」と上司に指示されたとおり、何かを勝ち取ろうと思い交渉しました。

そして、会社に戻り上司に報告。

Aさん
「やはり、予算がないので70万円じゃないと難しいようです。その代わり、うちのプロモーションの事例で使わせてもらうことを承諾してもらいました」

Bさん
「それ、意味ないだろう。新商品のプロモーションならまだ分かるけど、長年販売しているホームページ制作のプロモーションに事例を出しても意味ないだろう」

Aさん
「でも『何か勝ち取れよ。ただ値引きするだけじゃだめだ』って言ったじゃないですか」

ここで、Aさんの交渉について問題点を考えてみてください。

問題点一つ目
Aさんは、プロモーションの事例で使わせてもらうことを勝ち取っているのでしょうか?

価格について
Aさんは定価の100万円で売りたい、顧客は70万円で買いたい……Aさんの負け。

プロモーションの事例について
Aさんの会社は必要ない、顧客に損はない(どうでもよい)……勝ちも負けもない。

つまり「0勝、1敗、1どうでもよい」というところです。

勝ち取るということは、自分にとって価値があり、相手にとって損になることを得ることです。
Aさんの場合は、プロモーションの事例というどうでもよいことを交渉の材料に使って、値引きという損だけ残ったということです。

単に譲ってあげただけなのに、「価格で譲り、プロモーションの事例で譲ってもらった」という50対50の立場になり、「価格を譲って恩を売った」という立場や関係まで捨ててしまいました。明らかに悪手です。

問題点二つ目
Aさんは、顧客に対して交渉したのでしょうか?

「原価ギリギリなので値引きは難しいんです。お願いします」
交渉ではなく、ただお願いをしているだけです。

価格交渉の場面で、「原価が高いので」「会社が値引きを承諾してくれないので」「ほかのお客さんにも値引きしていないので」……「だからお願いします」
という言葉をよく聞きます。

「原価が高い」「会社が承諾してくれない」「ほかのお客さんにも値引きしていない」というのは顧客にとって関係のないことです。これは、自分の事情を説明してお願いをしているだけです。価格交渉ではありません。

交渉とは、自分と相手の意向が相反しているときに話し合うこと。
駆け引きとは、相手の状況や出方に応じて、自分に有利なように事を運ぶこと。

営業の交渉における駆け引きとは、顧客との話し合いで、顧客の状況や出方に応じて自分に有利なように事を運ぶこと(自分の意向に沿った合意を得ること)。

つまり、駆け引きとは、相手の状況や出方に応じて行う仕事です。
「相手の状況や出方を知らない、考えられない」では駆け引きはできません。

仮に、「質を重視し、外注せずに正社員で制作しているため原価が高い。だから100万円で売りたい」という自分の意向に対して、「70万円」という要求やその理由である「予算がない」ということ以外に、「費用対効果を重視している」「構成やデザインの質が低いと問い合わせが増えず、費用対効果が低くなる」ということや、そのほかに「新商品のプロモーションサイトを検討している」「ホームページを作るだけでなくアクセス解析も導入したい」ということを知っていたら……説得や駆け引きができたかもしれません。

価格、機能、納期、契約内容や条件……。お願いをするだけ、顧客の言いなりになっている営業担当者が多く見受けられます。
その一番の原因は、顧客を知らない、考えられないことです。

駆け引きとは、相手の状況や出方に応じて行う仕事です。
「相手の状況や出方を知らない、考えられない」では駆け引きはできません。

「顧客を知らない、考えられない」では、何について、どのように説明したら顧客が理解してくれるか、顧客に何を譲り、何を勝ち取るのか、という駆け引きを考えることができません。

営業では、始めから顧客の要求と自分の意向が合っていることはまれです。
そのため、営業という仕事に駆け引きは必要です。

顧客の要求だけでなく、もっと顧客のことを知り、考えましょう。

交渉で駆け引きする方法は、
「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は11月18日(月)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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