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第38回 予算の確保…予算を確保させる営業と予算を聞いて待つ・値引きする営業
「価格が高い」「予算がない」「予算が足りない」…
営業活動で価格交渉や予算を確保させることに苦労している人は多いでしょう。
実際に営業責任者の方にお会いするとこのようなことをよく聞きます。
「うちの営業社員はすぐ値引きする」
「価格は顧客の言いなり」
はたして、
- 本当に価格が高いのでしょうか?
- 本当に顧客は予算がないのでしょうか?
- 本当に顧客は予算を確保することができないのでしょうか?
もしかしたら、
- 価格が高くないことを理解させられていないのでは?
- 予算を確保させようとしていないのでは?
ある会社でこのようなことがありました。
会員向けのメール広告を配信するサービスの営業シーン。
(顧客の状況)
- 新商品をスタートしプロモーションが必要
- 商品開発と営業活動の人件費に費用がかかり今期はあまり予算がない
(サービスの内容)
- 抱えている会員に対し配信しているメルマガに広告を掲載するサービス
- 顧客のターゲットとサービスの会員はマッチしている
- サービス費用は50万円で顧客は2~3社受注できれば元がとれる
(この状況で営業社員は…)
サービス説明…
- サービスの仕組み
- 会員数と会員の属性、配信先が顧客のターゲットとマッチしている
- 他社での成果事例
そして、サービス説明の後、以下のことをヒアリング…
- 現在の販促施策や計画、予算の有無
- 検討できるか否か
(その結果)
- 予算がないので今は無理
- 今期は販促にお金をかけず営業で頑張って売上確保、来期になったら検討
- そして、来期の見込み顧客として継続的にフォロー
私も営業を受ける側になることが多いのですがこのような営業が多い、というよりほとんどの営業がこのような商談です。
この商談は予算を確保させる営業ではなく、顧客が予算をとってくれるのを待つという営業です。
では、予算を確保させる営業とはどのような営業でしょうか?
顧客はどうやって予算を確保するのでしょうか?前提として三つの要件があります。
【1】費用対効果を理解
【2】投資する必要性を理解
【3】お金がある
前述のメール配信サービスの営業はどうでしょう?
【1】費用対効果を理解
「会員数と会員の属性、配信先がA社のターゲットとマッチしている」
「他社での成果事例」
一見すると効果を理解させようとしている説明に見えます。
しかし、50万円という費用に対して顧客のメリットを理解させる説明でなく、一般論を説明してあとは顧客に自分で考えてくださいという説明です。
【2】投資する必要性の理解
この投資する必要性とは、
「なぜ、メール配信サービスを導入しないといけないのか?」ということです。
この投資する必要性については一切触れていません。
上記【3】の「お金がある」に対しては、
お金がないから投資できないという状況は少なく、
- 上記【1】、【2】を理解していないから投資しない
- あらかじめ予算をとっていない(期初の計画に入っていない)
ほとんどの顧客はこの二つのどちらかです。
前述の事例では、予算をとっていない顧客に対して、商品と一般的な事例を説明し、顧客のメリットや投資する必要性は顧客自身で考えてくださいという営業です。
予算があまりない顧客、メリットと投資する必要性を理解していない、漠然としている顧客が予算を確保するでしょうか?
結果、予算がとれるようになるまで待つしかなくなるのです。
また、商品の価格分の予算をとれていない場合や高いと思われている場合は値引きするしかなくなるのです。
「予算を確保する」=「お金を出す」ということは、
- お金を出すことで得られるメリット
- お金を出す理由(必要性)
の二つが必要です。
予算を確保させるためには、予算の有無、予算担当部門や決裁者、組織のパワーバランスなども重要ですが、この「費用対効果」と「投資する必要性」が前提です。
「費用対効果」と「投資する必要性」を理解・意識させることが、予算を確保させる、また価格が高くないと理解させるのです。
意外と…
「メール配信サービスを導入した時、顧客にどのようなメリットがあるのか?」
「なぜ、メール配信サービスを導入しないといけないのか?」
を理解させようとしている営業は少ないものです。
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次回は7月10日(水)更新予定です。